作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

フェステティチ四重奏団のOp.9のNo.4新旧比較

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今日は初期の弦楽四重奏曲。

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HMV ONLINEicon / amazon (何れも別装丁盤)

フェステティチ四重奏団(Quatuor Festetics)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.9の6曲を収めたアルバム。このアルバムはARCANAのものではなく、HUNGAROTONのもの。収録年代は記載がありませんがPマークは1989年。ARCANA盤が1998年4月の録音ですのでおそらく10年くらい前の録音と言うことになります。

フェステティチ四重奏団の弦楽四重奏曲は以前もARCANA盤ではなくharmonia mudiのOp.33を取りあげています。

2011/05/01 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : フェステティチ四重奏団のOp.33(旧録音)

以前聴いたOp.33はARCANA盤は手元になかったため聴き比べ出来ませんでしたが、今回は両方とも手元にありますので、聴き比べができますね。

FesteticsOp9ARCANA.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

フェステティチ四重奏団はハンガリーのブダペストに本拠を置く古楽器によるクァルテット。メンバーはこのHUNGAROTON盤もARCANA盤も変わっていません。

第1ヴァイオリン:イシュトヴァン・ケルテス(István Kertész)
第2ヴァイオリン:エリカ・ペテーフィ(Erika Petőfi)
ヴィオラ:ペーター・リゲティ(Péter Ligeti)
チェロ:レジェ・ペルトレーニ(Rezső Pertorini)

第1ヴァイオリンのイシュトヴァン・ケルテスはウィーン・アカデミー合奏団の元コンサートマスターということで古楽器の名手とされる人のようです。

まずはHUNGAROTON盤から聴いてみましょう。

Hob.III:22 / String Quartet Op.9 No.4 [d] (c.1769-70)
太陽四重奏曲でシュトルム・ウント・ドラング期の頂点を迎えるハイドンですが、Op.9はその数年前の作品。それまで5楽章が多かった弦楽四重奏曲が4楽章形式となった作品。音楽的にも後年の作品と比べてまだまだシンプルな構成ながらこの時期特有のうら悲しいメロディーを含む佳作。そのOp.9の1曲目におかれたNo.4。フェステティチ四重奏団の演奏は、このクァルテット独特のざらついた木質系の古楽器の特徴的な音色にいきなり耳を奪われます。暗く濁った響きからはじまるこの曲。すぐにヴァイオリンの張りのある音色が曲を支配して、独特の音色は他のクァルテットとは一線を画す魅力を持っています。テンポを揺らしながら、じっくり曲を描いていくような演奏。しかも9分の力で余裕を残しながら、巧みに曲想をコントロール。起伏も非常に大きく踏み込んだ表現がありますが、力は入りすぎないのが流石。徐々に徐々に表情を濃くしていき情念に近い曲の真髄を表現する名演奏。
2楽章はメヌエット。軽々としたタッチで自然なフレージング。軽く踊るための舞曲というような位置づけでしょう。必要十分な演出。ちょっとした休符にも意味ありげに表情をつけていくので単調さとは無縁。力が抜けていますがリズムのキレは冴えてます。
3楽章のアダージョ・カンタービレはやはりゆったりと、噛み締めるようにフレーズを刻んでいきます。ヴァイオリンのケルテシュは美音の限りを尽くした輝かしい音色。ヴィブラートをほとんどかけない伸びのある音色がぐっと響き渡ります。
フィナーレはフーガのようなメロディの繰り返しをタイトに表現。一音一音の音色の変化を巧みにつけながら速いパッセージをテンポ良く弾き抜いていきます。良く聴くと本当に一音一音よく表情がついていて、メロディに生気を与えている事がわかります。この音色の変化は秀逸。素晴らしい表現力。この曲の真髄に迫る名演奏です。

つづいてARCANA盤。HUNGAROTON盤よりも明らかにオンマイクの収録。残響は非常に少なく、弦楽器の音色がスピーカーから直接鳴り響く感じ。ダイレクト感はあるものの音場感がスポイルされ、若干不自然な感じ。フェステチィチ四重奏団の独特の音色は変わる事はありませんが、聴き比べると明らかに表現の幅、起伏が大きくなり、明らかに力感が増している感じ。ただし良い事ばかりではなく、HUNGAROTON盤で感じられた余裕が消えて、力みを感じるのも正直なところ。例えにならないかもしれませんが50年代のダンディズムを感じさせたカラヤンの演奏と、70年以降の音響を極めようと余裕のなくなった演奏の違いの様な感じ。私はやはりHUNGAROTON盤に分ありと思ってしまいます。この超デッドな録音は演奏する人にはディティールが良くわかっていいのかもしれませんが、音楽を楽しもうとするにはちょっとマイナスかもしれません。
2楽章以降も演奏のスタイルはほぼ同様、やはりARCANA盤はちょっと力んで聴こえるため、フェステティチ四重奏団のいいところがちょっと欠けてしまったように聴こえるのが惜しいところです。

ということで、フェステティチ四重奏団によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.9の最初に置かれたNo.4の新旧聴きくらべはやはり旧盤に軍配があがりました。評価はHUNGAROTON盤が[+++++]、ARCANA盤は[+++]とします。意外と差がついてしまったように聴こえます。音楽とはわずかの違いが非常に印象を変えてしまうものということでしょう。HUNGAROTON盤は絶対のおすすめ盤です。

ARCANA盤もまだ全部手に入れておりませんので、出会ったらまた聴いてみたいと思います。
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2 Comments

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羊飼い

No title

フェステティチ四重奏団のハイドンは、最後の2セットまでARCANA盤を集めていました。 初めて聴く曲もあり、ハイドンの独特の
個性、面白さを教わりました。


フェステティチ四重奏団のHUNGAROTON盤は、モーツアルトの四重奏を所有していますが、確かに残響の豊かな録音です。 

この曲のHUNGAROTON盤とARCANA盤は同じ音源と思っていました。 

Daisy

Re: No title

羊飼いさん、こんばんは。
私はどうもフェステティチのARCANA盤は相性が悪くしっくり来ていないので、HUNGAROTON盤やharmonia mundi盤の方に興味が行ってしまいます。残響もそうですが、生気というかエネルギーがARCANA盤よりいいように聴こえます。ただ、ARCANA盤はそれゆえ食わず嫌いになっており、良く聴き込んだ訳ではありませんので、あらためて聴き直してみなくてはとも思っています。

  • 2012/01/26 (Thu) 21:52
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