【新着】ケッケルト四重奏団の太陽四重奏曲復刻盤

ケッケルト四重奏団(Koeckert Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.20「太陽四重奏曲」の6曲を収めた2枚組のアルバム。収録はNo.1、No.2、No.6が1965年11月13日~18日、No.3、No.4、No.5が1966年6月1日~6日、何れもミュンヘンのヘラクレスザールでのセッション録音。ジャケットはDeutsche Grammophonですが、日本のTOWER RECORDSが最近復刻したTOWER RECORDS VINTAGE COLLECTIONのVol.13です。
ケッケルト四重奏団は年配の方にはなじみなのかもしれませんが、私ははじめて聴くクァルテット。ライナーノーツからかいつまんで紹介しておきましょう。ケッケルト四重奏団はチェコ生まれのヴァイオリン奏者、ルドルフ・ケッケルトにより1939年に設立されたチェコ・ドイツ弦楽四重奏団が母体で。メンバーは当時ケッケルトが在籍していたプラハ・ドイツ・フィルハーモニー(バンベルク交響楽団の前身)の楽員。1947年にケッケルト四重奏団に改称。ルドルフ・ケッケルトはその2年後の1949年、バイエルン放送交響楽団のコンサートマスターに就任し、ケッケルト四重奏団となった後のメンバーはいずれもバイエルン放送交響楽団の団員。ミュンヘンが本拠地で、SP時代からDeutsche Grammophonに多くの録音があり、LP初期のベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集が代表的なアルバムとのこと。
今日取り上げるハイドンの太陽四重奏曲を録音した1965年当時のメンバーは下記のとおり。
第1ヴァイオリン:ルドルフ・ケッケルト(Rudolf Koeckert)
第2ヴァイオリン:ルドルフ・ケッケルト・ジュニア(Rudolf Koeckert junior)
ヴィオラ:オスカー・リードル(Oscar Riedl)
チェロ:ヨーゼフ・メルツ(Josef Merz)
今日は太陽四重奏曲の中から、No.5とNo.6を取りあげましょう。
Hob.III:35 / String Quartet Op.20 No.5 [f] (1772)
各楽器がオンマイクで録られた若干音色に古さを感じるものの鮮明な録音。ゆったりとしたテンポでシュトルム・ウント・ドラング期の憂いにに満ちたメロディーをじっくり描いていきます。リズムもゆったり打ち、流麗な印象はなく、じっくりじっくりフレーズを刻んでゆくことで、曲の深みを表現するような印象。テンポの揺れはとんどなく、一貫してゆったりしたテンポ。表現の幅も穏当。実に慈しみ深い演奏。これはこれで深い表現。独特の木質系の弦楽器の音色と相俟って懐かしさあふれる響きを感じます。
続く2楽章のメヌエット。この悟りきったような落ち着きはなんでしょうか。枯れた表現というのではなく枯れた心境による鮮明な表現という感じ。演奏の先の先まで見えていてそれを淡々とこなしていっているのでしょうね。
絶品なのはアダージョ。侘び寂びの極致。古い茶室で素朴な魯山人の茶器の眺めるような心境。無欲の演奏と言えばいいでしょうか。体にしみ込んだ音楽を無心で演奏しているのでしょうね。折目正しくじっくり紡ぎ出される音楽。表現を超えた音楽が流れます。
フィナーレに入りテンポとテンションが上がりますが、抑制が効いているので適度な盛り上がり。解説によれば、常にソット・ヴォーチェ(小声でささやくように)でとの指示があり、それを踏まえた演奏という事ですね。途中で大きく溜めるところがこの演奏では珍しく踏み込んだ表現。まさに燻し銀の演奏と言えばいいでしょうか。これまで聴いたOp.20のNo.5の中でも独特の味わいのある演奏です。
Hob.III:36 / String Quartet Op.20 No.6 [A] (1772)
続いてNo.6。こちらは冒頭からインテンポで畳み掛ける勢いのある演奏。No.5が1966年、こちらは1965年と録音時期が異なります。木質系の弦楽器の美しい音色は共通するものの生気はこちらの演奏のほうが強く、活き活きとした感じ。テンポも標準的。表現もクッキリ度が上がっています。曲の構造がより鮮明に表現され、前曲とは表現の方向が異なります。録音は1年古いもののこちらの方が音の鮮度もいい感じ。
つづくアダージョも前曲の枯れた感じとは異なり、むしろ弾む感じさえ与えます。糸を引くような独特のヴァイオリンのメロディーラインが美しいですね。ケッケルトのヴァイオリンは線は細いものの音色の凛とした美しさがあり、このアダージョではその魅力がたっぷり堪能できます。
メヌエットはクッキリと大胆に刻むリズムが印象的。こちらも前曲とは異なる表現。オンマイクで録られた各楽器の迫力ある音色が直接鼓膜を揺さぶるような迫力。復刻も鮮度十分でなかなかいい仕事です。
最後のフィナーレは全奏者が集中して畳み掛ける迫力十分の演奏。ハイドンのフィナーレの素晴らしい音楽の魅力が十分に表現されています。次々とメロディーが重なっていくフーガをクッキリ描いていきます。最後は各楽器が綺麗に重なり終了。
一聴したところ時代を感じる普通の演奏でしたが、良く聴くとハイドンの弦楽四重奏の名曲を曲ごとにスポットライトの当て方を変えて、曲の真髄に迫る解釈の演奏であることがわかりました。私にとってははじめてのケッケルト四重奏団の演奏でしたが、実に慈しみ深い名演奏でした。やはり長い時を経て復刻される価値のある素晴らしい演奏でしょう。評価は両曲とも「+++++」としました。
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