ディルク・フェルミューレン/シンフォニアの悲しみ、告別(ハイドン)

ディルク・フェルミューレン(Dirk Fermeulen)指揮のシンフォニア(Sinfonia)の演奏で、ハイドンの交響曲44番「悲しみ」、45番「告別」、歌劇「アチデとガラテア」序曲の3曲を収めたアルバム。収録はベルギー、ブリュッセルのSteurbautスタジオでのセッション録音。レーベルはKOCH DISCOVER INTERNATIONAL。
アルバムの風情はさも廉価盤然としたものなので、もしかしたら「あたり」の可能性もあると思い手に入れたアルバム。選曲は名曲ぞろいで悪くありません。
指揮者のフェルミューレンについて調べると、オフィシャルサイトがありました。
Dirk Fermeulen(英文など)
サイトの情報によると、フェルミューレンはベルギーの指揮者。古典派、初期ロマン派の曲を得意とする事で知られていますが、バロックから現代音楽の新作を演奏するまでと広いレパートリーをもつとのこと。当初はソロヴァイオリニストとしてヨーロッパ中で有名指揮者と演奏し、フランダース・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを数年にわたり務めました。1985年に指揮者に転向することを決断し、ウィーンで指揮を学び、1991年に自らプリマ・ラ・ムジカ室内管弦楽団を設立し、間もなくベルギーでも指折りのオーケストラとみなされるようになりました。このオケとは2回アイゼンシュタットの国際ハイドン・ターゲに招待されています。フェルミューレンはモーツァルトのオペラを数多く振っており、得意としているようですね。現在はブリュッセル王立音楽院の教職にあります。
手元にアルバムはありませんが、このアルバムの他にもハイドンの交響曲のアルバムが何枚かリリースされていますので、ハイドンも得意としているのでしょう。ちょっと期待が高まります。
Hob.I:44 / Symphony No.44 "Trauer" 「悲しみ」 [e] (before 1772)
冒頭はいい響き。小規模オケのタイトな響き。弦楽器の音色はもうちょっと潤いが欲しい気もしますが、テンポや推進力は水準以上。普通にいい演奏なんですが、前記事でレビューしたベルグルンドなどの演奏との違いはわずかなものの、個性が弱いと感じてしまいます。ほんの紙一重なんですが、普通の演奏に聴こえてしまうのも正直なところ。
2楽章のメヌエットも破綻なく、穏やかないい演奏。一貫性がありながら目先のクイックさもあり、フレージングにも工夫が見られます。
この曲で一番良かったのがつづく3楽章のアダージョ。表現が柔らかくなり、すこし踏み込んだ解釈を聴かせます。音を切り気味に訥々と進めているのが効果的なんでしょうね。つくづくいい曲だと思いますね。木管楽器の美しい音色が沁みてきます。
フィナーレは個々の楽器の存在感がきちんとあぶりだされていますが、やはりすこし潤いに欠け、またちょっと粗さも見えてしまいます。録音はオンマイクで残響は少なめなのも影響しているかもしれませんね。テンポと推進力は一貫性があり悪くありません。
Hob.I:45 / Symphony No.45 "Farewell" 「告別」 [f sharp] (1772)
前曲同様小編成オケの特徴が良く出た演奏。演奏の特徴も前曲とよく似ていますが、良く聴くと、すこしリズムに重さがあり、それが全体の印象のキレに影響している事がわかります。オケのメンバーのテクニックに起因するものでしょうか。全般に律儀で真面目な演奏と言う範疇です。曲の骨格設計は悪くありません。
アダージョは前曲同様、浸透力があります。ただ、ここに来て気づいたのは楽章間の対比が弱く、それがちょっと一本調子な印象を残しているのも事実。あとは間の取り方も同様、もう少しメリハリをつけることで、フレーズ間の対比をもう少しクッキリさせることができると思います。
メヌエットに入ると曲自体のもつ鮮烈な印象がうまく出せて調子が上がってきているようです。オケのキレも徐々にアップしてきました。今まであまり意識してきませんでしたが、ホルンがなかなかいい音。
有名なフィナーレの前半はメヌエットの延長で、勢いを感じさせますが、やはり少々単調さをはらんでいるのが正直なところ。そして、奏者が一人ずつ立ち去る有名な部分は学芸会での演奏のように、一人一人の奏者が律儀な演奏で、普通だったら詩情漂う演奏のところ、逆に純粋にメロディーを弾く奏者の数が減る事自体を楽しめと言われているような演奏。不思議な感覚の演奏です。
Hob.XXVIII:1 / "Acide e Galatea" 「アチデとガラテア」 (1762)
序曲(Ia:5)のみですが、教科書的な律儀さの支配する演奏。演奏によってはかなりの勢いを感じさせるのでしょうが、おそらくこれがフェルミューレンのスタイルなのでしょう。ちょっと教条的というか家父長的と言うか、古風とも言い切れないのですが、ちょっと古いスタイルという気がします。
当たり狙いで聴き始め、出だしが良さそうな事から、あまり聴き進まないうちにレビュー候補としてしまったこのアルバム。フェルミューレンの律儀な人柄が表現されたのでしょうが、名盤ひしめく悲しみや告別のアルバムとしてはインパクト不足なのは正直なところ。原因の一つはオケにあるような気がします。ジャケットのオケの表記はシンフォニアとしか記載されていないので、寄せ集めのオケでしょうか。探してみましたがあまり情報もありません。評価は3曲とも[+++]とします。
このアルバム、心に残る演奏とそうでない演奏の違いをよくわからせてくれたような気もします。やはり選び抜いたアルバムをレビューした方が筆も進みますね。
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