タカーチ四重奏団のOp.71(ハイドン)

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タカーチ四重奏団(Takács Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.71のNo.1、No.2、No.3の3曲を収めたアルバム。収録はNo.1とNo.2は2010年1月30日から2月2日、No.3は2010年11月15日から17日、イギリス西部のモンマス(Monmouth)という街にあるWyastone Estateのコンサートホールでのセッション録音。レーベルは英古楽レーベルの代表格、hyperion。
タカーチ四重奏団は1975年にハンガリーのブダペストの音楽アカデミーに在学していたの4人の学生によって結成された弦楽四重奏団。第1ヴァイオリンはガボール・タカーチ=ナジという人だったのでタカーチ四重奏団という名前になったんでしょう。1977年にフランスのエヴィアンで開かれた国際弦楽四重奏コンクールで1等および批評家賞を受賞したことで注目される存在になりました。1993年にアメリカに移ることを決断し、コロラド大学ボルダー校に所属する弦楽四重奏団となり、この時に第1ヴァイオリンが現在のデゥシンベルに交代しました。また翌年の94年、創立メンバーのガボール・オーマイががんになり退団。95年に亡くなりました。彼に捧げられたバルトークの弦楽四重奏曲の全曲録音、その後絶賛されたベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集、ボロディン、スメタナなど矢継ぎ早に録音し、現代の代表的な弦楽四重奏団とみなされるようになりました。現在はアメリカ、コロラド州ボルダーを拠点としているそうです。現在のメンバーは下記のとおり。
第1ヴァイオリン:エドワード・ドゥシンベル(Edward Dusinberre)
第2ヴァイオリン:カーロイ・シュランツ(Károy Schranz)
ヴィオラ:ジェラルディン・ウォルサー(Geraldine Walther)
チェロ:アンドラーシュ・フェエール(András Fejír)
オフィシャルサイトもありましたので、リンクを張っておきましょう。
takácsquartet.com(英文)
Hob.III:69 / String Quartet Op.71 No.1 [B] (1793)
古楽器のように感じる弦楽器の音色ですが、古楽器ではないようです。キリッとエッジをたてた正統派の演奏。音楽の組み立てはそれぞれの奏者がテンポとアクセントをそろえながらも、それぞれ独自のフレージングで攻める感じ。わずかに騒がしい印象があるのは全員がデュナーミクまであわせようとせず、独自性も聴かせようとしているからのように思えます。テンポ感は非常によく、キレもいい演奏。
録音はオンマイクの直接音重視のダイレクトな感触。残響が少なめな分、アダージョも潤いよりは曲の構造に耳が行く演奏。その分部屋にクァルテットがいるようなリアルな定位感。音色をコントロールしているような感じではなく強弱で音楽を作っている感じ。
メヌエットは堂々とした開始部と軽やかな中間部の対比の変化が上手い具合について、見通しの良い演奏。
フィナーレはダイレクトな音響が効果的。畳み掛けるようにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが交互に掛け合うスリリングな様子が良く伝わる演奏。リアルなだけに迫力は十分。欲を言えばもう少し色彩感のようなものと、流麗さがあってもいいかなと思わせます。ディティールではなく骨格で聴かせるような演奏と言えばいいでしょうか。最後の一音は思い切って力を抜いたもの。
Hob.III:70 / String Quartet Op.71 No.2 [D] (1793)
曲の印象からか、冒頭から前曲よりも流麗さを感じます。出だしから音形の面白さが際立つ曲。前曲よりもアンサンブルのそろいがいいように感じます。録音のダイレクト感は変わりなく、リアリティも前曲並み。あまり細部を意識する事もなく、全体的な骨格を描いていく感じも変わりません。
アダージョも少し叙情的なところを見せます。ヴァイオリンの高音のハリのある音色は流石の出来です。ここに来て自在な演奏を楽しむように弾いているように聴こえます。また途中のチェロの深い音色が非常に印象的。
メヌエットは繰り返される印象的なメロディー。生気を感じる導入部とちょっと変わった中間部。2分少々の短い曲。
フィナーレは途中から驚くような鮮明さで楔を打つようなメロディーが非常に効果的。後半は鮮明さを増してこれまでで一番踏み込んだ演奏。このクァルテットの踏み込みどころがつかめた感じ。
Hob.III:71 / String Quartet Op.71 No.3 [E flat] (1793)
これまでで一番踏み込んだノリのいい演奏。全員のフォーカスが合ってきて、4人のアンサンブルのスリリングな展開が魅力的な演奏。テンポのわずかに速めで、まさにすりリングが掛け合いの妙。この曲のみ録音日が異なるので、演奏のテンションが異なるのも頷けるところ。
2楽章は前曲とは異なり情感も乗って音楽が活き活きとしています。ヴァイオリンのドゥシンベルがリードしたと思ったら、チェロのウォルサーもかなり突っ込んできて、クァルテットの一番面白い瞬間を味わえます。楽器の余韻の消え入る間まで巧く使って非常に濃密な音楽。
メヌエットも生気を保って、特にチェロの大きな波のような表現が秀逸。おおらかさと軽やかさを上手く織り交ぜた秀逸な音楽。テンポもかなり自在に動かしてここでも濃い音楽。
フィナーレは変幻自在な草書の達筆のような素晴らしいもの。テクニックを超えて自在な音楽を4人が楽しむがごとき演奏です。
タカーチ四重奏団は1987年録音のOp.76のアルバムも以前に聴いているのですが、銭湯で収録したような残響過多の録音が災いしてあまり楽しめない演奏でした。それからだいぶ経って、レーベルも変わった後の新録音。前2曲は骨格重視の演奏で、これがタカーチかと思いかけたところ、No.3に至ってその真髄が見えました。特にチェロの踏み込んだ表現が印象的な独特の演奏。これはなかなかです。評価はNo.1、No.2が[++++]、No.3は[+++++]としました。実は同時に注文したOp.74が既に入手困難という扱いで、まだ手に入れてませんので、他で探してみるつもりです。
タカーチのベートーヴェンの評判の良さは聞いていますが、このハイドンを聴くかぎり、ベートーヴェンが良さそうなのは頷けるところですね。あまり得意ではありませんが、そのうちベートーヴェンの全集も聴いてみたいと思います。
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