作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

カルミナ四重奏団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉

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土曜日にHMV ONLINEから届いたばかりのアルバム。

CarminaSeven.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

カルミナ四重奏団(Carmina Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」。この曲には弦楽四重奏曲版の他にオラトリオ版、管弦楽版などがあり、特に後者2つには曲間に語りが入ったりする様々な演奏がありますが、この演奏は弦楽四重奏曲版なのに、曲間にグレゴリオ聖歌が挟まれるという変わった趣向の演奏。グレゴリオ聖歌の演奏はペーター・ロマン・バンワルト(Peter Roman Bannwart)指揮のルツェルン・スカラ・ロマーナ(Schola Romana Lucernensis)。収録は1999年12月13日~15日にスイスのベルン近郊のブルーメンスタインの教会、2000年2月18日にスイスのルツェルン近郊のアインジーデルンの修道院での2回に分けた録音。おそらく後者はグレゴリオ聖歌を収録したものと思います。レーベルはスイスのclaves RECORDS。

カルミナ四重奏団はスイスで1984年に結成されたクァルテット。1987年にイタリアのエミリアで開催されたパオロ・ポルチアーニ弦楽四重奏コンクールで1位なしの2位になったことから、国際的な舞台に立つようになったとのこと。シャンドル・ヴェーグ、アマデウス弦楽四重奏団とラサール弦楽四重奏団メンバー、ニコラウス・アーノンクールに師事し、以来世界中でコンサートを行っています。アルバムはDENONから多くリリースされているので日本でもおなじみのクァルテットでしょう。メンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:マティーアス・エンデルレ(Matthias Enderle)
第2ヴァイオリン:スザンヌ・フランク(Susanne Frank)
ヴィオラ:ウェンディ・チャンプニー(Wendy Champney)
チェロ:シュテファン・ゲルナー(Stephan Goerner)

オフィシャル・ウェブサイトがありましたのでリンクを張っておきましょう。

CARMINA quartet(英文)

カルミナ四重奏団にはハイドンのOp.76の演奏があり、手元にもありますが、ちょっと真価をはかり難い演奏。そこでもう一枚注文してみた次第。Op.76は1993年頃の演奏ゆえ、今日取り上げるアルバムの方が新しい録音。

Hob.III:50-56 / String Quartet Op.51 No.1-7 "Musica instrumentare sopra le 7 ultime parole del nostro Redentore in croce" 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 (1787)
今日は時間があまりないので、演奏レビューは概要程度で。序奏がはじまるや否や、カルミナ四重奏団のざらついた荒々しい鋭角的な演奏が耳に刺さります。このクァルテットの演奏の印象はこの独特の音色とかなり鋭角的な演奏を好きになれるかどうかがポイントでしょう。おそらくライヴではかなりの迫力をもつと思いますが、録音で聴くと弦楽器独特の艶や音色の美しさは聴かれず、むしろ意図的とも思われる不安定寸前のフレージングやかなりきつ目のアクセントに惑わされることになります。このアルバムの聴き所はズバリ曲間に置かれたグレゴリオ聖歌の面白さです。かなり枯れた音色の弦楽四重奏による導入曲が終わると、タイムスリップしたように豊かな残響のグレゴリオ聖歌が、しかもわりと長めに歌われ、この曲が宗教儀式で演奏される事になったことに気づかされます。そう、聴き所は、荒々しい弦楽四重奏と極上のグレゴリオ聖歌の見事な対比にあります。時代感覚や儀式としての正当性を判断できる立場も知識もありませんが、音楽的には不思議にマッチして、普通の弦楽四重奏というより現代音楽的な緊張感も醸し出しています。7つのソナタは何れも情緒に陥る事なく、不思議な音色の弦楽四重奏で独特の調子で演奏されますが、最も特徴的なのは最後に置かれた地震の曲。耳をつんざくような刺激音で構成された恐ろしく刺々しい演奏。バルトークの曲でもここまで踏み込んだ表現はしないだろうと思わせる、驚愕の演奏です。良い意味でも悪い意味でも非常に個性的な演奏と言えるでしょう。この曲に静謐な祈りと峻厳さを求める人には受け入れられない演奏かも知れません。

カルミナ四重奏団によるグレゴリオ聖歌を挿入したハイドンの名曲「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の超個性的な演奏。私はこのアルバムの企画意図は買います。この演奏が弦楽四重奏のみだったら、あまりいい評価はできないと思いますが、グレゴリオ聖歌の極上の演奏と組み合わせられた、尖ったこの曲の演奏の意図は理解できます。評価はグレゴリオ聖歌と、ここまで踏み込んだ表現意欲に敬意を表して[++++]としておきます。

気づいてみたらもう月末。明日は恒例の今月の一枚を選びます。今月は、、、というか今月もいいアルバムが目白押しでしたので悩みますね。お楽しみに。
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6 Comments

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ライムンド

No title

Daisyさん、こんばんは。弦楽四重奏版にグレゴリオ聖歌を挿入するというのは初耳です。しかも、その修道院はグレゴリオ聖歌について独自の歌い方・伝統を守るところなので、本格的な製作だろうと思います。カルミナ四重奏団のハイドンは皇帝とかの録音がDENONのクレスト1000にあって時々聴いていました。特別に凝ったことをする四重奏団とは思えなかったので、その組み合わせも意外です。また、グレゴリオ聖歌のどのような聖歌を歌ったのかも興味深いところです。「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」は何となく敬遠していた作品でしたが、くすぐられるCDです。

  • 2012/01/31 (Tue) 00:14
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Daisy

Re: No title

ライムンドさん、おはようございます。
グレゴリオ聖歌にについては詳しくないので、情報助かります。実際に聴く限り非常に本格的な歌唱です。これが弦楽四重奏曲に挟まれた演奏としてリリースするのが惜しいくらいです。曲名リストから順にグレゴリオ聖歌の曲名と演奏時間を書いておきます。全部で7曲が採用されこの曲の7つのソナタの前にそれぞれ置かれ、7つ目のソナタと終曲の地震の間には何も置かれていません。

In Monte Oliveti(2'41)
Velum Templi Scissum Est(2’41)
Tristis Est Anima Mea(3'17)
Tenebrae Factae Sunt(3'06)
Omnes Amici Mei(3’12)
Caligaverunt Oculi Mei(2’41)
Aestimatus Sum(2’35)

  • 2012/01/31 (Tue) 06:13
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通りがかりのハイドン

No title

DENONには、同じ作品76にクイケン四重奏団の録音がありますね。で、小生はどちらを採るかといえば・・・うーん、Ich habe Passe(今回はパスしときまっさ!)かな?この演奏はそれよりだいぶ後なので、興味が沸いてきました。ところで「パオロ・ポルチアーニ」とは大変懐かしいお名前。(イタリアSQの1vn.兼リーダーですね)私事ですが”S”に変わる直前に導入したiPhone4に、最近ベートーヴェンの後期SQを取り込んで良く聴いている今日この頃です。

  • 2012/01/31 (Tue) 22:41
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ライムンド

No title

Daisyさん、こんばんは。聖歌のタイトルをありがとうございます。好きなだけで詳しくはありませんが、手持ちのCDを参照すると聖木曜、金曜、土曜日のレスポンソリウムが使われています。ハイドンの各曲の間に、応唱として聖歌が入っているようで、なるほどとうならされるものです。

  • 2012/01/31 (Tue) 23:51
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Daisy

Re: No title

コメントありがとうございます。
イタリア四重奏団もいい演奏が多いですね。弦楽四重奏はたった4本の弦楽器なのに非常に鮮明に個性が出るのが面白いところ。特にイタリア四重奏団は伸び伸びとした流麗なフレージングが素晴らしいです。パオロ・ポルチアーニがイタリア四重奏団の第1ヴァイオリンだと気づかずに紹介していました。これでこの弦楽四重奏コンクールの位置づけがよくわかりました。(コメントデータでお名前空欄だったのでお名前なしの返信ご容赦を)

  • 2012/02/01 (Wed) 06:00
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Daisy

Re: No title

ライムンドさん、いつもコメントありがとうございます。
グレゴリオ聖歌集はこれまであんまりちゃんと聴いた事がありません。ただ、何か引き込まれる魅力をもっていますね。おそらく録音もいろいろあるでしょうし、コンサートで取りあげる機会があるかも知れませんので、一度聴いてみたいと思っています。歌ものでは以前タリス・スコラーズのコンサートに行ったことがあります。録音の精緻な印象とは異なり、実演ならでは感興もあり、また違った印象を持ちました。グレゴリオ聖歌などはコンサートホールよりも教会などの響きの良いところで聴く方がいいのでしょうね。

  • 2012/02/01 (Wed) 06:17
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