作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

プラジャーク四重奏団のOp.50(ハイドン)

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今日は弦楽四重奏曲。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

プラジャーク四重奏団(Pražák Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.50のNo.3、No.5「夢」、No.6「蛙」の3曲を収めたアルバム。収録は収録順に、2009年6月24日、2009年11月23日から24日、2009年10月20日から21日、プラハのドモヴィア・スタジオでのセッション録音。レーベルはPRAgA Digitals。このレーベルはharmonia mudi系列のようですね。

プラジャーク四重奏団は1972年の結成。メンバーは当時のプラハ音楽院の学生。1974年のチェコ音楽年にプラハ音楽院室内楽コンクールで第1位となり、1975年プラハの春音楽祭に出演し国際的に活躍するように。1978年にはエヴィアン弦楽四重奏コンクールで1位に輝いた他、チェコ国内の様々なコンクールで入賞。以後30年以上にわたり世界で活躍を続けている。

この録音当時のメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:ヴァーツラフ・レメシュ(Václav Remeš)
第2ヴァイオリン:ヴラスティミル・ホレク(Vlastimil Holek)
ヴィオラ:ヨセフ・クルソニュ(Josef Klusoň)
チェロ:ミハル・カニュカ(Michal Kaňka)

この録音のあと、第1ヴァイオリンのヴァーツラフ・レメシュが体調の問題で演奏が難しくなり、現在はパヴェル・フーラが第1ヴァイオリンを担当しているとのこと。

Hob.III:46 / String Quartet Op.50 No.3 [E flat] (1787)
鮮度の高い響きから入る1曲目。SACDらしい響きを多く含みながらもリアリティの高い音響。弾む感じが上手く出ていて古楽器に近い響き。テンポは中庸ながら良く弾み、活気のある演奏。ところどころほんの一瞬音程のぶれを感じる瞬間がありますが、安定感が悪いほどではありません。
2楽章のアンダンテはチェロのキリッと締まったリズムを基調に各楽器が絡み合う音楽。ここにきてこのクァルテットの癖のない素直な演奏と木質系の爽やかな響きの魅力が見えてきました。チェロの清透な響きはなかなかのもの。ヴァイオリンは自在に音階を刻み、それぞれの楽器が絡み合いながら音楽を豊かにしていく感じがこの楽章の聴き所。
メヌエットは良くそろって、理想的な演奏。爽やかさは相変わらずで、各楽器間のバランスも拮抗しており、ヴァイオリン主体の演奏ではありません。むしろチェロとヴィオラ主体といってもいいほどの低音部の充実が物語るように、音楽のベースがしっかりと定まった演奏。
フィナーレも軽々とした弓運び。ここにきてヴァイオリンの音色の美しさも目立ち始めます。音楽のつくりは濃い踏み込みもないかわりに、軽々としたタッチが魅力の爽やか勝負の演奏。このスタイルがハイドンのこの時期の堅実な音楽には妙にマッチしています。1曲目でクァルテットのイメージがだいぶつかめました。

Hob.III:48 / String Quartet Op.50 No.5 (II:"Der Traum" 「夢」) [F] (1787)
前曲同様響きの美しさ、タッチの軽快さが聴き所ですが、1楽章から音楽の凝縮感も高まり、前曲より明らかにテンションが高まっているのがわかります。鬼気迫る感じも良く出ていて、勝負に出ていることが窺えます。音楽のキレも明らかに良くなり、聴き手にもその迫力が伝わります。久しぶりに聴くこの曲ですが、プラジャーク四重奏団で聴くと素晴らしい充実ぶりにあらためて驚きます。
2楽章はまさに夢を音楽したような曲。夢うつつにまどろむひと時を音楽にしたらこのような音楽になるのかと思うような曲。1楽章のテンションから一転して優しいタッチで奏でるうわごとのような音楽。この辺りの対比も素晴らしい音楽性です。
3楽章はヴァイオリンの美しいソロから全奏までのダイナミックさが聴き所。全奏後の響きの消え入る様子が見事。録音のよさが演奏にもプラスになっています。ここでもチェロの雄弁さが耳に残ります。
フィナーレはヴァイオリンが珍しくかなりの存在感でアンサンブルをリードします。1楽章のテンションを思い起こさせる充実した響き。転調して展開するあたりの迫力はかなりのもの。この曲は力感溢れる演奏。

Hob.III:49 / String Quartet Op.50 No.6 "Frosch" 「蛙」 [D] (1787)
好きな曲の一つ。この不思議な曲想の曲を、プラジャーク四重奏団独特の美しい木質系の響きで流麗に描いていきます。少しずつ響きの異なる各楽器のが畳み掛けるようにフレーズをつないでいく感じの面白さ。前曲のテンションから幾分落ち着き、音楽の流れもフレーズ感で一服するようなところがあり、勢いよりも流れの良い構成を表そうと言う意図を感じます。抑えた部分のデリケートさもいい感じ。
この曲の2楽章も面白い曲想。うら悲しくもあり冷ややかでもある不思議なメロディーをベースに変奏を重ねていきます。ここは繊細さが聴き所。
メヌエットは前曲までの覇気と推進力ではなく、ここでも繊細さで聴かせるもの。曲によってかなりアプローチをを変えているようですね。強奏部分もフルスロットルになりません。
フィナーレは蛙の鳴き声を連想させるバリオラージュという奏法から入ります。同じ音を解放弦と同じ音を指で押さえた隣の弦で繰り返し惹く奏法。このバリオラージュ奏法による特徴的なメロディーをベースにしてメロディーを発展させるハイドン独特の機知と独創性を感じる曲。この曲では一貫して冷静にデュナーミクをコントロールして、曲の面白さにスポットライトを当てようと言う事でしょうか。

はじめて聴いたプラジャーク四重奏団のハイドンのOp.50からの3曲。癖のない演奏で木質系のいい響きが楽しめるいいアルバムです。基本的にタッチの軽さと明るいのに燻したような深みのある響きでハイドンの晴朗さを描く感じで、ハイドンの曲の面白さを上手く表す演奏です。評価は「夢」がやはり他とは違う出来で[+++++]、他の2曲が[+++]としました。

いやいや3月は年度末ということもあり、仕事が思いのほか忙しくレビューが思い通り書けませんでした。明日は一本書いてから月末恒例のHaydn Disk of the Monthといきたいと思います。
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