アウリン四重奏団のOp.74

HMV ONLINE
アウリン四重奏団(Auryn Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.74のNo.1、No.2、No.3の3曲を収めたアルバム。収録は2008年、ドイツ、ケルンの東20kmほどにある街ホンラートにあるホンラート教会でのセッション録音。レーベルはドイツのTACET。
アウリン四重奏団は1982年ケルンで結成されたクァルテットで、活動当初からメンバーは変わりなく30年目になるとのこと。当初はアマデウス四重奏団、グァルネリ四重奏団などに師事し、またヨーロッパ・ユース・オーケストラのメンバーとしてクラウディオ・アバドの指導を受け、音楽もその影響を受けているとの事。レパートリーは古典から現代音楽まで幅広いのですが、とりわけハイドンを重視しているようです。このアルバムのレーベルであるドイツのTACETレーベルにはハイドンの弦楽四重奏曲の全曲録音があり、その録音はハイドン没後200年である2009年に完了したとの事です。また2009年には各地でハイドンの弦楽四重奏曲の全曲演奏会を開くなど、ハイドンが活動のキーになってますね。メンバーは下記のとおり。
第1ヴァイオリン:マティアス・リンゲンフェルダー(Matthias Lingenfelder)
第2ヴァイオリン:イェンス・オッパーマン(Jens Oppermann)
ヴィオラ:ステュワート・イートン(Steuart Eaton)
チェロ:アンドレアス・アーント(Andreas Arndt)
いつものようにクァルテットのウェブサイトへのリンクを張っておきましょう。
Auryn Quartett - Streichquartett - string quartet(独文・英文など)
TACETのハイドンの弦楽四重奏曲のアルバムはあまりショップの売り場で見かけず、またなぜか全集がすべてバラ売りのレギュラープライスゆえこれまであんまり手を出して来ませんでしたが、先日HMV ONLINEでこのアルバムをようやく入手した次第。そのうちレビューしようとしていたところ、ライムンドさんのブログでアウリン四重奏団他によるシューベルトの弦楽五重奏曲が取りあげられているの見て、これはハイドンも取りあげなくてはと思った次第。ライムンドさんの記事はこちら。
今でもしぶとく聴いています:シューベルトの弦楽五重奏曲 Auryn Quartet 他
TACETレーベルは珍しいレーベル。せっかくですからレーベルのウェブサイトにもリンクを張っておきましょう。
TACET-Website(独文・英文・仏文)
当ブログでもTACETレーベルのアルバムを2度取りあげておりますが、何れも素晴らしい演奏でした。いい音楽を見極める目のありそうなレーベルです。
2011/10/17 : ハイドン–交響曲 : ライスキ/ポーランド室内管の王妃、雌鶏、狩
2011/06/03 : ハイドン–室内楽曲 : アベッグ・トリオのピアノ三重奏曲集
さて、ハイドンを得意としているアウリン四重奏団の演奏は如何なものでしょうか。
Hob.III:72 / String Quartet Op.74 No.1 [C] (1793)
つるつる滑る石鹸のように艶のある流麗なヴァイオリンが印象的な導入部。最新の録音らしくクッキリと各楽器が浮かびあがる鮮明な録音。アンサンブルも良くそろっていますが、やはり第1ヴァイオリンの流麗さが印象的。テンポは安定感があるように聴こえますが良く聴くと結構自在に動かしています。第1ヴァイオリンはかなりインテンポで攻めて、速いパッセージではあえてテンポを上げて爽快感を出しています。強弱のコントラストもクッキリつけているで聴き応えがありますが、くどさはなく自然さを保ちながら個性をうまく表現しています。ハイドンを演奏する悦びが感じられる演奏。
2楽章のアンダンティーノは鋭さを残しながらも落ち着いた曲調に合わせた演奏。なんとなく現代音楽もレパートリーとしているから表現できる鋭い静寂感のように感じます。第1ヴァイオリン以外の楽器は少しざらついた音色なので対比が面白い効果。クッキリとメロディーを描く演奏ながら総じて自然体な印象。曲が進むにつれて深い静寂の表現が秀逸に。
メヌエットはクッキリ感はかわらないものの、作為のない自然さがじわりとつたわります。ただただ音楽を奏でる感じ。
フィナーレは見事。絢爛豪華な音響。このクァルテットのクッキリとした音響の特色を最大限に生かして、各楽器が素晴らしい精度のアンサンブルを構成し、終楽章特有のスリリングな展開。ダイナミックレンジも大きく取って強奏とその余韻の消え入る静寂、そして作為なく楽譜通りにクッキリと音楽を描いていきます。なんとなく誰かの音楽に似ていると、、、そう、アバドの振る音楽に似ています。このクァルテットがアバドの影響を受けているということに合点がいきました。
Hob.III:73 /String Quartet Op.74 No.2 [F] (1793)
コミカルなメロディが印象的な第2番。クッキリとしたフレージングが鮮烈な印象をもたらし、模範的な名演に聴こえます。アンサンブル、音色ともに前曲よりさらにいい感じになってます。こうゆうメロディラインの綺麗な曲をこれだけクッキリ弾くと弦楽四重奏曲の素晴らしさが際立ちます。素晴らしい音楽。
2楽章は軽くあっさりとした入り。曲調をよく把握した演奏といえるでしょう。途中からのヴァイオリンの抑えたメロディが絶妙の美しさ。
メヌエットもちょっと抑え気味なところが絶妙。8分の力で音楽を的確にコントロールしているよう。軽妙な感じが良く表現できています。
フィナーレも非常に緻密にコントロールされています。コントロールされた鮮烈さという印象。前曲とは明らかに聴かせどころを変えています。
Hob.III:74 / String Quartet Op.74 No.3 "Reiterquartetett" 「騎士」 [g] (1793)
最後は名曲「騎士」。この曲は出だしから絶妙なデュナーミクのコントロールが素晴らしい精度。まさにアバドの薫陶を受けているということがよくわかります。ことさら第1ヴァイオリンが浮かび上がった印象はなく、全員が対等にせめぎあっている印象。No.1の鮮烈さとNo.2の抑制を併せ持ったような非常に完成度の高い演奏。短調のほの暗さも陰影のくっきりしたモノクロームの写真のようなデリケートさで表現できています。
絶品なのが2楽章のラルゴ・アッサイ。この曲はアルバン・ベルク四重奏団のコンサートのアンコールの超精妙なアンサンブルが記憶に残っていますが、それとは異なり精妙ながらメロディーがきっちり浮かび上がり起伏も立体感もある演奏。凛とした美しさが印象的なもの。中間部はテンポは落とし気味で静寂感を生かしながら練って歌う感じで変化をつけます。強奏部分は自在な表現でインパクトがあります。
メヌエットは前2曲が比較的自然だったのに比べると、踏み込んだ表現。フレーズごとに表情を丁寧につけて鮮烈な感じも流麗な感じもする演奏。前楽章の穏やかな入りと、自在な後半の表現を踏まえて、あえて表情をつけにいったものでしょう。
フィナーレはやはり名曲。ハイドンの弦楽四重奏曲の中でも印象に残るメロディをやはりクッキリと、ここにきて力感も加えて表現していきます。鮮烈さと軽妙さ、そして重厚さも表現する巧みな演奏。間も効果的にとってこのアルバムの総決算となる素晴らしい演奏。最後に軽さをさらりとみせて終わります。騎士も素晴らしい演奏でした。
いままで入手していなかった事を悔やむ名演奏。流石にハイドンを得意としているだけあって、クッキリとした線を生かした演奏ながら、各曲の本質を良く見抜いた演奏。曲ごとに演奏のコンセプトが明確にあり、それが実にハマっています。評価はもちろん全曲[+++++]としました。
アウリン弦楽四重奏団のハイドン、収集に入ります(笑)。何しろまだ1枚しか手元にありませんので。
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