作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ガーボル・レホトカ/ブダペスト・ストリングスのオルガン協奏曲集(ハイドン)

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今日は久しぶりのオルガン協奏曲。心を洗われるような1枚です。

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HMV ONLINEicon

ガーボル・レホトカ(Gábor Lehotka)のオルガン、カーロイ・ボトヴァイ(Károly Botvay)指揮のブダペスト弦楽合奏団(The Budapest Strings)の演奏でハイドンのオルガン協奏曲3曲(Hob.XVIII:1、XVIII:5、XVIII:8)とチェンバロ小協奏曲をオルガンで弾いたもの2曲(XIV:11、XIV:12)の合わせて5曲を収めたアルバム。収録は1988年9月27日~30日、ハンガリーのブダペストの北約30kmの街バーツ(Vác)にあるフランシスコ会教会でのセッション録音。レーベルはハンガリーのHUNGAROTON。

このアルバムはちょっと前にオークションで手に入れたもの。ネットや店頭でハイドンのアルバムはいろいろ探していますがほとんど見かけないため、あまり流通していないものと思います。レビューのために調べたところHMV ONLINEでは現役盤でした。HMV ONLINEでもジャケット写真が掲載されていないのであまり印象が湧かなかったわけですね。ジャケットはアルバムの顔ですので重要です。

オルガンを弾くガーボル・レホトカは1938年、ハンガリーのこのアルバムの録音された街バーツ生まれのオルガン奏者、作曲家。ネットにあまり情報がないと思って調べていたら本人のサイトがありました。

Lehotka Gábor hivatalos weboldala
(英文他)

ガーボル・レホトカ公式ウェブサイト。サイトにいくと頑固一徹な鬼教師のような表情でこちらをにらむレホトカさんの姿が。なにやらただならぬ霊気を感じます。履歴をを読んでいると、2009年12月に長年の闘病の末亡くなられているとのことです。ご冥福をお祈りします。

ガーボル・レホトカは故郷のバーツで小学生時代にバーツカテドラルのオルガニストから音楽を学んだことがその後音楽を志すきっかけになったようです。1953年からブダペストのベラ・バルトーク音楽院、1958年からブダペストのフランツ・リスト・アカデミーで音楽、オルガン、作曲などを学び、1963年からソリストとして活躍するようになります。ハンガリー国内から海外(ドイツ、フランス、旧ソビエト連邦など)ででもコンサートを開くようになります。レホトカが特に気に入っていたのが南仏の古都グリニャンでのコンサートで、晩年の20年間は毎年コンサートを開いていたそうです。自身の音楽人生に大きな影響があり、自然も人もオルガンも非常に気に入っていたようですね。1969年からベラ・バルトーク音楽院、1975年からはフランツ・リスト・アカデミーでオルガンを教えていました。地元HUNGAROTONには1965年以降50枚のアルバムの録音があるそうです。

オケのブダペスト・ストリングスは1975年にブダペストのフランツ・リスト・アカデミーの卒業生を中心に結成された室内楽オーケストラ。こちらもサイトがありましたので紹介しておきましょう。

Budapest Strings
(英文他)

こちらはセンスの良いデザインでまとめられたサイト。ハンガリーの団体ですがトップページから英語で書かれているところを見ると国際的に活躍しているのでしょう。このオケですが1995年からエステルハージ宮殿でハイドン・フェスティバルを毎年開催している、ハイドンにとつながりが深い団体のようです。サイトが良く出来ていますので、ぜひご一覧ください。

さて、前振りが長くなったのでレビューに入りましょう。

Hob.XVIII:1 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [C] (1756)

冒頭のオケの演奏は瑞々しさのあるものですが、HUNGAROTONの録音によくあるザラッとした粗さがあるのが少々残念です。オルガンが入ると入ると状況一変。非常に鮮明かつ天にも昇るような透明感の高いオルガンが、寸分違わぬテンポでキリッと入ってきます。レホトカの故郷バーツでのおそらく弾き慣れたオルガンだからでしょうか、オルガンのアクションの先にある共鳴管の先から空気が出て音を鳴らすまでがすべて手中にあるような素晴らしいコントロール。演奏は正確無比。淡々とメロディーを刻んでいくだけですが、そこから生まれる音楽は敬虔さに満ちあふれた、素晴らしく豊かなもの。オケもレホトカの刻む鋭利さを隠したカミソリのようなリズムに刺激されて溌剌とついてきます。オルガンの音階の続くところはまさにトランス状態になりそうな素晴らしいもの。冒頭から絶品です。
2楽章のラルゴはオケが深い呼吸で大きくフレーズを膨らまして美しいメロディーの序奏でオルガンのソロの入りを待ちます。オルガンは一音目から圧倒的なインパクト。入りの一音で鳥肌がたつほどの美音が教会内に轟きます。なんという美しい響き。序奏で整えられた空間に、ぐさりと心に刺さる一音。オルガンの音がこれほど美しく鳴り響くこの曲は知りません。レホトカはおそらく楽譜通りに淡々と弾いているのでしょうが、淡々とした演奏からは豊かな音楽がにじみ出ています。カデンツァはもはやオルガンの天上に届かんばかりの孤高の響きに打たれっぱなしです。オルガンのエネルギーがオケにも乗り移り、オケも素晴らしいサポート。
3楽章は落ち着いたテンポで入ります。鮮烈な響きを聴かせながらも落ち着いたオケ。やはりオルガンは正確無比なメロディーを奏でます。自身のウェブサイトにあったにらみをきかせた写真そのものの、誠実かつ厳格なのにどこか暖かい演奏。やはりオルガンの音階の醸し出す音楽的興奮がたまらない演奏。ハイドンが24歳で書いた協奏曲の素晴らしい出来を味わう名演であるとともにレホトカのオルガン演奏の真髄を味わえる演奏。

Hob.XIV:11 / Concertino [C] (1760)

コンチェルティーノということでチェンバロあるいはオルガンのために書かれた小協奏曲。前曲より少し後の1960年に作曲されたもの。オケとオルガンがいきなり掛け合うところからはじまる曲。軽快なメロディーですが、オルガンの低音がゆったりと厚く響き、そこそこの迫力。このオルガン、高音域の良く通る音の美しさは素晴らしいものがあります。
2楽章のアダージョは暗さと郷愁を帯びた美しいメロディー。変わらず正確なリズムで淡々と弾き進めるレホトカのオルガンですが、オルガンの表現を熟知しているだけに、音楽の濃さは素晴らしいの一言。
フィナーレは軽々と楽しげなメロディーをこなして終了。

Hob.XIV:12 / Concertino [C] (c.1760)
前曲同様コンチェルティーノ。こちらの曲の方が音階の魅力が良く出た曲。オルガンの音色の美しさとオルガンが奏でる弾むメロディーの魅力が素晴らしいですね。音階のオルガンとオケの受け渡しの面白さがポイントの曲でしょう。あまり聴き込んだ曲ではありませんでしたが、この曲はなかなか面白い。
2楽章のアダージョは慈しみに溢れた美しいメロディーがじわりと来る曲。曲が進むにつれて徐々に感興も深まっていきます。カデンツァも実に味わい深い演奏。
フィナーレはコンチェルティーノらしく、軽快な曲調。オルガンを主体にオケがシンプルな伴奏を担当。音楽を自身で弾く立場で楽しむ曲のようですね。

Hob.XVIII:5 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [C] (before 1763)
再び協奏曲に戻ります。聴くと前曲のXIV:12に良く似た入りで、メロディーも良く似ています。なぜか演奏はすこし落ち着いて、キレよりも少しゆったり感を感じるものに変化。オルガンソロもすこし落ち着いて、曲を噛み締めるような演奏。オケも情が乗って演奏が深くなってきています。
入りが大人し目ですこし危惧したんですが、逆に2楽章のアンダンテは幸福感溢れるメロディーをじっくり奏でて音楽が深くなります。オルガンの淡々とした響きが心に刺さります。
3楽章はこの曲も軽快な曲調。コンチェルティーノと変わらない軽快さです。

Hob.XVIII:8 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [C] (before 1766)
冒頭から金管やティンパニが加わって重厚な響きの曲。ただし、オルガンの正確な演奏は変わらず、メロディーを良く通る音で奏でていき、オーケストラも完全にオルガンにリードされている感じは変わりません。キリッと刻まれるリズムがこのアルバムを通して保たれています。
この2楽章も感動的。誠実なオルガンの奏でる心を現れるようなメロディーが続きます。ちょっと変わったメロディーラインが淡々と続くうちに音楽に包まれる不思議な感覚はこのアルバムの2楽章に共通したもの。
フィナーレはもう少し流麗でもいいかと思うほどリズムを強調した演出。金管とティンパニが加わった壮麗な音響のオケがしっかりとリズムを刻み古典の矜持を保った渾身の演奏でしょう。

ガーボル・レホトカのオルガンによるハイドンのオルガン協奏曲を集めたアルバム。オケのブダペスト・ストリングスはハイドンに関係の深いオケです。このアルバムの聴き所はレホトカの素晴らしいオルガン。心を洗われるような素晴らしい音色と、キリッと引き締まった演奏。オケもそれに応えて渾身の演奏。オルガン協奏曲のアルバムをいろいろ聴いていますが、このオルガンは見事の一言です。ハイドンが若い頃に書いた協奏曲ですが、いろいろな協奏曲を聴くにつけハイドンが楽器の音色に鋭敏な感覚をもっていた事がわかります。このチェンバロもしくはオルガンのために書かれた協奏曲ですが、オルガンの旋律の美しさをこれだけうまく表現した演奏はありません。評価はガーボルのオルガンの素晴らしさに全曲[+++++]とします。
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