アムステルダム弦楽四重奏団の弦楽四重奏曲集

今日は古楽器の燻したような音色による弦楽四重奏曲集。

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アムステルダム弦楽四重奏団(The Amsterdam String Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.3、Op.74のNo.1、Op.76のNo.1の3曲を収めたアルバム。収録は2006年8月25日から27日、オランダのアムステルダム東方約80kmの街ディーフェンターのバプテスト教会でのセッション録音。レーベルはCHANNEL CLASSICS。

アムステルダム弦楽四重奏団は、おそらく最近結成された古楽器によるクァルテット。このアルバムがデビュー盤のようです。レパートリーはハイドンからメンデルスゾーンと弦楽四重奏曲の黄金期にあたる1762年から1847年までの時代のもの。その時代のあまり知られていない希少な作品なども含むようです。アムステルダム・コンセルトヘボウでのシリーズ物のコンサートを開き、ロナウド・ブラウティハムやメルヴィン・タンらと共演しています。

このアルバムを録音したときのメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:アリダ・シャット(Alida Schat)
第2ヴァイオリン:ジョン・ウィルソン・マイヤー(John Wilson Mayer)
ヴィオラ:ジェーン・ロジャース(Jane Rogers)
チェロ:トーマス・ピット(Thomas Pitt)

アリダ・シャットは2003年から2006年までトン・コープマン率いるアムステルダム・バロック・ソロイスツのコンサート・ミストレスを務めた人。他も古楽界の第一線で活躍する実力者のようです。オフィシャルウェブサイトを見ると現在、第1ヴァイオリンとヴィオラのメンバーは違う人に変わっていますね。

Hob.III:33 / String Quartet Op.20 No.3 [g] (1772)
SACDらしく空気感を感じる録音ですがどちかというとデッドな録音。古楽器独特のちょっと燻したような刺激的な音が空間に良く響き渡る感じが鮮明に録られています。チェロがかなり膨らみ気味で豊かな音像。冒頭はヴァイオリンがリードするのではなく、4人が均等にテンションを保つような演奏。それぞれエッジをキリッと立てるのではなく、なるべく滑らかにメロディーを弾いていこうとする感じ。テンポは速めで古楽器の燻した音色の響き合う感じを出そうとしているようです。豊かな音楽を目指そうとしているようですが、意外とあっさりとした肌合いの音楽になり、シュトルム・ウント・ドラング期のこの曲の魅力に迫りきれていないところもあります。
2楽章はゆったりと楽器を鳴らして、ちょっと現代音楽のような響きも感じる精妙さ。ノンヴィブラートらしい響きの面白さもあります。アンサンブルは良くそろっていて精度は十分。ヴァイオリンの繊細な音色が際立つ部分もあり、古楽器の実力者によるレベルの高いアンサンブルを楽しめます。
3楽章のアダージョはメロディーラインがつぎつぎと変化していく面白さはなかなか。精妙な古楽器の音色で弾かれるメロディーの変化が聴き所。
フィナーレは流すような弾き方で、かなり速めのテンポをとり、諧謔性を表しているよう。途中リズムの取り方に変化を付けて曲の面白さを表現。古楽器独特の胴鳴りを伴う響きの魅力を中心に響きの変化も巧み。この楽章に来て狙いが腑に落ちた感じ。デュナーミクの変化も十分でなかなか聴き応えのある演奏でした。

Hob.III:72 / String Quartet Op.74 No.1 [C] (1793)
聴き慣れた、Op.74 No.1の入りですが、前曲から想像される演奏とはかなり異なり、威風堂々とした入りでビックリ。前曲が響きの変化を意図して表現しようとして、すこし表現意図過多な印象を受けたのに対し、この曲では楽天的ですらある、ゆったりとした響きを自然に表現。それが音楽の器を大きくしている感じ。そうではあっても古楽器の響きの精妙さは十分で聴き応えがあります。テンポも比較的遅めで落ち着いたもの。
2楽章は逆に比較的速めなテンポ設定で、サクサクいきます。落とした音量で奏でられるトレモロに対しヴァイオリンのメロディーが自在にフレーズを奏で、蝶がゆらめきながら花を渡り歩くような音楽。
3楽章のメヌエットは柔らかさを意図的に出そうとしているような入り。落ち着きながら音色のコントロールに気を配り、大きな起伏を表現しているよう。
この曲のフィナーレに至り、このクァルテットの演奏が手に汗握るようなスリリングな展開になります。あまり間をはっきり取らず、ここでもサクサクいきます。楽器間のフレーズの受け渡しの面白さもそこそこあってなかなか充実した演奏。

Hob.III:75 / String Quartet Op.76 No.1 [G] (1797)
前曲同様、ほどほどに楽天的な感じもある入り。1曲目から徐々に作為が薄くなり、それがかえって演奏の自然さを増す事につながっています。2楽章のアダージョも同様ですが、3楽章のメヌエットでは古楽器の強音の迫力を上手く表現してテクニシャンぶりを見せつけます。フィナーレはふたたび自然さを取り戻して終了。

アムステルダム弦楽四重奏団の演奏は、古楽器の音色の変化をベースとした創意を感じさせる演奏ですが、音色に神経が集中し、肝心の音楽の流れについては説得力のある個性的な一本通ったものが欲しいと感じさせる余地があります。テクニックは各人かなりのものながら、クァルテットとしての音楽的成熟は今後を待たなければならないでしょう。優等生的というより、音楽的個性についてもう一歩練りが必要だと感じさせる印象がが残る感じです。評価は1曲目が[+++]、それ以外が[++++]としたいと思います。

このクァルテット、もう1枚、この後にハイドンのアルバムを出していますので、こちらもそのうち手に入れる必要がありますね。今日取りあげたこのデビュー盤から成熟がみられるか、ちょっと聴いてみたい気がします。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.20 弦楽四重奏曲Op.74 弦楽四重奏曲Op.76 古楽器 SACD

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