ハンス=マルティン・リンデ/カペラ・コロニエンシスのカンタータ、ヴァイオリン協奏曲

今日は先日取りあげたブルーノ・ヴァイルの四季のオケであるカペラ・コロニエンシスのアルバムを紹介。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

カペラ・コロニエンシスの演奏を集めたこのアルバム。ハンス=マルティン・リンデ(Hans-Martin Linde)指揮、マリリン・シュミーゲ(Marilyn Schmiege)のメゾソプラノで、ハイドンのカンタータ「ベレニーチェ、何をしようとしているのか?」(Hob.XXIVa:10)、「哀れな民、哀れな祖国」(Hob.XXIVa:7)、イングリッド・ザイフェルト(Ingrid Seifert)のヴァイオリンでハイドンのヴァイオリン協奏曲(Hob.Vlla:4)、そして指揮者がフェルディナント・ライトナー(Ferdinand Leitner)に変わって交響曲92番「オックスフォード」の4曲を収めたアルバム。収録は「ベレニーチェ、何をしようとしているのか?」が1988年1月19日、オックスフォードが1987年12月6日、ドイツ北部のビーレフェルトという街のルドルフ・エトカー・ホール、その他が1987年1月22日ドイツ南部フランス国境近くのフリーゼンハイムのステルネンブルク・ホールでのセッション録音。

今日はハンス=マルティン・リンデが指揮する3曲を取りあげようと思います。

ハンス=マルティン・リンデはリコーダー奏者として記憶していますが、指揮もするのですね。私の若い頃にはブリュッヘンやリンデがリコーダーを演奏したLPがいろいろリリースされていましたので懐かしい名前。
調べたところ、ドイツ、ドルトムント近郊のヴェルネに1930年に生まれた指揮者、リコーダー、フルート奏者、そしてバリトン歌手でもあるとのこと。リコーダー及びフルートの代表的な教則本の著者でもあります。フライブルク音楽院でフルート、作曲、合唱指揮などを学び、故郷のヴェルネでフルート教師と合唱指揮者として働き始め、この頃からリコーダーとフラウト・トラヴェルソの演奏に興味を持つようになりました。1955年以降ケルンの西ドイツ放送と長期間の仕事はじめ、室内楽の録音や、バーゼルのカペラ・バジリエンシスのフルート奏者、のちに指揮者も務めました。バーゼル音楽アカデミーでの教職や、フルート奏者として以上に近年は指揮者の仕事が増えているとの事。このアルバムの指揮ぶりは如何なものでしょう。

カンタータを歌うマリリン・シュミーゲは、1948年生まれのアメリカ人メゾ・ソプラノ歌手で、1978年にウッパータール歌劇場で「コシ・ファン・トゥッテ」のドラベッラ役でデビュー以来ヨーロッパの歌劇場で主に活躍する人。

ヴァイオリンのイングリッド・ザイフェルトはザルツブルク生まれのオーストリア人ヴァイオリニスト。ザルツブルク・モーツァルテウムでヴァイオリンを学び、バロックバイオリンに目覚めてウィーンで勉強を続け、アーノンクールのウィーン・コンツェントゥス・ムジクス演奏を機にオランダに渡りバロック・ヴァイオリンの勉強を続けました。1979年までの数年間ムジカ・アンティクァ・ケルンでも演奏を経験。1978年にロンドン・バロックの共同創設者となり、現在はロンドンバロックのメンバーとして活躍しているようです。

肝心のカペラ・コロニエンシスの情報はこのアルバムのHMV ONLINEのリンク先に詳しく記載されています。

カペラ・コロニエンシスは、1954年、北西ドイツ放送によって創設されたオーケストラ。当時のオーケストラ・メンバーは、主にケルン音楽大学の教授たちで、同時代にドイツ・ハルモニア・ムンディの録音のために設立されたコレギウム・アウレウムのメンバーとほぼ同じとのこと。これは知りませんでした。指揮者は以前触れたとおりフェルディナント・ライトナー、ウィリアム・クリスティー、ジョン・エリオット・ガーディナー、ジョシュア・リフキン、そして1997年からは現監督のブルーノ・ヴァイルになっています。

前置きが長くなりましたのでレビューに。

Hob.XXIVa:10 / Scena di Berenice "Berenice, che fai" ベレニーチェのシェーナ「ベレニーチェ、何をしようとしているのか?」 [D-f] (1795)
ハイドンがロンドンでの演奏会のために作曲した曲。4曲構成でオペラの一場面のような曲です。歌詞はメタスタジオのオペラ「アンティノーノ」の台本から取られています。
古楽器のリッラクスしたオケの序奏からはじまります。マリリン・シュミーゲのメゾ・ソプラノは起伏はほどほどながら、ふくよかな低音域の響きを伴った律儀な歌唱。語るような歌い方。録音は1980年代後半としては鮮明な方でしょう。古楽器オケの音色を魅力的に収録しています。少し遠めに定位するオケとメゾ・ソプラノ。古楽器オケの繊細な響きをゆったりと楽しめる好きなタイプの演奏。適度な起伏と適度なアクセントを自然にまとめて、劇に変化をもたらすように適度な引き締め具合。ハイドンの穏やかかな曲をうまくコントロールして等身大の演奏。メゾ・ソプラノのソロの劇的な歌唱も適度に落ち着いて、劇に集中できそうな演奏と言えばいいでしょうか。音楽にのって場面が移り変わるのを落ち着いて楽しめます。声と古楽器オケの音響の快感を味わえる演奏。

Hob.XXIVa:7 / Cantata "Miseri noi, misera Patria" 「哀れな民、哀れな祖国」 [E flat] (c.1790)
録音日は異なるもののほぼ同じ音響。2曲構成で前曲同様オペラの一場面のようなところも同様。カペラ・コロニエンシスの古楽器オケを非常に素直にコントロール。ただしまとめ方が巧いので単調さはなく、適度に劇的。ハイドンの得意とする癒しに満ちたシンプルなメロディーを素直に演奏しただけのような演奏ですが、ハイドンの真髄に迫っていることは確か。曲をたっぷり楽しめます。

Hob.VIIa:4 / Violin Concerto [G] (c.1765/70)
このアルバムを取りあげようと思うに至った名演奏。この曲も何気ない演奏に聴こえますが、協奏曲の理想的な演奏の一つとしてお薦めすべき演奏だと思います。このアルバムの特徴である非常にリラックスした入り。冒頭から推進力十分の充実したカペラ・コロニエンシスの響き。オーケストラの各楽器の音の数は多いと言うか、繊細な響きを伴うというか、非常に色彩感に富んだ演奏。イングリッド・ザイフェルトのソロヴァイオリンは力感は抑えながらもオケに寄り添い、フレージングのオケとの一体感は恐ろしいほど。あえて力感を抑えて、メロディーをオケと完全に一致させ、非常に繊細なデュナーミクのコントロールでほんのすこし浮き出るように演奏しているよう。すべてを悟りきった仙人のような演奏といえばいいでしょうか。よほど鋭敏な聴覚をもっている事と想像されます。これだけオケとの距離感をきっちり守って弾く人は他にいないでしょう。テクニック以上に素晴らしい音楽的才能がなければこのような演奏は出来ないでしょうね。カデンツァも気負いは一切なく澄み切った心情を感じます。リンデのコントロールするオーケストラも同様。音楽のわかる人には非常にインパクトのある演奏でしょう。
アダージョも普通の演奏ながら、冒頭から癒しエネルギーが炸裂。ザイフェルトは淡々と自身の音楽を置いていくように弾き進めます。まさに天上の音楽。カデンツァの気負いのなさは前楽章以上。古楽器ながら現代楽器以上の表現に加えて、音色の繊細さが加わって、非常に濃密な音楽。
終楽章はヴァイオリンの輝きが増して、オケを一歩リードするようになります。オケも堅実に鮮度の高いサポート。イングリッド・ザイフェルトは気負いもせず、たるみもせず、自己主張に走る事もなく、一番凄いのはそれでいて凡庸に陥る事がなくきりりと引き締まり続けること。素晴らしいヴァイオリンソロですね。まるでハイドンの曲を弾く事を楽しむ事だけに集中したような見事な演奏。

ハンス=マルティン・リンデ指揮のカペラ・コロニエンシスによる1980年代後半の演奏。リンデの指揮は非常に自然で鮮度もある玄人好みの音楽を紡ぎ出しています。カンタータ2曲の伴奏も見事ながら、やはりこのアルバムの聴き所はヴァイオリン協奏曲。古楽器オケの繊細な音色と適度なダイナミックさ、規律、自然さが同居した演奏。カンタータ2曲のメゾ・ソプラノのシュミーゲはもう一歩踏み込んだ表現の余地がありそう。カンタータは[++++]、そしてザイフェルトの秀逸なヴァイオリン独奏とリンデの冷静なサポートが抜群の出来のヴァイオリン協奏曲は[+++++]とします。

東京は明日はこの冬一番の寒さのようですので、今日は暖かくして寝ます。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : カンタータ 声楽曲 古楽器 ヴァイオリン協奏曲

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ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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