ブレンデルのアダージョXVII:9(ハイドン)
今日は以前に一度取りあげたアルバムですが、ピアノの澄み切った美しい響きが聴いてみたくなり取りあげました。

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アルフレート・ブレンデル(Alfred Brendel)のピアノでハイドンのピアノソナタ3曲(Hob.XVI:34、XVI:32、XVI:42)と、ファンタジア(XVII:4)、アダージョ(XVII:9)の5曲を収めたアルバム。収録は1984年3月4日から10日にかけてロンドンのヘンリーウッド・ホールでのセッション録音。レーベルはもちろん蘭PHILIPS。
以前取りあげた記事はこちら。
2010/09/01 : ハイドン–ピアノソナタ : 絶品、ブレンデルのピアノソナタ
今日はこの中から、アダージョのみ取りあげます。以前の記事では「自身の葬儀で流してほしいくらいの音楽の結晶のような作品」とコメントしましたが、私はなぜかこの曲のブレンデルの演奏に非常に心惹かれます。ホールに響き渡るグランドピアノの美しい響きが鮮明に録られた録音も絶品。
Hob.XVII:9 / Adagio [F] (before 1792)
5分少々の短い曲ですが、大男のブレンデルが一音一音慈しむように弾く素朴なメロディーがキラ星のごとく輝きます。まさに音楽の結晶。音数は少ないのですが、まさに一音一音が絶妙にコントロールされ、静寂の中に音が置かれていく感じ。グランドピアノの最も美しい響きがヘンリーウッド・ホールに満ちていきます。聴いていくうちに心が天に昇っていくような錯覚に襲われます。ハイドンの音楽の中でも最も純度が高い音楽。空高く昇って成層圏に達した星空寸前の濃紺の空の色のような感じ。ブレンデルがピアノの響きの美しさの極限に挑んだ入魂の演奏でしょう。
今となってはハイドンが何を表現したくてこの曲を書いたかはわかりませんが、私はこの澄み切った心境を表すような小品を時折取り出して聴いています。技巧とも表現意欲とも異なる大きな存在感を感じる素晴らしい曲だと思います。やはり自分が亡くなった時にはこの曲をかけてほしいという想いを新たにしました。
親はかけがえのないものと今更ながら思い知らされています。この10年くらいは定期的に自宅にいってずいぶん接点はもってきたほうだと思いましたが、まだまだ本人から聞きたいこともありました。もうすこしのんびりさせてあげたかったです。時間をかけて気持ちを整理していきたいと思います。


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