ニコラス・ウォード/ノーザン室内管の77番、78番、79番
最近何枚か取りあげている、NAXOSの交響曲集。

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TOWER RECORDS
ニコラス・ウォード(Nicholas Ward)指揮のノーザン室内管弦楽団(Northern Chamber Orchestra)の演奏でハイドンの交響曲77番、78番、79番と渋めの選曲。収録は1995年9月23日、24日、イギリス、マンチェスターの新放送センターのコンサートホールでのセッション録音。
ニコラス・ウォードはNAXOSの交響曲全集でも好きな指揮者の一人。以前26番「ラメンタチオーネ」を含むアルバムを当ブログで取り上げ、Haydn Disk of the Monthにも選定した名盤。その記事はこちら。
2010/12/14 : ハイドン–交響曲 : 【ブログ開設1周年記念】ニコラス・ウォードのラメンタチオーネ
ウォードの紹介は上のリンク先をご覧ください。ウォードの演奏は一言で言えばハイドンの現代楽器の演奏の原点の様な演奏。自然でハイドンの演奏の悦びに溢れていて、安心して身を任せて聴くことができる演奏。特段の踏み込みはないんですが、逆に音楽が吹き出してくるような実に慈しみ深い演奏。
今日このアルバムを選んだのは、NAXOSの交響曲全集の整理をしていると、ウォードが担当した1992年から93年にかけて録音された全集のVol.6からVol.10までの5枚からぽつんと離れて、1枚だけ1995年に録音されたこのアルバムがVol.20としてリリースされており、ちょっと聴き直してみたくなったから。
Hob.I:77 / Symphony No.77 [B flat] (1782?)
中野博詞さんの「ハイドン復活」などによると、ヴァントが得意とするこの前の76番交響曲とこの後の78番との3曲セットで1782年ごろに作曲されたもの。ハイドンがロンドン旅行を計画し、「イギリス紳士の音楽趣味をも考慮して作曲した」とされ、「美しく華やかで、しかも長すぎない三つの交響曲」として作曲されたとの事。ウォードの演奏はまさにこの言葉を地でいくようにイギリス趣味のさっぱりとしながらも気高い感じの演奏。中庸なテンポ、柔らかいオケの響き、そして自然な響きながら生気が満ちて幸福感満点。ホルンのとろけるような響きが加わりえも言われぬような気分。フレーズ間の間をたっぷり取る事で非常に落ち着いた展開。転調して展開するところも音楽の面白さのツボを抑えたコントロール。1曲目からウォードの術中にハマります。この中期の地味な曲の真髄をえぐる演奏。NAXOS交響曲全集の白眉と言っていいでしょう。ヴァントの76番に劣らぬ素晴らしい感興。
2楽章は弱音器付きのヴァイオリンの音色が美しいメロディーラインを奏でます。シュトルム・ウント・ドラング期のような濃い情感ではなく、どことなく爽やかさが漂うのがこの時期の特徴でしょうか。ウォードはここも自然さを保って、まさにこうしか演奏できないでしょうという説得力。
3楽章のメヌエットは弦のキレとアクセントの面白さがポイントの曲。
フィナーレは弾むメロディーを慌てずじっくり弾きこなしていきながら、徐々に興奮のピークを演出していきます。もはや曲を完全に掌握した上で自在にコントロールする感じ。フィナーレ盛り上げ方を聴いていると、まさに勝手知ったる自宅の庭を手入れするような完全にすべてを掌握して進める感じ。他のウォードのアルバムより録音が新しい分、多少明晰さもアップしています。NAXOSのアルバムの自然な録音は質が高いですね。これ以上の録音は必要ないと思わせる完成度があります。
Hob.I:78 / Symphony No.78 [c] (1782?)
短調の畳み掛けるメロディーラインからはじまる曲。冒頭からエネルギー感溢れる演奏。ツボははずしません。メロディーラインの美しさだけでなく、途中のアクセントの険しさはなかなかのもの。オケの秩序を乱しかねないくらいムチを入れているようで、オケもそれに応えて迫真の演奏。格別な生気が宿ります。
一転して慈しみ深い和音からはじまるアダージョ。前楽章の火照りを鎮めるような楽章。途中から短調に転調して、ハッとさせられますが、ウォードの演奏はその辺の変化を実に上手くコントロールして、やはり曲をこれ以上に上手く演出することは出来そうもないほどの説得力をもっています。かなりのダイナミックレンジにも関わらず、非常に自然な演奏。シンプルなメロディが様々に絡み合って非常に面白い効果をあげている様子が手に取るようにわかります。
前曲とはまた異なる面白い曲想のメヌエット。導入部も面白いのですが中間部が実にユニーク。ベースになるメロディーが変化して全く異なる曲想にからまれ、また戻るという感じ。
フィナーレも実にユニーク。いたずらっ子が走り回るような曲想。これは聴いていただかなくてはわかりませんね。78番は非常にユニークな曲。ここでもウォードは完璧な演奏。
Hob.I:79 / Symphony No.79 [F] (before 1784)
この曲は好きな曲。1784年頃の作品。ハイドンの交響曲の晴朗流麗な魅力が満ちた素晴らしい曲。ウォードは勘所をびしっと押さえてバランス感覚溢れる素晴らしい演奏。ハイドンファンの気持ちをぐっとたぐり寄せる演奏。演奏の美しさに鳥肌がたち動けなくなるような感覚に襲われるほどの素晴らしい演奏。晴朗さに脳内のアドレナリン噴出。後半様々に変化するメロディーがハイドンの筆の冴えを物語ります。
2楽章はヴァイオリンの奏でるメロディーと木管、ホルンの掛け合いによるくつろいだ曲。後半は速い曲になりますが、その変化と巧みなアクセントコントロールは室内オーケストラとしては最高のセンスとテクニックを聴かせます。
続いてどの曲にも似ていないメヌエット。フルートの奏でる旋律が弦に重なって響きに彩りを加えます。
フィナーレはイギリス趣味でしょうか、おさえて滑稽なメロディーを繰り返した入りから展開したところで、力をはじめて見せ、再び押さえたメロディーに戻り、その繰り返しで音楽が深まっていきます。ここでも間をしっかりとることで、音楽をキリッと引き締めます。この曲も名演。
ニコラス・ウォードによるハイドンの中期交響曲集。地味な存在の3曲ですが、それを極上の演奏で素晴らしく聴き応えのある曲として見事に演奏しています。やはりウォードの魅力はハイドンの曲の真髄をつく自然なコントロール。ただ自然なだけではなく、良く聴くと緻密なフレージングとメリハリのコントロール。技術に裏付けられた緻密さと言っていいでしょう。評価はもちろん3曲とも[+++++]につけ直します。やはりウォードのハイドンは絶品です。NAXOSでは先日とりあげた、パトリック・ガロワ、ケヴィン・マロンが透明感溢れる見事なコントロールで色彩感溢れる素晴らしい演奏を聴かせていますが、ウォードはこれとは異なり、オーソドックスなアプローチです。オーソドックスとはいえ、類いまれな説得力を持ち、ドラティやヴァントなどとならぶ素晴らしい演奏になっています。まだ聴かれていない方、必聴です。

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ニコラス・ウォード(Nicholas Ward)指揮のノーザン室内管弦楽団(Northern Chamber Orchestra)の演奏でハイドンの交響曲77番、78番、79番と渋めの選曲。収録は1995年9月23日、24日、イギリス、マンチェスターの新放送センターのコンサートホールでのセッション録音。
ニコラス・ウォードはNAXOSの交響曲全集でも好きな指揮者の一人。以前26番「ラメンタチオーネ」を含むアルバムを当ブログで取り上げ、Haydn Disk of the Monthにも選定した名盤。その記事はこちら。
2010/12/14 : ハイドン–交響曲 : 【ブログ開設1周年記念】ニコラス・ウォードのラメンタチオーネ
ウォードの紹介は上のリンク先をご覧ください。ウォードの演奏は一言で言えばハイドンの現代楽器の演奏の原点の様な演奏。自然でハイドンの演奏の悦びに溢れていて、安心して身を任せて聴くことができる演奏。特段の踏み込みはないんですが、逆に音楽が吹き出してくるような実に慈しみ深い演奏。
今日このアルバムを選んだのは、NAXOSの交響曲全集の整理をしていると、ウォードが担当した1992年から93年にかけて録音された全集のVol.6からVol.10までの5枚からぽつんと離れて、1枚だけ1995年に録音されたこのアルバムがVol.20としてリリースされており、ちょっと聴き直してみたくなったから。
Hob.I:77 / Symphony No.77 [B flat] (1782?)
中野博詞さんの「ハイドン復活」などによると、ヴァントが得意とするこの前の76番交響曲とこの後の78番との3曲セットで1782年ごろに作曲されたもの。ハイドンがロンドン旅行を計画し、「イギリス紳士の音楽趣味をも考慮して作曲した」とされ、「美しく華やかで、しかも長すぎない三つの交響曲」として作曲されたとの事。ウォードの演奏はまさにこの言葉を地でいくようにイギリス趣味のさっぱりとしながらも気高い感じの演奏。中庸なテンポ、柔らかいオケの響き、そして自然な響きながら生気が満ちて幸福感満点。ホルンのとろけるような響きが加わりえも言われぬような気分。フレーズ間の間をたっぷり取る事で非常に落ち着いた展開。転調して展開するところも音楽の面白さのツボを抑えたコントロール。1曲目からウォードの術中にハマります。この中期の地味な曲の真髄をえぐる演奏。NAXOS交響曲全集の白眉と言っていいでしょう。ヴァントの76番に劣らぬ素晴らしい感興。
2楽章は弱音器付きのヴァイオリンの音色が美しいメロディーラインを奏でます。シュトルム・ウント・ドラング期のような濃い情感ではなく、どことなく爽やかさが漂うのがこの時期の特徴でしょうか。ウォードはここも自然さを保って、まさにこうしか演奏できないでしょうという説得力。
3楽章のメヌエットは弦のキレとアクセントの面白さがポイントの曲。
フィナーレは弾むメロディーを慌てずじっくり弾きこなしていきながら、徐々に興奮のピークを演出していきます。もはや曲を完全に掌握した上で自在にコントロールする感じ。フィナーレ盛り上げ方を聴いていると、まさに勝手知ったる自宅の庭を手入れするような完全にすべてを掌握して進める感じ。他のウォードのアルバムより録音が新しい分、多少明晰さもアップしています。NAXOSのアルバムの自然な録音は質が高いですね。これ以上の録音は必要ないと思わせる完成度があります。
Hob.I:78 / Symphony No.78 [c] (1782?)
短調の畳み掛けるメロディーラインからはじまる曲。冒頭からエネルギー感溢れる演奏。ツボははずしません。メロディーラインの美しさだけでなく、途中のアクセントの険しさはなかなかのもの。オケの秩序を乱しかねないくらいムチを入れているようで、オケもそれに応えて迫真の演奏。格別な生気が宿ります。
一転して慈しみ深い和音からはじまるアダージョ。前楽章の火照りを鎮めるような楽章。途中から短調に転調して、ハッとさせられますが、ウォードの演奏はその辺の変化を実に上手くコントロールして、やはり曲をこれ以上に上手く演出することは出来そうもないほどの説得力をもっています。かなりのダイナミックレンジにも関わらず、非常に自然な演奏。シンプルなメロディが様々に絡み合って非常に面白い効果をあげている様子が手に取るようにわかります。
前曲とはまた異なる面白い曲想のメヌエット。導入部も面白いのですが中間部が実にユニーク。ベースになるメロディーが変化して全く異なる曲想にからまれ、また戻るという感じ。
フィナーレも実にユニーク。いたずらっ子が走り回るような曲想。これは聴いていただかなくてはわかりませんね。78番は非常にユニークな曲。ここでもウォードは完璧な演奏。
Hob.I:79 / Symphony No.79 [F] (before 1784)
この曲は好きな曲。1784年頃の作品。ハイドンの交響曲の晴朗流麗な魅力が満ちた素晴らしい曲。ウォードは勘所をびしっと押さえてバランス感覚溢れる素晴らしい演奏。ハイドンファンの気持ちをぐっとたぐり寄せる演奏。演奏の美しさに鳥肌がたち動けなくなるような感覚に襲われるほどの素晴らしい演奏。晴朗さに脳内のアドレナリン噴出。後半様々に変化するメロディーがハイドンの筆の冴えを物語ります。
2楽章はヴァイオリンの奏でるメロディーと木管、ホルンの掛け合いによるくつろいだ曲。後半は速い曲になりますが、その変化と巧みなアクセントコントロールは室内オーケストラとしては最高のセンスとテクニックを聴かせます。
続いてどの曲にも似ていないメヌエット。フルートの奏でる旋律が弦に重なって響きに彩りを加えます。
フィナーレはイギリス趣味でしょうか、おさえて滑稽なメロディーを繰り返した入りから展開したところで、力をはじめて見せ、再び押さえたメロディーに戻り、その繰り返しで音楽が深まっていきます。ここでも間をしっかりとることで、音楽をキリッと引き締めます。この曲も名演。
ニコラス・ウォードによるハイドンの中期交響曲集。地味な存在の3曲ですが、それを極上の演奏で素晴らしく聴き応えのある曲として見事に演奏しています。やはりウォードの魅力はハイドンの曲の真髄をつく自然なコントロール。ただ自然なだけではなく、良く聴くと緻密なフレージングとメリハリのコントロール。技術に裏付けられた緻密さと言っていいでしょう。評価はもちろん3曲とも[+++++]につけ直します。やはりウォードのハイドンは絶品です。NAXOSでは先日とりあげた、パトリック・ガロワ、ケヴィン・マロンが透明感溢れる見事なコントロールで色彩感溢れる素晴らしい演奏を聴かせていますが、ウォードはこれとは異なり、オーソドックスなアプローチです。オーソドックスとはいえ、類いまれな説得力を持ち、ドラティやヴァントなどとならぶ素晴らしい演奏になっています。まだ聴かれていない方、必聴です。
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