作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ダニエル・ミュラー=ショットのチェロ協奏曲1番、2番

0
0
新年2本目の記事は久々のチェロ協奏曲。

Muller_SchottCelloCon.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

ダニエル・ミュラー=ショット(Daniel Müller-Schott)のチェロと指揮、オーストラリア室内管弦楽団の演奏によるハイドンのチェロ協奏曲1番と2番、ベートーヴェンのヴァイオリンと管弦楽のためのロマンスの1番と2番をチェロ用に編曲したものの4曲を収めたアルバム。収録は2001年10月18日~22日、イギリス西部ウェールズのモンマスにあるニンバス・コンサート・ホールでのセッション録音。レーベルはドイツミュンヘンのORFEO。

このアルバム府中の街の中古CD屋さんで今日散歩がてら見かけて手に入れたもの。

チェリストのダニエル・ミュラー=ショットは、最近話題のイケメンチェリスト。1976年ミュンヘン生まれのドイツ人でハインリッヒ・シフ、スティーヴン・イッサーリス等のチェリストに師事したそう。15才の時「第1回・若い音楽家のためのチャイコフスキー・コンクール(モスクワ大会)」で優勝して一躍注目を集め、同年、アンネ・ゾフィー・ムターと共演。ムター、プレヴィンとのモーツァルトのピアノトリオやアンジェラ・ヒューイットとのベートヴェンのチェロソナタの録音があり一躍有名になったようです。このハイドンの協奏曲の録音のとき25歳ですから、かなり若くから有名になったんでしょう。愛用のチェロは、ヴェネツィアのフランチェスコ・ゴフリッラー製作による名器。オフィシャルサイトがありましたのでリンクを張っておきましょう。

Daniel Müller-Schott - Official Homepage(独文・英文)

一方珍しいのはオケがオーストリアではなくオーストラリア室内管弦楽団であること。1975年に設立され、世界中の有名なホールでコンサートを行っているようですね。こちらもオフィシャルサイトがありましたのでリンクを張っておきます。

ACO - Home(英文)

Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
まずは第1番。キレのいい小規模現代楽器オケによる伴奏から入ります。中庸の美学とでも言えばいいのでしょうか。時折レガートを効かせて変化を付けます。ミュラー=ショットのチェロはテクニシャンが余裕を持って弾いているような感じ。速いパッセージの音階をチェロもオケもわざと少し速めに弾くのが特徴といえば特徴でしょうか。途中からほどよくチェロが鳴き始め、名器ゴフリッラーの威力を発揮し始めます。カデンツァは師であるスティーヴン・イッサーリスのものにミュラー・ショットが手を入れたものとのこと。オケもチェロもリズムが弾み推進力も感じさせます。
アダージョはちょっと禁欲的なフレージング。フレーズを伸び伸びと弾くのではなく、適度な伸びと適度な抑制が織りなす緊張感。チェロは相変わらず美音ですが情緒に流されることのない演奏。この緊張感を保ったまま曲が進むにつれ徐々にチェロの鳴きが良くなってくる微妙な変化を楽しめます。このアダージョはなかなかの出来。全体に静寂が支配する見事な音楽性です。
フィナーレは一転鮮烈な響きが印象的。テンポも軽快、フレージングも軽く。アダージョとの対比は見事ですね。オーケストラも良く鳴って精度も抜群、チェロのテクニックも素晴らしいものがあり、特に軽々とした速い音階のキレは痛快そのもの。1番から最高の出来。

Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
2番の癒しに満ちた導入部も情緒に傾く事なく、適度なのり、適度な抑制、そして爽やかなそよ風のようなキレを感じます。チェロとオケが渾然一体となった至福の時間。チェロはテクニックを誇示する事なく自在に旋律間を飛び回って遊ぶような趣。フレーズごとにデュナーミクに変化をつけて活き活きと浮かび上がらせ、凡庸さを避けながらも灰汁の強いところは一切みせないのがミュラー=ショットの音楽性でしょう。25歳の若さでの演奏とは信じられない円熟の演奏。力みも澱みもなくつづく素晴らしい1楽章。そこここで聴かれるチェロの高音部は素晴らしい音色。カデンツァはもう一人の師であるハインリッヒ・シフのものにミュラー・ショットが手を入れたものとのこと。2番は1楽章から適度な個性が絶品です。
アダージョは1番に比べると少々重い感じがしなくはありませんが、じっくりした曲想にあっていて悪くありません。今度はチェロの美音を生かした穏やかなコントロール。1番から20年近く経た分曲想にも磨きかかっており、旋律の美しさも段違いなところを上手く表現しています。ここでも弱音のコントロールが秀逸。
フィナーレは穏やかな演奏。オケも木管を中心に美しい響きが印象的。チェロもオケも力む事なく自然な演奏に徹しています。ハイドンの名曲の理想的な演奏という感じです。

偶然出会って手に入れたアルバム。若手チェリストのホープでしょうが、その音楽性はただならぬ才能を感じます。自身がチェロと指揮を担当したハイドンのチェロ協奏曲。普通だったらテクニックの誇示や自身の音楽性を存分に表現するところですが、このアルバムで聴かれる音楽はそうしたものとは異なる落ち着いた円熟の音楽。フレーズのそこここに個性的な閃きがありますが、穏やかな音楽性に裏付けられたもの。久々にチェロ協奏曲の名盤に出会いました。評価はもちろん両曲とも[+++++]としました。

昨年は10月は弦楽四重奏曲、11月は室内楽、12月は声楽というように月別にテーマを決めて重点的にそのジャンルを取りあげてきましたが、1月は特にテーマを決めずにいろいろ取りあげていこうと思います。
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.