作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ベルナール・ラルマン/ジャン=フランソワ・ゴンザレス管弦楽団のハインリッヒ・ミサ

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今月は声楽曲を少し多めに取りあげていく予定です。まずはミサ曲から。以前ネルソン・ミサの演奏が素晴らしかったラルマンのアルバムを最近オークションで見かけてゲット。このアルバム、以前湖国JHさんからその存在を教えていただいており長らく探していたもの。

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ベルナール・ラルマン(Bernard Lallement)指揮のジャン=フランソワ・ゴンザレス管弦楽団、パリフランスドイツ合唱団(La Chorale Franco-Allemande de Paris)の演奏でハイドンのハインリッヒ・ミサを収めたアルバム。ソロはソプラノがリュドミラ・コヴァチェワ(Ludmila Kovatchéva)、メゾ・ソプラノがエディト・フレー(Edith Flé)、アルトがダニエレ・ミシェル(Danielle Michel)、テノールがレジス・オウド(Régis Oudot)、バリトンがモーリス・ブルボン(Maurice Bourbon)、バスはヒューグ・バタイユ(Hugues Bataille)、オルガンがミシェル・ギヤール(Michèle Guyard)というメンバー。収録日などの表記はありませんがPマークが1984年なので、その少し前の収録と想像されます。レーベルはフランスのBNL PRODUCTIONSというマイナーレーベル。

以前取りあげたネルソン・ミサの記事のリンクを張っておきましょう。

2011/08/25 : ハイドン–声楽曲 : 絶品! ベルナール・ラルマン/ジャン=フランソワ・ゴンザレス管弦楽団のネルソン・ミサ

ネルソン・ミサを収めたアルバムとソロ何人か以外は同一メンバー。録音は何れもPマークのみですが、ネルソン・ミサの方は1989年ですので、今日取り上げるアルバムの5年後のもの。このハインリッヒ・ミサの録音が良かったのでネルソン・ミサを録音したのではないかと想像することができます。

ハインリッヒ・ミサは確認したところ当ブログで取りあげるのははじめてですので曲の紹介を書いておきましょう。

戦時のミサからはじまる6曲のミサはハイドンが2度にわたるロンドン旅行から帰ったあとの1796年から1年に1作ずつ書かれたもの。それぞれマリア・ヘルメネギルド・エステルハージ侯爵婦人の目名祝日にアイゼンシュタットのベルク教会で初演されたもの。ハインリッヒ・ミサはその2作目で作曲は1796年、初演は1797年9月12日。ハイドン自身が自筆楽譜に「オフィダの聖ベルナルドのミサ」と記しており、もともと聖人ベルナルドへの賛美をあらわす曲として作曲されたもの。第4曲のサンクトゥスのメロディーの一部が当時のドイツ、オーストリアで親しまれていたハインリッヒの言葉にはじまる古いコラールのメロディーにもとづいている事からハインリッヒ・ミサと呼ばれるようになったという事です。

Hob.XXII:10 / Missa Sancti Bernardi de Offida "Heiligmesse" 「ハインリッヒミサ」 [B flat] (1796)
キリエ
冒頭のキリエはラルマンのネルソン・ミサと同様、一撃目の図太い響きに圧倒されます。滔々と流れる大河のごときゆったりとした雄大な響き。教会での録音と想像されますが、たっぷりと含まれる残響にオケとコーラスがとろけるような響きで録られています。それでいて不鮮明な感じも最小限に抑えられていますので、ミサ曲を楽しむには絶妙のバランス。ティンパニがズドンと腹に来ますし、コントラバスの響きが意外に鮮明に聴こえるので録音のクォリティは十分です。自宅が大聖堂になったような素晴らしい録音。演奏はゆったりしたテンポに乗ってオケとコーラスを存分に鳴らしきったもの。オケもコーラスもオーソドックスな演奏ながらテンポ感も自然なフレージングも非常に質の高いもの。ラルマンのコントロールはくっきりとメロディーを浮かび上がらせ、自然な範囲で休符を長めにとり、自然なのに引き締まった感を与える見事なもの。オーケストラとコーラスのコントロールも行き届いてます。
グローリア
つづくグローリアに入り、流麗さに加えてリズムのアクセントを強めて起伏が増してきます。ソロはオケの後方にひかえ目に定位する感じ。ソロにスポットライトを当てるのではなく渾然一体となった響きを主眼にした録音。ソプラノは輝きのあるヴィブラートの良くかかった美声。全体の分厚い響きのなかに音量は控えめながら華を添えています。抑えた中間部分の流麗な美しさも絶品。磨き抜かれた銀細工のような艶を感じる素晴らしい響き。後半はコーラスによる天上に駆け上がるような音階の繰り返しに陶酔するようなひと時。
クレド
前半のアレグロは大迫力のオケとコーラスの響きの図太い響きとと余韻のおくれが教会の空間の広さを想像させます。フレーズごとの強弱のコントロールが巧みで聴き応え十分。続くアダージョはソロの響宴。オペラの一場面のような美しいフレーズを木管と弦のピチカートにのってソロが歌い上げます。ここでも低音弦の実体感ある響きが絶品。ふたたびアレグロはオケとコーラスが渾然一体になりクレドのクライマックスにむけて盛り上げます。
サンクトゥス
冒頭からしっとりしたこの今日の題名となったメロディーの美しさにうっとり。この曲は美しいメロディーの宝庫。フレーズフレーズが磨きぬかれた旋律に彩られ、祈りの時間を至福なものへ。コーラスの柔らかく深い響きが最高。伴奏もヴァイオリンやフルートがリズムを崩して変化を与え、音楽を深くしています。しばし至福の時間にうっとり。
アニュス・デイ
全曲からつづくコーラスによる素晴らしいメロディーライン。澄み切った穏やかな祈りの心情がさらに澄み切るような曲調。美しいフレーズを噛み締めるように歌うコーラスとオケ。最高の音楽的感興。この曲のクライマックスは迫力とも音量とも無縁な枯淡の境地でした。最後のアレグロは至福の心境を暖かくさますようなしっとりとした演奏で明るさを取り戻し、悟りきった演奏者が程よいメリハリでさらっと仕上げたような演奏。すべてを表現し尽くした充実感がゆったりした余韻に感じられる演奏。弦のピチカートの繊細な響きが変化をつけますが、そのままあっさりと終了。

ネルソン・ミサも絶品でしたが、それに劣らずこちらのハインリッヒ・ミサも絶品でした。雄大な響きのオーソドックスな演奏ではありますが、ただそれだけではなく、ミサ曲の真髄に迫る素晴らしい完成度。前半の力の表現から徐々に美しいフレーズの陶酔に移り、最後は澄み切った祈りの心境に。ラルマン、只者ではありません。検索しても他の演奏が見つからないのでラルマンのハイドンのミサ曲はこの2曲だけでしょうか。評価はもちろん[+++++]です。

この演奏、おそらくオークションや中古等以外ではなかなか手に入りにくいでしょうが、ハイドンのミサ曲の真髄をえぐる素晴らしいプロダクションだけに、どこかの会社がリマスターし直して再発売してほしいものです。そういったことができる人、このブログ読んでないでしょうね(笑)

今日はこれからNHKホールに。デュトワとN響によるマーラーの8番聴いてきます!
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