作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

カリヒシュタイン・ラレード・ロビンソン・トリオによるピアノ三重奏曲(ハイドン)

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昨日ディスクユニオンで手に入れたアルバム。

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カリヒシュタイン・ラレード・ロビンソン・トリオ(Kalichstein-Laredo-Robinson Trio)によるハイドンのピアノ三重奏曲4曲(収録順にHob.XV:12、XV:27、XV:28、XV:25)を収めたアルバム。収録は1991年9月、アメリカニューヨーク州の内陸の街トロイにあるトロイ貯蓄銀行音楽ホールでのセッション録音。レーベルは優秀な録音が多いマイナーレーベルDORIAN RECORDINGS。

今ひとつ垢抜けないジャケットですが、こうゆうジャケットには名演の匂いもします(笑)。昨夜手に入れた6枚のアルバムを整理しつつまずこのアルバムからCDプレイヤーにかけると、じわりと伝わる素晴らしい音楽。予感的中です。

カリヒシュタイン・ラレード・ロビンソン・トリオのメンバーは以下のとおり。

ピアノ:ヨゼフ・カリヒシュタイン(Joseph Kalichstein)
ヴァイオリン:ハイメ・ラレード(Jaime Laredo)
チェロ:シャロン・ロビンソン(Sharon Robinson)

ヨゼフ・カリヒシュタインは1946年イスラエル生まれのアメリカ人ピアニスト。1962年にアメリカに移住しジュリアード音楽院で学び、バーンスタインとニューヨークフィルの伴奏でベートーヴェンのピアノ協奏曲4番を共演したのを皮切りに世界中で活躍するようになりました。室内楽分野でも活動し、1981年にこのアルバムのメンバーとカリヒシュタイン・ラレード・ロビンソン・トリオを設立ししています。現在はジュリアード音楽院で教える立場でもあるようですね。

ハイメ・ラレードは1941年ボリビア出身のヴァイオリニスト。英語読みだとジェイミーですがボリビア生まれとの事でスペイン語読みでハイメとのこと。フィラデルフィアのカーティス音楽院で学び、1960年にカーネギーホールでリサイタルを開く。このリサイタルが評判となり、その後有名オーケストラとの共演を重ねる。ヴィオラもこなし、室内楽ではアイザック・スターン、ヨー・ヨー・マ、エマニュエル・アックスなどと組んでピアノ四重奏曲の録音を残し、また、グレン・グールドとの録音もあります。1999年よりヴァーモント交響楽団の指揮者を務めており、また、現在インディアナ大学音楽学部の教授を務めています。

シャロン・ロビンソンは1949年テキサス州ヒューストン生まれのアメリカのチェリスト。両親ともにヒューストン交響楽団のメンバーと言う音楽一家の出身。ノース・カロライナ芸術学校、ロスの南カリフォルニア大学、ボルチモアのピーボディ大学などで学び、1974年にこのアルバムのメンバーでニューヨークデビュー、1977年にはソロデビューを果たし、以後はソロ及びこのトリオで活躍しています。どうやらヴァイオリンのハイメ・ラレードと夫婦のようですね。

Hob.XV:12 / Piano Trio (Nr.25/op.57-2) [e] (1788)
いきなり部屋にピアノトリオの鮮明な音像が出現します。まずは録音の素晴らしさに耳を奪われます。引き締まった各楽器の音像。ピアノの音色の美しさも素晴らしいものがあります。カリヒシュタインのピアノは極めて冷静沈着ながら音色の美しさは素晴らしいものがあります。カリヒシュタインがリードする音楽は火花散るようなホットなものではないんですが、非常にシャープなリズム感と透徹したピアノの音色を生かしたもの。チェロのロビンソンは女流ながら素晴らしく図太い音色で低音部を支えます。ラレードのヴァイオリンはすこし軽めのタッチですが、リズム感の良さは確かなもの。3人の音色と音楽性が一体化した素晴らしい音楽。
2楽章のアンダンテも透徹したピアニズムが音楽の基底をつくっていいます。寄り添うように演奏するヴァイオリンとチェロ。抑えた表現が絶妙の緊張感を醸し出しています。ピアノ三重奏曲を聴く真髄にいきなり触れる名演奏。音量を落としても保たれるシャープなテンポ感と豊かな音楽。何と素晴らしいアンダンテでしょう。
フィナーレはピアノもヴァイオリンも素晴らしいキレ。軽妙洒脱なメロディを余裕たっぷりに弾き進めます。速いパッセージの正確な演奏は素晴らしいものがあります。1曲目から完璧な出来。ここのところ聴いたピアノ三重奏曲の中ではピカイチの出来です。

Hob.XV:27 / Piano Trio (Nr.43/op.75-1) [C] (1796)
2曲目は有名な曲。聴き慣れたメロディですが、清涼感がまるで異なる素晴らしい音楽。やはり抜群の安定感と音楽性をもったカリヒシュタインのピアノがポイント。非常に冷静ながら、少しも冷たい感じがせず、音楽の豊かさに心を打たれる感じ。音楽の表情は前曲と変わりなく揺るぎない安定感です。適度に要素が分解されながらも、聴き進めると非常に一体感のある演奏。
2楽章のアンダンテは前曲同様、美しすぎるメロディーをカリヒシュタインのピアノを中心に演奏していきます。強音の抜けのよい録音もポイントでしょう。まさに自宅にピアノトリオがやってきたようなリアリティですね。カリヒシュタインの奏でるピアノの美しさにノックアウトされっぱなしですね。
そしてこちらも聴き慣れたフィナーレを一瞬のそよ風のような爽快感を伴った演奏です。最後の吹き上がる迫力を聴かせるところは素晴らしい迫力で終了。この曲もケチを付けるところすらありません。

Hob.XV:28 / Piano Trio (Nr.44/op.75-2) [E] (1796)
比較的大人しい曲想ですが、演奏者のテンションは変わらず、素晴らしい緊張感を保っています。落ち着いているのにワクワクするような素晴らしい演奏。このアンサンブルのメンバーの音楽性は素晴らしいですね。曲調がシンプルなのであえて素朴さに焦点を合わせてこれまでの曲よりも一音一音をゆったり鳴らしているように聴こえます。テンポもこれまでの曲が中庸だったのに対し、この曲は少し遅めの設定。ピアノがキラ星のごとき美しさ。
2楽章のアレグレットに入ると、ただでさえ美しかったピアノの音色がさらに磨かれて、その美しさは例えようもないほど。ヴァイオリンとチェロが寄り添うように入り、素晴らしい迫力で険しい盛り上がりを演出。
フィナーレはそよ風のような優しい入り。この曲は最後までゆったりした気分を保ちます。非常に素朴なメロディーが繰り返されますが、なぜか非常に慈しみ深い音楽になります。ハイドンの晩年の技のなせるところでしょう。最後はきっちりアクセントが決まって曲を閉じます。

Hob.XV:25 / Piano Trio (Nr.39/op.73-2) [G] (1795)
最後は有名なジプシー・ロンド。1楽章はあえて素朴にゆったりとした展開。普通のテンポで抑えた表現ながらメロディーの粒立ちが素晴らしく鮮明で、曲の美しさにハッとします。この曲ではラレードの繊細なヴァイオリンの美しさが素晴らしい効果をあげています。ピアノは相変わらずの素晴らしい構成感。ただ奏でているだけなのに極上の音楽がそこにあります。まさに至福のひと時。ハイドンのピアノトリオがこれほどきらめきに満ちた音楽であったかと今更ながら気づかされました。後半の転調後のヴァイオリンは鳥肌がたつような繊細さ。
2楽章のポコ・アダージョ。もはや言葉での説明は不要でしょう。ただただ美しいメロディに酔いしれるばかり。
そしてジプシー・ロンド。個性的でも技巧を凝らしてもいないんですが、殺気や狂気を感じるような素晴らしい切れ味。恐ろしい音楽性です。むしろ抑え気味の演奏でありながらこの迸るエネルギー。いやいや素晴らしい演奏です。

ふと出会ったこのアルバム。これまでピアノ三重奏曲はいろいろ聴きましたが、今まで聴いた演奏の中ではダントツの出来です。メンバー全員が素晴らしいテクニックと音楽性をもっており、しかもそのテクニックに裏付けられた自然な演奏。ごく自然な演奏なのに各パートが活き活きとした音楽を奏で、結果的に素晴らしく一体感のある演奏となっています。このアルバムに収められた4曲ともに素晴らしい出来。普通は多少のムラがあるのですが、逆に曲ごとのキャラクターをしっかり把握して少しずつ演奏スタイルを変えています。評価はもちろん全曲[+++++]です。
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