オイゲン・ヨッフム/バイエルン放送響のチェチーリア・ミサ(ハイドン)

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オイゲン・ヨッフム(Eugen Jochum)指揮のバイエルン放送交響楽団と合唱団の演奏でハイドンのチェチーリア・ミサなどを収めたアルバム。他にクーベリックの戦時のミサなどをセットした2枚組の廉価盤。今日はヨッフムのチェチーリア・ミサを取りあげます。チェチーリア・ミサの収録は1958年10月、ミュンヘンのヘラクレス・ザールでのセッション録音。レーベルは天下のDeutsche Grammophonです。歌手は以下のとおり。
ソプラノ:マリア・シュターダー(Maria Stader)
コントラルト:マルガ・ヘフゲン(Marga Höffgen)
テノール:リヒャルト・ホルム(Richard Holm)
バス:ヨゼフ・グリンドル(Josef Greindl)
チェチーリア・ミサは1766年作曲ということでシュトルム・ウント・ドラング期の作品。作品の解説は下のインマゼール盤の解説をご参照ください。
2011/04/03 : ハイドン–声楽曲 : インマゼールの聖チェチーリアミサ
2010/12/23 : ハイドン–声楽曲 : 【年末企画】サイモン・プレストンのチェチーリアミサ
2010/09/20 : ハイドン–声楽曲 : ミシェル・コルボのチェチーリアミサ
あまり知らないアルバムでしたが、調べたところ現役盤のようですね。ヨッフムは紹介の必要はないでしょう。ヨッフムの1958年のチェチーリア・ミサと聞いただけで、ちょっと期待が高まります。ヨッフム全盛期の覇気が漲る演奏が脳裏に浮かびます。はたしてその期待に応える演奏でしょうか。
Hob.XXII:5 / Missa Cellenisis in honorem Beatissimate Virginis Mariae "Caecilienmesse" 「チェチーリアミサ」
キリエ
1958年の録音ということで、年代なりの音響なんでしょう。冒頭のコーラスの響きは若干古びた感じを与えるものの、ヴァイオリンのキレの良いメロディーが進むにつれ、徐々にダイナミックさが顔をのぞかせます。穏やかな川の流れのように一貫したテンポ感に支配されているような演奏。まずはリヒャルト・ホルムの安定感抜群かつ心地よい響きのテノールが最初の聴き所でしょう。落ち着いたコントロールのなかでも徐々に色彩の変化を楽しめるような大人の演奏。起伏は程々で、ヨッフムの演奏に多いインテンポでスピーディーなものではなく、逆に落ちつき、ゆったりしたテンポでじっくり慈しむようなコントロール。
グローリア
グローリアに入ってヨッフムらしいあっさりとしながらもインテンポで推進する音楽になってきました。ソプラノのマリア・シュテューダーはいい意味で声に軽さがあり、爽やかな色気を感じさせる声。トラック6のグラティアスは荘厳なコーラスが圧巻。重量感ではなくクリアな響きが聴かせる爽快な荘厳さといった感じ。これはヨッフムならではの音楽でしょう。各声部が複雑に絡み合い、弦楽セクションとコーラス、オルガンの重なりが独立しつつもよく溶け合い絶妙な音楽。コントラルトのマリア・ヘフゲンは素晴らしい声量。図太い声の存在感は圧巻。バスのヨゼフ・グリンドルは柔らかく綺麗な響きの乗った角のとれた声。4人がかわるがわるフレーズを引き継いで安定したソロを楽しめます。トラック8のクイ・トリスで再び大河のごときコーラスが出現。バイエルン放送合唱団の素晴らしいコーラスはこの演奏のポイントでしょう。続くクオニアムではシュテューダーがリズミカルで起伏十分なオケの伴奏にのって圧倒的な歌唱。オケもヴァイオリンを中心に落ち着きながらもキレた演奏でシュテューダーを支えます。そして、グローリアの終曲は圧倒的なエネルギーの塊のような演奏。息を飲むとのこの事でしょう、素晴らしいオケとコーラスの響きの渦。
クレド
もはや、オケもコーラスもソロも素晴らしい状態故、グローリアの後半から満ちてきたエネルギーが放出されつづけてクレドも完璧な音楽の流れ。中間部はリヒャルト・ホルムのソロですが、ここでも巧いですね。憂いにみちた弦楽器の伴奏にのって切々と歌うメロディーの美しさは筆舌に尽くし難いもの。テノールにこれだけ痺れるのは久しぶりですね。終盤はホルムとオケとコーラスの響宴。言うことなし。
サンクトゥス
2分弱と短い曲。導入は極端に音量を抑えてこの曲の宝石のような美しさを表現。
ベネディクトゥス
この曲がシュトルム・ウント・ドラング期のものと思い出させるほの暗さと明るさと起伏を併せ持つ名曲。ヨッフムのコントロールはもはや硬軟織り交ぜ、表現の限りを尽くして曲の美しさを浮かび上がらせている感じ。この曲の美しさ、深さ、陰りをこれだけ自然に表した演奏はないでしょう。穏やかなのに険しく、静かなのに激しい音楽。超絶的な美しさ。
アニュス・デイ
終曲は74分もあるこの曲の興奮を鎮めるような曲。我にかえったように冷静なコントロールで淡々とした演奏。グリンドルの孤高の表情のソロが印象的。最後は遠くから忍び寄るコーラスの寄せては返す波のような音楽。
名曲チェチーリア・ミサのオイゲン・ヨッフムの1958年のセッション録音というだけで、期待が膨らむ演奏でしたが、期待以上どころかこの曲の決定盤ともいえる素晴らしい演奏でした。やはり全盛期のヨッフムの演奏は凄いですね。交響曲なども含めてヨッフムのハイドンの演奏では一押しの名演奏と言っていいでしょう。評価はもちろん[+++++]とします。このアルバムを今まで聴いていなかったのは痛恨事です。
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