アレクサンダー・ルーディンのチェロ協奏曲集旧盤

以前素晴らしい演奏だった1枚のアルバム。

2011/01/30 : ハイドン–協奏曲 : アレクサンダー・ルーディンのチェロ&ピアノ協奏曲

アレクサンダー・ルーディンがチェロ、ピアノ、指揮を一人で担当したアルバム。この1枚で強烈な記憶が残ったアレクサンダー・ルーディンですが、今日は、先日ディスクユニオンで発見したルーディンがチェロを弾くアルバム。以前取りあげたアルバムより前の演奏です。

RudinCello2.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

アレクサンダー・ルーディン(Alexander Rudin)のチェロ、サウリュス・ソンデツキス(Saulius Sondeckis)指揮のリトアニア室内管弦楽団の演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲、1番と2番を収めたアルバム。収録は1982年4月26日、収録場所はちょっとわかりません。レーベルはロシアのMelodiyaです。

ルーディンの経歴は前記事をご覧ください。今日は指揮のソンデツキスを紹介。

指揮のサウリュス・ソンデツキスはリトアニアに1928年に生まれた指揮者。1948年から52年までヴィリニュス音楽院でオイストラフの弟子だったアレキサンダー・リヴォントにヴァイオリンを教わった後、1953年にはモスクワ音楽院で指揮をイゴール・マルケヴィチに学びます。1960年にはこのアルバムのオケであるリトアニア室内管弦楽団を創設し、2004年まで芸術監督兼首席指揮者をつとめました。彼とリトアニア室内管に多くの作品が献呈され、有名なところではシュニトケのコンチェルト・グロッソやアルヴォ・ペルトのタブラ・ラサがあります。ベルリン・フィルをはじめとする世界各国のオケを指揮し、ザルツブルク音楽祭にも登場。現在はリトアニア音楽大学教授とのこと。リトアニアではかなり知られた存在でしょう。

以前取りあげたアルバムは1990年の録音。調べてみるとリトアニアがソ連から独立したのが1990年、ベルリンの壁崩壊が1989年ですからまだまだ東西に緊張のある時代の録音ということです。今日取り上げるアルバムはそれに遡る事8年の1982年の録音。1982年といえばリトアニアはソ連の一部ゆえ、ロシアのMelodiyaが録音しているのは自然な事ですね。

違いを把握しようと、一応このアルバムを聴く前に以前とりあげた1990年の演奏を聴いてみました。90年の演奏は非常に感銘を受けた名演奏ゆえ、違いが気になるところです。

Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
音響は時代なり。Melodiyaレーベルということで音質は心配しましたが、ごく普通の音響。90年の演奏はルーディンが指揮も担当しているということで、爽快なテンポによる流麗なオケだったのに対し、こちらは良く溜めを作った、ちょっとリズムに重さのある演奏。ルーディンのチェロも90年盤に対してやはり、しっかりとした溜めのある演奏。重鎮ソンデツキスの伴奏に合わせた演奏という事でしょう。録音上もソロがかなり強調されて大きく前に張り出した録音。ただ、流石にルーディンだけあってチェロの音色の存在感は素晴らしいものがあり、高音部の所謂鳴きも素晴らしい伸びを聴かせます。
アダージョはソンデツキスのコントロールするオーケストラとチェロの音色とフレージングがピタリと合ってえも言われぬ一体感。90年の見事な情感に勝るとも劣らない演奏。どちらかというと禁欲的な険しさをもつ響きに聴こえます。音色は不思議と純度が高く、演奏の方向性は異なりますが、深さは負けていない感じ。ルーディンのチェロの孤高の響きが素晴らしいですね。デュナーミクの幅は大きく素晴らしく彫り込みの深いフレージング。ルーディンのチェロの独壇場。これは協奏曲ではありますが、圧倒的なチェロの存在感に打たれるべきアルバムですね。アダージョはチェロが鳴きまくります。
90年盤が快速テンポで聴かせたフィナーレは、このアルバムでは落ち着いて刻むリズムが印象的。チェロの響きが明らかにアダージョと比べてデッドになっていますので、録音日が違うのでしょう。この辺はMelodeyaらしいところ。オケはことさら几帳面に刻むリズムを強調した演奏。ルーディンのチェロは所々オケを意図的に煽るようなアクセントで攻め込みます。後半になると千変万化する音色を駆使してハイドンの素晴らしいメロディーラインを表現します。チェロは松ヤニも火花も散る素晴らしい力感。最後の盛り上がりは素晴らしいものがあります。

Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
2番の方はいつものように癒しに満ちたオーケストラの伴奏から入ります。ここでもリズムを少し強調したソンデツキスのコントロールが効いています。オケはいたって普通の入り。ルーディンの入りは8分の力でリラックスした入りですが、すぐに音色に力がこもり、いつフルスロットルにはいるかそわそわするような緊張感があります。ここでもルーディンのチェロは良く鳴き、のびのびとしたフレーズの美しさを存分に表現。聴いているとソンデツキスのオーケストラコントロールに慣れてきて、独特のアクセントとフレージングも自然に聴こえてきます。おそらく他の演奏と聴き比べると個性的なオーケストラコントロールという範疇でしょうが、聴き慣れると自然に聴こえるから不思議なものです。長大な1楽章を非常にクッキリと描いていくところは流石の技と言わねばならないでしょう。それにしてもルーディンのチェロの音色の深みは素晴らしいですね。この楽章のカデンツァはまさに神懸かり。ハイドンのチェロ協奏曲にデモーニッシュなものが降りてきたよう。音響から魂が抜け出して自ら鳴ってるような素晴らしさ。カデンツァだけで相当な長さ。オケが帰ってきて良かった(笑)
アダージョは、やはりチェロの圧倒的な存在感が際立ちます。オケはもはや純粋に音楽を弾くのみ。チェロがイニシアチブを握り、オケはそれにただ乗っているよう。最後は恐ろしく深いチェロの音色が心に刺さります。
フィナーレもいつものように郷愁を感じるメロディから入りますが、やはりチェロが落ち着きながらも自在な弓使いでハイドンの美しいメロディーを音楽にしていきます。長大な1楽章に対して、力を少し抜きながらもチェロの存在感が際立つアダージョとフィナーレでした。

チェロもピアノも指揮もこなす名手アレクサンダー・ルーディンのチェロ協奏曲旧録音。後年の垢抜けた演奏とは異なり、かなりチェロを鳴かせる濃い演奏ですが、やはりルーディンは只者ではありませんでした。特に2番のカデンツァはチェロという楽器の魂の表現の極北を魅せるような深い感動を残しました。ちょっと古びた印象もあるソンデツキスの指揮ですが、ルーディンはそのスタイルの中で表現の限りを尽くすような演奏。90年盤も素晴らしかったのですがこちらも負けてはいませんね。評価は1番が[++++]、2番は[+++++]とします。
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ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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