【新着】アマリリス四重奏団の「夢」「騎士」
今日は若手クァルテットのアルバム。

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TOWER RECORDS
アマリリス四重奏団(Amaryllis Quartett)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.50のNo.5「夢」、Op.74のNo.3「騎士」、その2曲の間にヴェーベルンの弦楽四重奏のための5つの楽章Op.5の3曲を収めたアルバム。収録は2010年10月23日、2011年4月27日から29日、ドイツ、ハンブルクのアルベルト・シュバイツァー体育館の講堂でのセッション録音。
HMV ONLINEの紹介記事によると、このアルバムはこのクァルテットのデビュー盤のようですね。デビュー盤にハイドン2曲と間にヴェーベルンをもってくるあたり、ただならぬ気迫を感じます。
アマリリス四重奏団はバーゼルでヴァルター・レヴィン、ケルンでアルバン・ベルク四重奏団などに師事し、2011年イタリアのレッジョ・エミリアで行われたパオロ・ボルチアー二・コンクールで1等なしの2等になり、またその直後に第6回メルボルン国際室内楽コンクールで優勝し国際的に注目されるようになったクァルテット。このアルバムはそれらの表彰の直前に録音されたデビュー盤ということで、このクァルテットの今後を占うアルバムと言えるでしょう。
メンバーは下記のとおり。
第1ヴァイオリン:グスタフ・フリーリングハウス(Gustav Frielinghaus)
第2ヴァイオリン:レナ・ヴィルト(Lena Wirth)
ヴィオラ:レナ・エッケルス(Lena Eckels)
チェロ:イヴ・サンド(Yves Sandoz)
このクァルテットのウェブサイトがありましたので紹介しておきます。
Amaryllis Quartett(独文・英文)
Hob.III:48 / String Quartet Op.50 No.5 (II:"Der Traum" 「夢」) [F] (1787)
語りかけるようなこの曲の曲調を踏まえた、とぎれとぎれな感じを残しつつ、現代的なシャープさとダイナミックレンジの大きな演奏。鋼のような強い響きをもちながら、それをたまにしか見せず、不気味な迫力をも感じさせる演奏。テクニックは素晴らしいものがあります。ハイドンの弦楽四重奏曲としては異例のダイナミックさ。ポイントは強音ではなく、強弱の対比と溜め。
2楽章はヴェーベルンばりの現代風にシャープに切れ込んで来るのかと思いきや、意外と普通の演奏。筆の動き自体の意外性が特徴の書のような自在なフレージング。やはりアプローチは斬新ではありますが、この曲の2楽章の真髄をついているかと言うと、少し若さが出ているかもしれません。
3楽章にきて、このクァルテットの狙いが見えたような気がします。1楽章同様フレーズごとの表情と音量の対比、自在なフレージングとハイドンの曲を解体して再構成するような意欲的な表現。クレーメルのようなアプローチですが、クレーメルほどの冷徹さとカミソリのような切れ味ではなく、程良い楽天性があり、それがハイドンをデビュー盤に選んだ所以なのかも知れません。
フィナーレは、鋭さと鮮烈さを強烈に印象づける演奏。録音のせいか、ヴァイオリンが鋭さを帯びた鋭角的な音で、逆にチェロ、ヴィオラは音量を抑え気味のバランス。最後はきっちりしめて終了。
間にはさまったヴェーベルンで脳を初期化。ヴェーベルンはこのクァルテット特徴である鋭さがかなり目立つ演奏。かなり迫力を感じる演奏ですが逆に抑えたほうが前衛性が良く出るのではと感じました。ヴェーベルンは好きな作曲家ですが、いろいろな演奏を聴き込んでいる訳ではないので、ご参考まで。
Hob.III:74 / String Quartet Op.74 No.3 "Reiterquartetett" 「騎士」 [g] (1793)
聴き慣れた騎士の導入部のメロディー。オンマイクでかなり近くに定位するダイレクトな音像。やはりフレーズごとのメリハリをかなり効かせての演奏。特にヴァイオリンパートの切れ味はなかなかのもの。フレーズごとにテンポや間の対比を凝らして変化をつけます。聴き慣れた騎士のメロディーが新鮮に響きます。
2楽章は流麗緻密な演奏が定番ですので、このクァルテットがどう来るか興味津々。独特のメロディー自体を聴かせるというアプローチはとらず、曲の合間に抑えた弓の表現の練習のような風情。この辺の曲に対する独特の視点の存在がこのクァルテットの真骨頂でしょう。最後の抑えた表現も秀逸。
3楽章のアレグレットはこのアルバムのなかでは比較的オーソドックスな方。それでもかなりの起伏とフレーズ感の対比。普通だともうすこし流麗な方向かリズミカルな方向に振れるのでしょうが、そのどちらでもなく現代音楽風の緊張感に包まれた演奏。
フィナーレも自在なフレージングが健在。速い音階の部分はキリッとエッジを立ててクッキリと旋律を表現していきます。軽い弓さばきでスピーディに騎士のフィナーレをどんどん進めていく感じです。このフィナーレは4人のテクニックが遺憾なく発揮されています。
新進気鋭のアマリリス四重奏団のデビューアルバムは、これまでのハイドン演奏史に一石を投じようとした渾身の演奏。鋭い音色とコンセプチュアルなアプローチ、そしてハイドンにヴェーベルンを挟むと言うプログラミングと個性的なプロダクションとなりました。演奏はレビューに記載したとおり現代感覚溢れるものでしたが、逆にこれまで幾多のクァルテットが表現したハイドンの素朴な良さ、音楽の豊かさというものの良さを引き立ててしまったかもしれません。プロダクションとしての創意、企画は買いですが、演奏には、今後の音楽的成熟の余地があるということで、ハイドンの両曲は[++++]とします。今後のアルバムが楽しみなクァルテットでもありますね。

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アマリリス四重奏団(Amaryllis Quartett)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.50のNo.5「夢」、Op.74のNo.3「騎士」、その2曲の間にヴェーベルンの弦楽四重奏のための5つの楽章Op.5の3曲を収めたアルバム。収録は2010年10月23日、2011年4月27日から29日、ドイツ、ハンブルクのアルベルト・シュバイツァー体育館の講堂でのセッション録音。
HMV ONLINEの紹介記事によると、このアルバムはこのクァルテットのデビュー盤のようですね。デビュー盤にハイドン2曲と間にヴェーベルンをもってくるあたり、ただならぬ気迫を感じます。
アマリリス四重奏団はバーゼルでヴァルター・レヴィン、ケルンでアルバン・ベルク四重奏団などに師事し、2011年イタリアのレッジョ・エミリアで行われたパオロ・ボルチアー二・コンクールで1等なしの2等になり、またその直後に第6回メルボルン国際室内楽コンクールで優勝し国際的に注目されるようになったクァルテット。このアルバムはそれらの表彰の直前に録音されたデビュー盤ということで、このクァルテットの今後を占うアルバムと言えるでしょう。
メンバーは下記のとおり。
第1ヴァイオリン:グスタフ・フリーリングハウス(Gustav Frielinghaus)
第2ヴァイオリン:レナ・ヴィルト(Lena Wirth)
ヴィオラ:レナ・エッケルス(Lena Eckels)
チェロ:イヴ・サンド(Yves Sandoz)
このクァルテットのウェブサイトがありましたので紹介しておきます。
Amaryllis Quartett(独文・英文)
Hob.III:48 / String Quartet Op.50 No.5 (II:"Der Traum" 「夢」) [F] (1787)
語りかけるようなこの曲の曲調を踏まえた、とぎれとぎれな感じを残しつつ、現代的なシャープさとダイナミックレンジの大きな演奏。鋼のような強い響きをもちながら、それをたまにしか見せず、不気味な迫力をも感じさせる演奏。テクニックは素晴らしいものがあります。ハイドンの弦楽四重奏曲としては異例のダイナミックさ。ポイントは強音ではなく、強弱の対比と溜め。
2楽章はヴェーベルンばりの現代風にシャープに切れ込んで来るのかと思いきや、意外と普通の演奏。筆の動き自体の意外性が特徴の書のような自在なフレージング。やはりアプローチは斬新ではありますが、この曲の2楽章の真髄をついているかと言うと、少し若さが出ているかもしれません。
3楽章にきて、このクァルテットの狙いが見えたような気がします。1楽章同様フレーズごとの表情と音量の対比、自在なフレージングとハイドンの曲を解体して再構成するような意欲的な表現。クレーメルのようなアプローチですが、クレーメルほどの冷徹さとカミソリのような切れ味ではなく、程良い楽天性があり、それがハイドンをデビュー盤に選んだ所以なのかも知れません。
フィナーレは、鋭さと鮮烈さを強烈に印象づける演奏。録音のせいか、ヴァイオリンが鋭さを帯びた鋭角的な音で、逆にチェロ、ヴィオラは音量を抑え気味のバランス。最後はきっちりしめて終了。
間にはさまったヴェーベルンで脳を初期化。ヴェーベルンはこのクァルテット特徴である鋭さがかなり目立つ演奏。かなり迫力を感じる演奏ですが逆に抑えたほうが前衛性が良く出るのではと感じました。ヴェーベルンは好きな作曲家ですが、いろいろな演奏を聴き込んでいる訳ではないので、ご参考まで。
Hob.III:74 / String Quartet Op.74 No.3 "Reiterquartetett" 「騎士」 [g] (1793)
聴き慣れた騎士の導入部のメロディー。オンマイクでかなり近くに定位するダイレクトな音像。やはりフレーズごとのメリハリをかなり効かせての演奏。特にヴァイオリンパートの切れ味はなかなかのもの。フレーズごとにテンポや間の対比を凝らして変化をつけます。聴き慣れた騎士のメロディーが新鮮に響きます。
2楽章は流麗緻密な演奏が定番ですので、このクァルテットがどう来るか興味津々。独特のメロディー自体を聴かせるというアプローチはとらず、曲の合間に抑えた弓の表現の練習のような風情。この辺の曲に対する独特の視点の存在がこのクァルテットの真骨頂でしょう。最後の抑えた表現も秀逸。
3楽章のアレグレットはこのアルバムのなかでは比較的オーソドックスな方。それでもかなりの起伏とフレーズ感の対比。普通だともうすこし流麗な方向かリズミカルな方向に振れるのでしょうが、そのどちらでもなく現代音楽風の緊張感に包まれた演奏。
フィナーレも自在なフレージングが健在。速い音階の部分はキリッとエッジを立ててクッキリと旋律を表現していきます。軽い弓さばきでスピーディに騎士のフィナーレをどんどん進めていく感じです。このフィナーレは4人のテクニックが遺憾なく発揮されています。
新進気鋭のアマリリス四重奏団のデビューアルバムは、これまでのハイドン演奏史に一石を投じようとした渾身の演奏。鋭い音色とコンセプチュアルなアプローチ、そしてハイドンにヴェーベルンを挟むと言うプログラミングと個性的なプロダクションとなりました。演奏はレビューに記載したとおり現代感覚溢れるものでしたが、逆にこれまで幾多のクァルテットが表現したハイドンの素朴な良さ、音楽の豊かさというものの良さを引き立ててしまったかもしれません。プロダクションとしての創意、企画は買いですが、演奏には、今後の音楽的成熟の余地があるということで、ハイドンの両曲は[++++]とします。今後のアルバムが楽しみなクァルテットでもありますね。
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