【追悼】モーリス・アンドレ/パイヤールのトランペット協奏曲

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モーリス・アンドレ(Maurice André)のトランペット、ジャン=フランソワ・パイヤール(Jean-François Paillard)指揮のジャン=フランソワ・パイヤール管弦楽団の演奏でハイドンのトランペット協奏曲を収めたアルバム。手元のアルバムはワーナー・ミュージック・ジャパンの国内盤で他にアンドレ・ナヴァラとカール・リステンパルトのチェロ協奏曲2番、パイヤールなどによる、ハイドンの真作ではない2つのホルンのための協奏曲の3曲を収めていますが、今日はモーリス・アンドレのトランペット協奏曲を取りあげましょう。収録は1960年代中頃との記載がありますが、詳しい表示はありません。
このモーリス・アンドレのトランペット協奏曲は多くの人にとってハイドンのトランペット協奏曲に親しむきっかけとなった演奏ではないかと思います。昔から良く取りあげられた演奏ですので懐かしい方も多いのではないでしょうか。かく言う私は、実はあまりなじみのある演奏ではなく、トランペット協奏曲は前に取りあげたフリードマン・インマーとホグウッド盤が私の刷り込み盤。ということでモーリス・アンドレに格別深い思い入れがある訳ではないものの、トランペットと言えばアンドレ、そしてそのアンドレが亡くなったとのことで、この有名盤を取りあげようと思った次第です。
モーリス・アンドレが亡くなったのは報道によればこの2月25日、仏南西部バイヨンヌの病院で。78歳だったとのことです。流石にWikipedia、まだ3日しか経っていませんが既に死亡日が登録されています。1933年、南仏のアレス(Alès)の生まれ。家はアマチュア音楽家で軍楽隊に参加し、パリ音楽院に進んだ。在学中から才能が開花し、卒業の翌年、パリ国際音楽コンクールで優勝した。1955年にジュネーヴ国際音楽コンクールで優勝、また1963年にもミュンヘン国際音楽コンクールで優勝と名を馳せ有名に。テレマン、バッハ、ハイドン、フンメルらのトランペットのための協奏曲を録音しこれらの作品の再評価につなげ、またピッコロトランペットを開発、普及させた事でも知られるとのこと。トランペット独奏曲のレパートリーを広げ、録音は雄に300点以上、またたびたび来日し日本でも知られる存在。クラシックだけではなくイージーリスニングなどのジャンルもこなした人。
当ブログでは、後年のリッカルド・ムーティーとのトランペット協奏曲の方を以前に取りあげています。
2010/11/05 : ハイドン–協奏曲 : モーリス・アンドレのトランペット協奏曲
トランペット協奏曲も最近のバルソムなど抜群のテクニックと鮮度の高い演奏を聴き慣れてしまうと、このアルバムはいささかクラシカルな印象ではあります。追悼ということで、過去の栄華とその真髄に迫れますでしょうか。
Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
記憶の音響に近い音色。しかしパイヤールのコントロールするオケは記憶のものより遥かに力強く、そしてインテンポで攻めるものでした。1960年代としては録音も良く、鮮度も十分。アンドレのトランペットは迫力のオケの上で柔らかく転がるような滑らかな音色。明るく朗々としたトランペットの音色がアンドレらしいところ。徐々に吹く圧力が高まり、音が前に出てきます。この演奏が刷り込みだった人はおそらく懐かしさに咽んでいることでしょう。独特のトランペットの大きな呼吸とギャラントなスタイルのオケの組み合わせ。一貫して速めのテンポでぐいぐいいきます。カデンツァは柔らかいアンドレのトランペットの音色の魅力に溢れ、高音の突き抜けるというよりはしっとりと伸びる音色は流石なもの。1楽章は記憶の中の演奏よりもも数段クリアでキビキビしたものでした。
アンダンテ・アンタービレはとろけるようなトランペットを聴けと言わんばかりのアンドレのソロ。古典期の曲にしてはムードたっぷりの演奏でもあります。ソロも指揮もオケもフランス人主体ということの影響でしょうか。独墺系の響きとはちょっと違う音楽です。トランペットの伸びのある高音はやはり余裕たっぷりで聴き応えあります。この辺りは流石なところです。
フィナーレは再びパイヤールの覇気が支配。もう少し華麗な印象でしたがかなりの迫力。一声を風靡した演奏だけに、隙はなくアンドレとオケの息はピタリと合っています。最後はティパ二のバチ捌きが見えるよう。トランペットもオケも痛快にフィニッシュ。
非常に久しぶりに取り出して聴いた、モーリス・アンドレのトランペットによるハイドンのトランペット協奏曲。ムーティとの演奏のレビューに書いたとおり、ちょっとキレの悪い印象をもっていましたが、流石に往年の人気盤。アンドレの柔らかな音色にパイヤールのサクサクキレるオケを楽しむ事が出来ました。以前の評価よりちょっと上げて、[++++]としたいと思います。
先日ベルグルンドの訃報に接したばかりですが、一時代を築いた演奏家が次々と亡くなるのは、やはり寂しいものですね。今日は往年の名演奏の響きをたっぷり味わって、モーリス・アンドレさんを追悼することにいたしましょう。どうか安らかに。
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