巌本真理弦楽四重奏団のひばり

巌本真理弦楽四重奏団の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.64のNO.5「ひばり」、和波孝禧のヴァイオリンと岩崎淑のピアノによるベートーヴェンのヴァイオリンソナタ「春」の2曲を収めたアルバム。収録年代の表記はありません。レーベルは学研のKapelleというレーベル。今日はもちろん巌本真理弦楽四重奏団のひばりを取りあげます。
巌本真理は1926年、東京西巣鴨に生まれたヴァイオリニスト。自宅でヴァイオリンを学び1937年音楽コンクールで一位となり天才少女と呼ばれる。1939年レオ・シロタの伴奏で第一回独奏会を開く。母親がアメリカ人ということで出生時は巌本メリー・エステルという名前でしたが、戦時に敵性語とされたため1942年真理と改名したとのこと。巌本真理弦楽四重奏団は彼女が38歳の1964年に設立されたクァルテット。メンバーは下記のとおり。
第1ヴァイオリン:巌本真理
第2ヴァイオリン:友田啓明
ヴィオラ:菅沼準二(1976年より生沼誠司)
チェロ:黒沼俊夫
1967年にはじめて定期演奏会を行い1979年巌本真理が亡くなるまで94回の定期演奏会を開催しています。巌本の死後、このクァルテットは演奏活動を休止しました。本格的な活動はわずか12年間という事です。
Hob.III:63 / String Quartet Op.64 No.5 "Lerchenquartetett" 「ひばり」 [D] (1790)
1楽章の出だしは抑えた伴奏から、いきなり巌本真理のヴァイオリンが有名な旋律を2段階くらい浮かび上らせて鳴り響く素晴らしい存在感。音響はデッドな空間に実在感ある各楽器がクッキリと定位するもの。かなりオンマイクの録音。どちらかというとストイックな響きでハイドンの名曲をキリリと引き締めて演奏します。のどかなひばりがかなり緊張感のある響きでぐっと迫ってきます。
2楽章も巌本真理の張りつめたヴァイオリンの響きが真剣の青白い光を帯びて心に切れ込んできます。このストイックな響きはヨゼフ・シゲティのテンションの強い響きにも似ていますが、フレージングには日本的な純粋さ、侘び寂びを感じるのが不思議なところ。他の3人の演奏も同様の緊張感を帯びており、まるで真剣の居合いを見るような趣があります。オーストリアのハイドンの曲を西洋楽器のヴァイオリンなどで演奏しているにも関わらず、この和風な趣は何でしょうか。研ぎすまされた鋭敏な感覚の演奏で、脳が覚醒するようです。
メヌエットは弾むというよりは切れ込む感じ。ほのかに明るさを感じさせますが青白い炎は消えていません。中間部は冷徹さがもどりざっくりした響きで変化を付けます。後半は再び明るさを感じさせるなど温度変化が見事。
フィナーレは音程が少しふらつくところがありますが、速いパッセージを乾いた音色で各楽器が追い込み、少々のたどたどしさもアーティスティックに響きます。テクニックは万全とは言いませんが、芸術性は非常に深いものを感じる演奏です。最後は素晴らしい迫力でフィニッシュ。
巌本真理弦楽四重奏団によるハイドンのひばりは、研ぎすまされた緊張感と日本的な響きを聴かせる、他では聴くことができないハイドンでした。とくにアダージョの孤高の響きは流石です。終楽章ではテクニックを超えたところにある芸術性に到達しています。評価は[+++++]としました。また一枚心に残る名演奏に出会えました。
- 関連記事
-
-
プラジャーク四重奏団のOp.50(ハイドン)
2012/03/30
-
アムステルダム弦楽四重奏団の弦楽四重奏曲集
2012/03/17
-
アマティ四重奏団のOp.77
2012/03/09
-
【新着】アマリリス四重奏団の「夢」「騎士」
2012/03/06
-
巌本真理弦楽四重奏団のひばり
2012/02/13
-
カルミナ四重奏団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉
2012/01/30
-
タカーチ四重奏団のOp.71(ハイドン)
2012/01/18
-
アウリン四重奏団のOp.74
2012/01/07
-
東京クヮルテットの太陽四重奏曲No.2ライヴ
2011/12/18
-