作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】イシュトヴァン・ケルテスのネルソンミサ

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昨日HMV ONLINEから着いたばかりのアルバム。

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HMV ONLINEicon

イシュトヴァン・ケルテス(István Kertész)指揮のテル・アヴィヴ・フィルハーモニー合唱団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏でハイドンのネルソン・ミサとマーラーの「亡き子を偲ぶ歌」を収めたアルバム。ハイドンの収録は1973年4月、イスラエルノ首都テル・アヴィヴのマン・オーディトリウムでのセッション録音。レーベルはイスラエル・フィルおかかえのhelicon classics。

歌手は以下のとおり。

ソプラノ:ルチア・ポップ(Lucia Popp)
アルト:イルゼ・グラマツキー(Ilse Gramatzki)
テノール:ミーシャ・ライツィン(Misha Raizin)
バス:岡村喬生(Takao Okamura)

イシュトヴァン・ケルテスは、1929年ハンガリーのブダペスト生まれの指揮者。フランツ・リスト音楽院でコダーイなどにに学んだ。1955年からブダペスト国立歌劇場の指揮者となる。1956年に西側に亡命した、その後アウクスブルク国立歌劇場、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団などを指揮し、1965年から1968年までロンドン交響楽団の首席指揮者を務めた。1973年夏、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団に客演した折、イスラエルのテル・アヴィヴの海岸で遊泳中に高波にさらわれ43歳の若さで溺死したとの事。

ケルテスと言えばドヴォルザークの新世界というのが定番でしょうが、私は聴いていません。意外と基本をおさえていないんですね(笑)

今回のアルバムはハイドンの地元でもあるハンガリーの指揮者のハイドンの演奏の魅力は如何なるものか気になって手に入れたもの。

Hob.XXII:11 / Missa in angustiis "Nelson Mass" 「不安な時代のミサ(ネルソンミサ)」 [d] (1798)
キリエ
1973年の録音ですが古い録音らしく、燻したような音色の入り。ケルテス最晩年の録音。定位感はほとんど失われ、粗い音色から聴こえるオーケストラ、合唱、ソロの息吹。ピークを越えたのか最初からちょっと歪んだ音色。最初からテンションは高く、ルチア・ポップの突き抜けるようなソプラノがいきなり素晴らしい迫力。
グロリア
グロリアに入り目立つのはライツィンの鋼のようなテノールと岡村喬生のさらに鍛えた鋼のようなバス。ケルテスのコントロールは速めのテンポで流れを重視しながらもかなり迫力を意識したもの。続くクイ・トリスでは岡村喬生絶唱。素晴らしい迫力で突き抜けんばかりのソロ。聴き劣りするどころか、曲を圧倒する迫力でポップと双璧の存在感。岡村喬生がこれほどの圧倒的な歌を披露するとは知りませんでした。このアルバムの聴き所です。オケとコーラスはケルテスの速いテンポに良くついていって怒濤の迫力。
クレド
クレドからは落ち着いたテンポ設定にもどり、粗い楷書のような迫力ある演奏。音楽の骨格を透かして浮かび上がらせるようなコントロール。吹き放たれるような金管をアクセントにヴァイオリンを中心とした弦楽器がザクザクメロディーを刻み、コーラスは整然と歌います。続くトラック6に入ると優しくコントロールされた弦の上でポップが美しいメロディーをこちらも絶唱。コーラスの毛布につつまれた氷の美女のよう。ネルソン・ミサの聴き所、劇的にメロディーが変化して、4人のソロのアンサンブルに移るところは、鳥肌が立たんばかりの展開。ケルテスはテンポを落として劇的な音楽を静かに演出。粗い録音からも名演奏が伝わります。トラック7はリズムを強調しながら、徐々に畳み掛けていくような迫力が伝わります。ここでもポップが絶唱。オケはそこそこ粗いんですが、筆の勢いの確かさは素晴らしいものがあります。
サンクトゥス
サンクトゥスに入り、デュナーミクのコントロールが緻密に。フレーズのひとつひとつをかなり丹念に磨いていきます。特にコーラスの音量をかなり抑えることで、フレーズを浮かび上がらせるところは流石。
ベネディクトス
後半になり、ケルテスのコントロールはじっくりと構えるようになり、静かな劇性が支配する時間になります。再びポップの張りのあるソプラノが響き渡ります。有名なトランペットが鳴り響くファンファーレは荘厳な雰囲気に。
アニュス・デイ
最後は優しさに満ちた音楽になります。グラマツキーの艶やかなアルトからは入り、ポップがそれに重なり、じっくりと癒しに満ちた音楽を奏でます。終曲は清々しい雰囲気になり曲を回想するようにゆったりとメロディーをかなでながら曲を閉じます。

今から40年近く前のイシュトヴァン・ケルテスが事故で亡くなる直前のネルソン・ミサの演奏。この年代にしては粗い録音が残念なところですが、アルバムから聴こえてくる演奏は演奏の骨格の確かな迫力と流麗さの拮抗した素晴らしい演奏。歌手は何といっても岡村喬生の鋼のようなバスとルチア・ポップの良く通るソプラノが素晴らしい存在感。これで録音が良ければとつい思ってしまいます。評価は録音で減点して[++++]とします。ということは、ヒストリカルなアルバムが好きな人にはお薦めできる素晴らしい演奏と言う事です。ケルテスの真髄をちょっと見た気になりました。
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2 Comments

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ライムンド

No title

Daisyさん、こんばんは。このCD、ケルテスの事件とポップが出演していることからすごく興味がありました。しかし音はあまりよくないようですね(残念)。ケルテスは昔モーツアルトの交響曲をテープに録音して聴いていました。よくは覚えていませんが、ロマンティックな演奏だったようで、この録音の迫力は興味がわきます。聴いたことはありませんが、他にハイドンの録音は交響曲・告別があるようですね。

  • 2012/03/16 (Fri) 00:18
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Daisy

Re: No title

ライムンドさん、おはようございます。
ポップの良く通る声はやはり素晴らしいですね。録音の善し悪しにはあまりとらわれない方ですが、このアルバムは欲が出てしまいます。もう少し前の年代でこの録音ならとは思いますが、1973年の録音としては水準を下回ります。やはり粗いのとリアリティが今ひとつなのが残念です。ノイズがあったり聴きにくい訳ではないのでケルテスファンの人が購入をためらうようなものではありません。ケルテスの告別、存在は知っていますがまだ未聴です。探したくなってきました。

  • 2012/03/16 (Fri) 05:58
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