ヨー・ヨー・マ/ホセ=ルイス・ガルシア/イギリス室内管のチェロ協奏曲集
今日もチェロ協奏曲集。コレクションの穴を埋める1枚。

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ヨー・ヨー・マ(Yo Yo Ma)のチェロ、ホセ=ルイス・ガルシア(José-Louis Garcia)指揮のイギリス室内管弦楽団の演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲1番、2番の2曲を収めたアルバム。収録は1979年10月8日、9日、15日、ロンドンのCBSスタジオでのセッション録音。レーベルはSONY CLASSICAL。
このアルバム、最近まで手元にありませんでした。
ヨー・ヨー・マ1955年パリで生まれの中国人チェリスト。父は中国浙江省のニンポー生まれの指揮者、作曲家。母は香港生まれで台湾国立中央大学出身の声楽家と音楽一家。2人とも中国を離れパリに渡り、その後マが7歳の時にニューヨークに移住し、今もニューヨークに在住とのこと。小さい頃からヴァイオリン、ヴィオラ等を習い、7歳の時にはジョン・F・ケネディの前で演奏、8歳でレナード・バーンスタインが行ったコンサートでアメリカのテレビに出演するなど所謂神童です。ハーバード大学で人類学の学位を取得、また、ジュリアード音楽院でレナード・ローズにチェロを学び、以後の活躍がご存知のとおり。日本でも坂東玉三郎との共演やサントリーのCMに出演する等クラシックの演奏家の中では最も知名度の高い人の一人でしょう。
わたしはバッハの無伴奏のアルバムや、あとはテレビで放映された演奏を聴いたくらいで、あまりなじみはありません。媚びない流麗さと正確無比はテクニックが印象的な人というイメージです。
今日取り上げるアルバムは1979年とマ24歳の時の演奏。30年以上前の演奏です。
Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
ちょっと意表をつくかなりこもった音響。高域がかなり減衰して、ハイ下がりの録音。ガルシアの伴奏はテンポのいいオーソドックスなコントロール。マのチェロは軽々としたボウイングが特徴。特段踏み込む事はなく1番の1楽章はソロも非常にオーソドックスな演奏。どちらかというとガルシアのコントロールするイギリス室内管の弾む感じの方が目立つほど。マの若い表現意欲が聴かれるかと思いきや、どちらかと言えば抑えた表現。中盤以降、チェロの高音の伸びの良い音が徐々に目立つようになります。キレの良い軽さと要所で聴かせる伸びのよい音が特徴という事でしょう。カデンツァは後年のマらしい自在さの片鱗が見え隠れします。
1楽章のスタイルをほぼ踏まえた2楽章のアダージョですが、オーソドックスな演奏の振幅がすこし広がり、深さをうまく表現できています。結果的に呼吸の深さが感じられ1楽章以上に音楽が深くなりました。ここではオーソドックスさが美点になっています。演奏によっては演歌風というか浪花節的にさえ聴こえるフレーズが洗練された鳴きになるあたり、マの媚びないフレージングは流石なもの。この楽章はマが主導権を握っています。
フィナーレはオケの推進力が見事。ハイ下がりの音響でもオーケストラのエネルギーがしっかり伝わってきます。この楽章、マの素晴らしいテクニック炸裂です。やはり溜めのない軽々とキレのいいフレーズを抑えた音量でスイスイいくあたりは痛快そのもの。速いパッセージの恍惚感がこの演奏のポイントでしょう。最後はガッチリフィッシュ。
Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
ハイ下がりは変わりありませんが、程度は少し抑えられ、こちらの方がバランスの良い録音。何度聴いても、誰の演奏で聴いてもうっとりするこの曲の入り。ガルシアのコントロールは、前曲より落ち着いたものですが活き活きとした感じは残っていて悪くありません。マのチェロは濃い伸びた音とあっさりとしたフレージングの織りなす独特の感じ。あっさりした演奏が濃い情感を浮かび上がらせています。ちょっと音程が落ち着かないところがあります。もう1テイク録る余裕がなかったのでしょうか。長大な1楽章の音楽をどう設計するのかすこし迷っているような感じもあります。カデンツァに入ると徐々にマの表現力が顔を覗かせ、大人しい音楽ながら濃さを見せつけます。
アダージョの伴奏は音響的に沈み込みますが、音楽はそこそこ。そこにマの伸びの良いチェロが抜群の存在感で乗り、マが主導権を握ります。アダージョはソロの深みを聴くべき楽章です。静寂に響くチェロの孤高の音色。
フィナーレは流すように力を抜いた部分とアクセントの繰り返しがえも言われぬ幸福感を演出。最後までガルシアのコントロールは生気を失わずソロをサポート。最後は素晴らしいオーケストラのエネルギーを浴びるようなフィニッシュ。
30年以上前に録られた名手ヨー・ヨー・マの弾くハイドンのチェロ協奏曲集。もうすこし表現意欲と言うか若さを感じる演奏かと思いきや、演奏自体は後年の至芸の片鱗を感じさせながらも踏み込みすぎたところはなく、バランス感覚に溢れたもの。マのソロが目立つのかと思ったら、意外とガルシアとイギリス室内管の活き活きとした演奏の方に耳がいきます。ハイドンに対する視点よりも、マの曲に対するアプローチに関心が向く演奏と言うべきでしょう。評価は両曲とも[++++]としました。この演奏は後年のマのスタイルの萌芽が感じられる初期の貴重な録音と言うべきでしょう。

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ヨー・ヨー・マ(Yo Yo Ma)のチェロ、ホセ=ルイス・ガルシア(José-Louis Garcia)指揮のイギリス室内管弦楽団の演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲1番、2番の2曲を収めたアルバム。収録は1979年10月8日、9日、15日、ロンドンのCBSスタジオでのセッション録音。レーベルはSONY CLASSICAL。
このアルバム、最近まで手元にありませんでした。
ヨー・ヨー・マ1955年パリで生まれの中国人チェリスト。父は中国浙江省のニンポー生まれの指揮者、作曲家。母は香港生まれで台湾国立中央大学出身の声楽家と音楽一家。2人とも中国を離れパリに渡り、その後マが7歳の時にニューヨークに移住し、今もニューヨークに在住とのこと。小さい頃からヴァイオリン、ヴィオラ等を習い、7歳の時にはジョン・F・ケネディの前で演奏、8歳でレナード・バーンスタインが行ったコンサートでアメリカのテレビに出演するなど所謂神童です。ハーバード大学で人類学の学位を取得、また、ジュリアード音楽院でレナード・ローズにチェロを学び、以後の活躍がご存知のとおり。日本でも坂東玉三郎との共演やサントリーのCMに出演する等クラシックの演奏家の中では最も知名度の高い人の一人でしょう。
わたしはバッハの無伴奏のアルバムや、あとはテレビで放映された演奏を聴いたくらいで、あまりなじみはありません。媚びない流麗さと正確無比はテクニックが印象的な人というイメージです。
今日取り上げるアルバムは1979年とマ24歳の時の演奏。30年以上前の演奏です。
Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
ちょっと意表をつくかなりこもった音響。高域がかなり減衰して、ハイ下がりの録音。ガルシアの伴奏はテンポのいいオーソドックスなコントロール。マのチェロは軽々としたボウイングが特徴。特段踏み込む事はなく1番の1楽章はソロも非常にオーソドックスな演奏。どちらかというとガルシアのコントロールするイギリス室内管の弾む感じの方が目立つほど。マの若い表現意欲が聴かれるかと思いきや、どちらかと言えば抑えた表現。中盤以降、チェロの高音の伸びの良い音が徐々に目立つようになります。キレの良い軽さと要所で聴かせる伸びのよい音が特徴という事でしょう。カデンツァは後年のマらしい自在さの片鱗が見え隠れします。
1楽章のスタイルをほぼ踏まえた2楽章のアダージョですが、オーソドックスな演奏の振幅がすこし広がり、深さをうまく表現できています。結果的に呼吸の深さが感じられ1楽章以上に音楽が深くなりました。ここではオーソドックスさが美点になっています。演奏によっては演歌風というか浪花節的にさえ聴こえるフレーズが洗練された鳴きになるあたり、マの媚びないフレージングは流石なもの。この楽章はマが主導権を握っています。
フィナーレはオケの推進力が見事。ハイ下がりの音響でもオーケストラのエネルギーがしっかり伝わってきます。この楽章、マの素晴らしいテクニック炸裂です。やはり溜めのない軽々とキレのいいフレーズを抑えた音量でスイスイいくあたりは痛快そのもの。速いパッセージの恍惚感がこの演奏のポイントでしょう。最後はガッチリフィッシュ。
Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
ハイ下がりは変わりありませんが、程度は少し抑えられ、こちらの方がバランスの良い録音。何度聴いても、誰の演奏で聴いてもうっとりするこの曲の入り。ガルシアのコントロールは、前曲より落ち着いたものですが活き活きとした感じは残っていて悪くありません。マのチェロは濃い伸びた音とあっさりとしたフレージングの織りなす独特の感じ。あっさりした演奏が濃い情感を浮かび上がらせています。ちょっと音程が落ち着かないところがあります。もう1テイク録る余裕がなかったのでしょうか。長大な1楽章の音楽をどう設計するのかすこし迷っているような感じもあります。カデンツァに入ると徐々にマの表現力が顔を覗かせ、大人しい音楽ながら濃さを見せつけます。
アダージョの伴奏は音響的に沈み込みますが、音楽はそこそこ。そこにマの伸びの良いチェロが抜群の存在感で乗り、マが主導権を握ります。アダージョはソロの深みを聴くべき楽章です。静寂に響くチェロの孤高の音色。
フィナーレは流すように力を抜いた部分とアクセントの繰り返しがえも言われぬ幸福感を演出。最後までガルシアのコントロールは生気を失わずソロをサポート。最後は素晴らしいオーケストラのエネルギーを浴びるようなフィニッシュ。
30年以上前に録られた名手ヨー・ヨー・マの弾くハイドンのチェロ協奏曲集。もうすこし表現意欲と言うか若さを感じる演奏かと思いきや、演奏自体は後年の至芸の片鱗を感じさせながらも踏み込みすぎたところはなく、バランス感覚に溢れたもの。マのソロが目立つのかと思ったら、意外とガルシアとイギリス室内管の活き活きとした演奏の方に耳がいきます。ハイドンに対する視点よりも、マの曲に対するアプローチに関心が向く演奏と言うべきでしょう。評価は両曲とも[++++]としました。この演奏は後年のマのスタイルの萌芽が感じられる初期の貴重な録音と言うべきでしょう。
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