アンドレ・ナヴァラ/パウムガルトナー/カメラータ・アカデミカのチェロ協奏曲2番
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アンドレ・ナヴァラ(André Navarra)のチェロ、ベルンハルト・パウムガルトナー(Bernhard Paumgartner)指揮のザルツブルク・モーツァルテウム・カメラータ・アカデミカの演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲2番とボッケリーニのチェロ協奏曲の2曲を収めたアルバム。収録は1959年6月23日、24日、ザルツブルクのモーツァルテウム大ホールでのセッション録音。レーベルはDENONで2007年にリリースされたアルバムですが、原盤はAriola-Eurodiscという事です。
アンドレ・ナヴァラは1911年南フランスのビスケー湾沿いのスペイン国境にちかいビアリッツ生まれのチェリスト。トゥールーズ音楽院を卒業後、パリ音楽院でチェロと室内楽を学んだ。若い頃ははクァルテットや三重奏団で演奏を重ねて経験を積み、1931年ラロのチェロ協奏曲でソロデビュー。1937年にはウィーン国際チェロコンクールで優勝したとのこと。戦後はフランスを代表するチェリストとして世界各地へ演奏旅行を行い、日本にも1962年以来4回来日しているそうです。1949年よりパリ音楽院で教職に就いて以降、各地で指導を担当。1988年イタリアシエナのホテルで心臓発作で亡くなられたとのことです。
このアルバムの演奏はナヴァラ47歳の演奏。アンドレ・ナヴァラのハイドンのチェロ協奏曲は、この録音とは別にリステンパルト指揮のザール放送室内管弦楽団との1960年代の録音のErato盤があります。何れも2番の方ですが、リステンパルト盤は名手リステンパルトのサポートがちょっと不安定で今ひとつピンと来ませんでした。今日取り上げるパウムガルトナー盤はオケのサポートがカッチリと決まってナヴァラも弾きやすそう。
Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
古めの録音ながら、とろけるようなチェロ協奏曲2番のオケの伴奏。リズム感がよく、適度な推進力と、クッキリ浮かび上がるメロディーが素晴らしい伴奏。ザルツブルクの景色が目に浮かぶような情感溢れる伴奏。古風ながら見事なオケの入り。ナヴァラのチェロは最初から高音の鳴きを多用して、さっぱりとフレーズを刻みながらも美音の魅力を最大限に生かしたような演奏。イタリア風なノリの良さではなくフランス風な高貴さを感じる演奏。チェロの音はくすんだ感じですがオケと溶け合った音色は悪くありません。このアルバム、日本語の帯に世界初CD化と記載されています。ナヴァラのチェロは1楽章途中から鳴きが多くなり、意図的とも思える重さも見せ始めて、孤高の表情。リズムに乗ってスイスイ行くのと対極にあるような演奏。リズミカルなオケの伴奏の波にはあえて乗らず、独自の境地で引っかかりながらも味わい深い演奏。1楽章のカデンツァはナヴァラのこだわりを感じさせる音色と技巧を尽くしたものに聴こえます。癖は強いですがインパクトもあり、チェリストとしての表現意欲を極めたような演奏です。
アダージョはまたもパウムガルトナーの術中にはまったような情感がにじみ出るような入り。ナヴァラは今度は素直にオケに乗って泰然とした演奏。遠くから彼岸花が咲き誇る河原を見るような不思議な感覚の音楽。ナヴァラのくすみながらも張りのあるチェロの音色が心にぐさりと来ます。ヴィブラートをしっかりかけたチェロの美音の浸透力は素晴らしいものがあります。静かに癒しを置いていくように終わります。
フィナーレはきつ目に燻した燻製のようなナヴァラのチェロの音色がぐいぐいオケを引っ張っていくような雰囲気。気づくと常時キレのよいオケのサポートがナヴァラが自由に弾ける土台をしっかり作っていることがわかります。ナヴァラも弾きやすそうにしている事がわかります。カデンツァは孤高の表現が極まり、非常に純度の高い音楽となります。最後にオケが迎えにくると爽快さをともないフィニッシュ。う~ん、聴き込むと素晴らしく個性的な演奏。これはナヴァラならではのチェロの美学がしっかりとあり、しかもオケも非常に有機的な演奏。
アンドレ・ナヴァラの弾くハイドンのチェロ協奏曲2番。ちょっと聴くと1959年と言う時代のやや古びた演奏なんですが、流石にチェロはナヴァラにしか出来ない音楽が流れ、独特の高みに達しています。高潔な音楽とでも表現すればいいでしょうか。パウムガルトナーのサポートもこの時代としては完璧なものでしょう。先に触れたリステンパルトとの演奏よりもオススメでしょう。評価はナヴァラの高潔さに[+++++]をつけました。ハイドンのチェロ協奏曲をいろいろ聴きこんだベテランの人向けの演奏でしょう。ハイドンのチェロ協奏曲を聴くというアルバムではなくナヴァラのハイドンを聴くという位置づけのアルバムですね。いやいや奥が深いものです。
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