作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アンドレア・フォラン/トム・ベギンによるハイドンの歌曲集

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先日ハイドンの鍵盤独奏曲全集によって一躍ハイドンファンの視線を釘付けにしたトム・ベギン。彼が他にハイドンの曲を弾いたアルバムがないかと探したところありました。

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アンドレア・フォラン(Andrea Folan)のソプラノとトム・ベギン(Tom Beghin)のフォルテピアノによるハイドンのドイツ語による12曲の歌曲集第1集と名作「ナクソスのアリアンナ」を収めたアルバム。収録は1995年3月21日~23日、ニューヨーク州でもカナダにだいぶ近いイサカにあるコーネル大学セージチャペルでのセッション録音。レーベルはBRIDGEというアメリカのレーベル。今日はこの中から「ナクソスのアリアンナ」を取りあげましょう。

ソプラノのアンドレア・フォランはアメリカ、ペンシルベニア州ランカスター生まれでドイツ育ちのソプラノ歌手。ベルギーのブルージュ古楽フェスティバルに出演したり、オランダ古楽ネットワークの支援でオランダツアーを行ったりしているようです。数々の古楽アンサンブルとの共演歴があり、ヘンデルのメサイア、ハイドンの天地創造、バッハのミサ曲などのソリストとしても活躍しているようです。ライナーノーツによればこのアルバムがフォランのデビューアルバムとのことですね。

以前取りあげた時にトム・ベギンをちゃんと紹介していませんでした。大学はベルギーのブリュッセル近郊のルーヴェンのレネス大学でアラン・ワイスにピアノを学び、その後スイス政府、ロータリー財団の奨学金を得てバーゼル音楽院でルドルフ・ブッフビンダーとともに働いた。その後スコラ・カントルム・バジリエンシスに所属していた時にフォルテピアノに興味をもつようになり、コーネル大学でマルコム・ビルソンの指導のもと18世紀の音楽の研究で博士課程を終え、論文はハイドンのクラヴィーア・ソナタの解釈についてという生粋のハイドン研究者。NAXOSのDVDでハイドンの手紙や基礎文献にまで触れて曲の背景を暴き出そうとしていたのにはこうしたバックグラウンドがあってのことだった訳ですね。

トム・ベギンはこのアルバムではフォルテピアノを弾いて歌曲の伴奏を担当していますが、後のソナタ集にも通じる自在なテンポで曲をかなり自由に弾いている感じですね。のちの大化けの片鱗が垣間見える感じですね。

ナクソスのアリアンナはこのブログでも8種の演奏を取りあげていますので、曲の解説などは下記をご覧ください。いや、ずいぶん取りあげた事になりますね。

2011/09/21 : ハイドン–声楽曲 : レナータ・スコットの「ナクソスのアリアンナ」
2011/08/17 : ハイドン–声楽曲 : アンネ・ゾフィー・フォン・オッターの歌曲集
2011/07/03 : ハイドン–声楽曲 : ベルナルダ・フィンクの「ナクソスのアリアンナ」など
2011/06/24 : ハイドン–声楽曲 : ジェーン・エドワーズの歌曲集
2011/03/19 : ハイドン–声楽曲 : 【新着】エマ・カークビーの歌曲集
2010/10/17 : ハイドン–声楽曲 : 白井光子の「ナクソスのアリアンナ」
2010/08/08 : ハイドン–声楽曲 : アンナ・ボニタティバスのオペラアリア集(つづき)
2010/08/03 : ハイドン–声楽曲 : ベルガンサの歌曲ライヴ

Hob.XXVIb:2 / Cantata "Arianna a Naxos" 「ナクソスのアリアンナ」 [E flat] (c.1789)
冒頭のアダージョはゆったりと雅な響きを楽しむようなベギンのフォルテピアノの伴奏。とぼとぼと回り道をしながら散歩するような伴奏。フォランのソプラノも落ち着いて語りかけるような歌い方。輝きはほどほどながらほどよく艶っぽい透明感ある美しい声。確かに古楽器との相性のいい声ですね。自然な発声も静かに歌曲を楽しむのに絶好の演奏。チャペルの広い空間に透明なソプラノとフォルテピアノの雅な響きが拡散し消えてゆくようすがよくわかるなかなかいい録音。ベギンのソナタ集の人工的に残響を付加された録音とは異なり、非常に自然な定位感。ベギンはソナタ集でのある意味攻める演奏とは異なり、この頃は余裕たっぷりに伴奏に徹する、こちらも大人な演奏。
続くアリアはフォルテピアノの活き活きとメリハリをつけたフレージングに、起伏を強調しすぎないフォランの歌声が乗って、どちらかと言うとフォルテピアノがリードするような感じ。明らかにベギンが主導権を握っていることがわかります。徐々に曲想が激しさを増しますがフォランは一貫して落ち着いた歌唱。
レチタティーヴォはフォランの歌いながらの嘆きではなく、語りながら控えめに嘆くところが特徴的。歌手によっては突き抜けるような輝かしい声が聴かれるところですが、ダイナミックレンジはそこそこ控え目といったところでしょう。
最後のアリアは導入部から絶妙に美しい曲をベギンがフォルテピアノの自在な演奏から紡ぎ出します。フォランはここでも一貫して透明な美しい声色で聴かせる歌唱。最後はこのアルバムで最も力の入った歌唱で終わります。もう少しメリハリと声量があれば言うことなしですが、デビューアルバムとしてはこれだけの美声ということで十分でしょう。

トム・ベギンは95年当時からやはりキレてました。ハイドンに対する深い理解が感じられる自在な機知と余裕のある表現。フォランはテクニック的にはまだまだ磨くところはあるものの透明感のある素朴で美しい声。ハイドンの歌曲に良くマッチしています。評価は[++++]というところにしておきましょう。ベギンのフォルテピアノはかなりいい線言っていると思います。

NAXOSの全集もまだまだ聴き込んでいませんので、こちらも何回かに分けて異なる楽器と、異なるロケーションのヴァーチャルな響きを楽しみたいと思います。
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