作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アンソニー・ホールステッド/グッドマン/ハノーヴァーバンドのホルン協奏曲

0
0
最近オークションで手に入れたアルバム。

Halstead.jpg
amazon

アンソニー・ホールステッド(Anthony Halstead)のナチュラルホルン、ロイ・グッドマン(Roy Goodman)指揮のザ・ハノーヴァー・バンド(The Hanoer Band)の演奏で、ハイドンのホルン協奏曲、ミヒャエル・ハイドンのホルン協奏曲、そしてホルン大活躍のハイドンの交響曲31番「ホルン信号」の3曲を収めたアルバム。収録は1989年1月3日~5日、ロンドン近郊のハムステッドの大学ホールでのセッション録音。レーベルはNimbus Records。

何となくですが、ジャケットからいい演奏のような気がしてましたが、これが素晴らしいものでした。

ホルンのアンソニー・ホールステッドは1945年、イギリス中部マンチェスター近郊のサルフォードという街の生まれ。マンチェスターのチータム音楽学校で学び、当初はピアニストを目指したようですが、王立マンチェスター音楽大学でのホルンの教師であったシドニー・クールストンの助言によりホルン奏者を目指すようになったとのこと。その後ボーマンス交響楽団、BBCスコティッシュ交響楽団、ロンドン交響楽団などのホルン奏者として活躍し、1972年以降はイギリス室内管弦楽団の首席ホルン奏者として活躍。またギルド・ホール音楽学校で教職にもついた。
1986年イギリス室内管弦楽団の職を辞し、以降は古楽器の研究と演奏に軸足を移しこのアルバムのオケであるハノーヴァー・バンドなどの古楽器オケと定期的に共演するようになったとのこと。

ホールステッドのアルバムは彼が指揮をしているものならトランペット協奏曲がありますし、他にはcpoからリリースされているクリスチャン・バッハの交響曲等を通してなじみはありますが、意外とホルンのアルバムは手元になかったりします。

Halstead Music(英文)

一方、オーケストラの方であるグッドマンとハノーヴァー・バンドについてはこのアルバムより後の録音になる交響曲集が多くの枚数hyperionレーベルからリリースされていますが、このアルバムに収められた「ホルン信号」はこちらのアルバムのみ。ハイドンの交響曲の古楽器による演奏の草分け的存在ですが、ちょっと鋭角的な演奏と録音によって、おすすめ盤とは言いにくいのが正直なところです。

前置きが長くなったのでレビューに移りましょう。まずはホルン協奏曲から。

Hob.VIId:3 / Concerto per il corno [D] (1762)
古楽器特有の繊細な音色ながら、レガートを効かせた穏やかな序奏。リズムが良く弾み古楽器らしからぬ流麗なメロディーライン。繊細かつ流麗な見事なオーケストラの序奏です。オケに比べて浮かび上がるように明確に定位するホールステッドのナチュラルホルンは、古楽器であることを忘れてしまうような見事な吹きっぷり。キリッとした高音部によって古楽器であることはわかりますが、それにしても素晴らしいテクニック。軽快なオケの伴奏に乗って難しいナチュラルホルンが自在にメロディーを刻んでいく快感を味わえます。ホルンの強音のアクセントが響きを引き締めます。カデンツァは超絶テクニック炸裂。ジャケットの穏やな絵の影に牙を剥くホルンが隠れていました。
圧巻は2楽章のアダージョ。オケは十分リラックスした入り。古楽器にしては耽美的でかつ陰影の深さを感じる流麗なオーケストラに乗ってホールステッドのホルンが神々しく響きわたります。ハイドンの天才的なメロディーが下降しホルンの最低域をたどるあたりは、あまりの深い音楽に鳥肌がたつようようなひと時。純粋に心地よいホルンの音色に浸れる素晴らしい瞬間。カデンツァもホルンを知り尽くしたホールステッドの穏やかな狂気が感じられるホルンの響きと余韻の織りなす至福の音楽。絶品!
フィナーレはオーケーストラの華やかな色彩感が一気に際立ちます。オケも力まず堅実なサポート。音色を変化させながら駆け上る音階、恐ろしく正確な音階とリズム。ホールステッドの素晴らしいテクニックに惚れ惚れですね。最後のカデンツァは宇宙との交信のようなやりとりで張りのあるホルンの美音を披露、ホルンの素晴らしい音色とテクニックに圧倒される出来でした。

Hob.I:31 / Symphony No.31 "Hornsignal" 「ホルン信号」 [D] (1765)
協奏曲のナチュラルホルンの音色そのままに、冒頭のホルンの号砲が響き渡ります。グッドマン指揮の他の交響曲のアルバムとは一線を画す生気に満ちあふれた演奏。冒頭からオケが乗りまくっているのがよくわかります。グッドマンとハノーヴァー・バンドちょっと見直しました。ホルンの激しい音のアクセントがこの演奏のキャラクターとなっています。オケは古楽器としては表現の幅も広く、リズムは活き活きとあまり揺らさず一貫性もあり非常にレベルの高い演奏。このホルン信号は気に入りました。
協奏曲同様アダージョは絶品の出来。穏やかな表情でオケは抑え気味に進み、ホルンのサポートに徹しているよう。弦楽器のソロも非常に安定していて安心できる演奏。おそらくロイ・グッドマンでしょう。
メヌエットも適度に快活、オケもキレよくホルンを支えます。まさに舞曲と言った趣で,軽々とメロディーを刻んでいきます。舞曲の波に飲まれそうな勢い。リズムの安定感は流石です。最後はキリッとアクセントで絞めてメリハリをつけます。
フィナーレは完全に力が抜けて流すような演奏。それがまた心憎い演出と感じてしまうところ。メロディーをいろいろな楽器に引き継いでいきますが、構えも緊張もなくさかさか記録していくだけ。気づいた時にはオーケストラの美しい響きにもまれているような感覚。ホルン協奏曲の劣らずこちらも絶品です。後半のヴァイオリンソロ、最後部のコントラバスでしょうか、低音弦のソロパートも良く訓練された見事な演奏。最後は冒頭のホルンの号砲が再現されパンチあうと。こちらもいい出来でした。

ホルンの名手、アンソニー・ホールステッドのホルンによるハイドンのホルン協奏曲とホルン信号。ホルンのホールステッドの素晴らしい腕前と同時にグッドマンとハノーヴァー・バンドのゆったりと陰影のある演奏も絶品でした。ちょっとhyperionの交響曲集を1枚取り出して聴き直してみたんですが、テンポが早めでかなり力の入った演奏。力みが感じられてこのアルバムで楽しめる余裕が感じられません。このアルバムのNimbus Recordsの録音にあるのかプロデューサーの見識かわかりませんが、こちらのアルバムの方が楽しめます。評価は両曲とも[+++++]としました。

早くも11月も月末になってしまいましたね。明日は恒例のHaydn Disc of the Monthです。
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.