オリヴィエ・ヴェルネ/アンサンブル未開人によるオルガン協奏曲集

今日もマイナー盤。

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オリヴィエ・ヴェルネ(Olivier Vernet)のオルガン、ジェレミー・ローレル(Jérémie Rhorer)指揮のアンサンブル未開人(Ensemble ”Les Sauvages”)の演奏でハイドンのオルガン協奏曲(Hob.XVIII:1)、ヴァイオリンとオルガンのための協奏曲(Hob.XVIII:6)、オルガン協奏曲(Hob.XVIII:2)の3曲を収めたアルバム。収録は2001年5月24日~27日フランス西部のナントの東にあるサン=ルー=シュル=トゥエ教会でのセッション録音。レーベルはフランスのLigia Digital。

なんとなく最近、協奏曲を多く取りあげています。このアルバムも最近ディスクユニオンで手に入れたもの。ジャケットからは怪しい妖気が漂ってますが、この上にオレンジ色のモダンなデザインのカバーがかかっており、妖気を感じて買ったものではなく、買って開けたら妖気が漂っていたというのが正確なところ。妖気の元は不敵な笑みとケルト文様のような不思議なフォント。

オルガンを弾くオリヴェエ・ヴェルネは1964年、フランス中部リヨンの西およそ100kmの街、ヴィシー(Vichy)生まれのオルガニスト。私と同世代です。若い頃からオルガンに情熱を傾け、パリ近郊のサン=モール=デ=フォッセ市立音楽院で学び、いくつものオルガンコンクールで優勝したとのこと。同じくパリ近郊のリュエイユ=マルメゾン市立音楽院でマリー=クレール・アラン、パリ市立音楽院でミシェル・シャピュイらといったフランスの大家のもとで学び、その後も数々の国際コンクールで1位を獲得したオルガンの名手。現在はオルガンのソリストとして国際的に活躍し、このアルバムをリリースしているLigia Digitalからは多数のアルバムがリリースされています。バッハやリストのオルガン音楽全集などを録音しているなど、膨大なレパートリーを誇っています。

指揮のジェレミー・ローレルはハープシコード奏者でもあります。パリ国立音楽院で学び、ケネス・ギルバート、クリストフ・ルセなどに師事。エミール・チャカロフの薦めで指揮を学ぶようになり、Les Musiciens de la Preeという室内管弦楽団を設立し、現代音楽を含むレパートリーを演奏した。その後マルク・ミンコフスキのもとフランダース歌劇場、ラジオフランス・フィルハーモニー管弦楽団、マーラー室内管弦楽団などでアシスタント指揮者を務め、またクリストファー・ホグウッドやブルーノ・ヴァイルの助手も務めています。このアルバム録音当時は ルーヴル宮音楽隊やパリ室内フィルハーモニーの客演指揮者の地位。

Hob.XVIII:1 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [C] (1756)
鮮烈、流麗なオケの伴奏、音色からすると古楽器ですね。オルガンも伴奏にあわせてソロの入りの前にも装飾を加えています。序奏からえも言われぬ楽興が漂います。オルガンはサン=ルー=シュル=トゥエ教会のベルナール・オーベルティン製のオルガン。ハイドンのオルガン協奏曲としては分厚く感じるデラックスな音色。豊富な装飾音によりオルガンの色彩感が濃く感じられます。オケは鮮度の高い演奏。やはりフランスらしさを感じる華やかさがあります。
2楽章のラルゴは弦楽器が引きずるような印象を与える入り。オルガンは音量を抑えてひとり自在に遊び回るような演奏。やはりオルガンの腕は素晴らしいですね。オルガンが音階を刻んで上下を繰り返すうちににトランス状態に入りそうな微妙な高揚感があります。かなり低い音まででていますので、部屋に重低音が流れます。カデンツァは音楽的に良く練れたもので曲に良く合っています。
フィナーレはやはりオルガンの色彩感が聴き所でしょう。ハイドンの曲の魅力というよりヴェルネの華やかなオルガンの演奏がポイントになる演奏。オケの方はことさら自己主張する事なくキビキビとした響きで上手くサポートできています。オルガンとオケの音色と華やかさが良くマッチしていると言っていいでしょう。曲の大きな構造を表現するというような演奏ではなく華やかな音色によるキビキビとした壮麗、自然な演奏という感じ。

Hob.XVIII:6 / Concerto per violino, cembalo e orchestra [F] (1766)
続いてヴァイオリンとオルガンのため協奏曲。ヴァイオリンの独奏はステファニー=マリー・デギャン(Stéphanie-Marie Degand)という人。サイトを見ると若い美人ヴァイオリニスト。演奏は基本的に前曲と同様、鮮烈なオケの伴奏とオルガンの織りなす華やかな音楽が基本で、ヴァイオリンソロもその流れにぴたっとはまったもの。ヴァイオリンは上手いですね。ヴァイオリンは全体の音楽の流れに合わせてかなりデリケートにデュナーミクをコントロールしてソロの音色を音楽に乗せている感じ。耳の良い人なんでしょうね。ヴェルネのオルガンは一貫してテンポ良く華やかなものです。なかなかいいですね。
2楽章のラルゴは、こちらも前曲同様抑えたオルガンによる自在なメロディーがえも言われぬ陶酔感をもたらしますが、やはりデギャンが素晴らしいヴァイオリンソロで華を添えます。この音色の変化と冷静客観的に音を乗せていくところは並の奏者ではありませんね。
フィナーレはオケとオルガンとヴァイオリンが素晴らしい精度のアンサンブルを繰り広げます。オルガンの音階のキレも見事、ヴァイオリンの自在な弓さばきも同様、そしてオケの起伏に富んだサポートも素晴らしいもので、力みはなく自然な音楽が進んでいきます。

Hob.XVIII:2 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [D] (before 1767)
このコンビの演奏は安定感抜群。この曲の入りも期待通りのもの。ただし、この曲がもっとも色彩感が鮮やかでしょう。リズム感もよく、オケもヴェルネも乗っている感じです。前2曲よりもオルガンのソロがクッキリ浮かび上がり、推進力もアップしています。1楽章は一体感溢れる素晴らしい感興が感じられます。
圧巻は2楽章。もとももと好きな楽章ですが、この演奏は素晴らしいです。オルガンがこのアルバムのなかでは一番踏み込んだ演奏。フレージングにもかなりメリハリのあるアクセントが入って、絶妙な間合いを表現。オルガン協奏曲としてソロのオルガンの圧倒的な存在感が際立ちます。途中に聴かれる低い音域に沈み込むメロディーのあたりは鳥肌が立たんばかりの静寂感。
フィナーレはオケがキレまくってます。出だしから殺気を感じるようなただならぬ緊張感。それを受け継いでヴェルネのオルガンも素晴らしいノリ。指の動きがこちらもキレまくってます。そしてオケは鋭利な刃物のような素晴らしいアクセントのキレ。ここへ来てハイドンのすばらしい音楽の真髄にせまる音楽的興奮。この楽章も圧倒的な出来。いや素晴らしい。

ジャケットのただならぬ妖気はハッタリではありませんでした。ハイドンのオルガン協奏曲の新たな名盤です。やはりレパートリーが広い人らしく、ハイドンへの特別な没入感はなく、最初はフランス風の華やかな演奏という風に受け取りましたが、3曲目に至って羊の皮をぬいだオオカミに変身。音楽的に素晴らしいものでした。評価は1曲目が[++++]、2曲目はヴァイオリンのデギャンの素晴らしいソロ、3曲目はヴェルネもオケもキレまくっていることを鑑み[+++++]とします。世の中にはまだまだ素晴らしい演奏があるものですね。

最後に2曲目のヴァイオリンソロが良かったステファニー=マリー・デギャンのサイトへのリンクを張っておきましょう。

Stéphanie-Marie Degand(仏文)
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tag : オルガン協奏曲 ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6 古楽器 ハイドン入門者向け

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ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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