作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ウィーン弦楽四重奏団の五度、ひばり、セレナーデ

2
0
今日は弦楽四重奏曲にもどってウィーンものを。

WinnerSQ76.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

ウィーン弦楽四重奏団(The Wienna String Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.76のNo.2「五度」、Op.64のNo.5「ひばり」、そして「ハイドンのセレナーデ」と言われていたホフシュテッター作の弦楽四重奏曲の3曲を収めたアルバム。収録は1978年5月、ベルリンのテルデックスタジオでのセッション録音。レーベルはcamerataですが、ジャケットにはLisenced by BMG Fanhouseと書かれています。

このアルバム、先日ライムンドさんのブログで取りあげられていて興味を持ちましたが、手元になく探していました。行いがいいのか(笑)それほど時間がたたず先日運良く出会いました。

今でもしぶとく聴いています:ウィーン弦楽四重奏団 ハイドン・弦楽四重奏曲「ひばり」

ウィーン弦楽四重奏団は1964年ウィーンフィルのメンバー4人により創設されたクァルテット。それまで主役だったウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団、バリリ弦楽四重奏団などが活動をやめ、ウェラー弦楽四重奏団も陰りをみせ、まさに新旧交代といったところでしょう。第1ヴァイオリンのウェルナー・ヒンクは1964年にウィーンフィルに入団したばかりでしたが、その後1974年にはウィーンフィルのコンサートマスターに就任するなどウィーンフィルを代表するヴァイオリン奏者です。活動拠点はムジークフェラインのブラームスザールで定期的に演奏活動をする他、ザルツブルク音楽祭をはじめとして各地で演奏活動して、日本にもたびたび来ているようです。メンバーは次のとおり。

第1ヴァイオリン:ウェルナー・ヒンク(Werner Hink)
第2ヴァイオリン:フーベルト・クロイザマー(Hubert Kroisamer)
ヴィオラ:クラウス・パイシュタイナー(Klaus Peisteiner)
チェロ:ラインハルト・レップ(Reinhard Repp)

Hob.III:76 / String Quartet Op.76 No.2 "Quintenquartetett" 「五度」 [d] (1797)
ライムンドさんが書かれているとおり素晴らしい録音。まさにウィーンフィルの弦の音。演奏はやや速めのテンポで、まさに教科書的な楷書のようなフレージング。非常に伸び伸びとしたヴァイオリンの音色ですが、インテンポできっちりと拍子を刻みハイドンらしい規律も感じさせます。いままでいろいろなタイプの弦楽四重奏を聴いていますが、ウィーン弦楽四重奏団のこのスタイルはまさにハイドンの弦楽四重奏曲の理想的な演奏と言っていいでしょう。柔らかな弦の音色で緊密に畳み掛けるようなインテンポと伸びのあるフレージング。隙なしです。
2楽章のアンダンテも素晴らしい入り。ただ、録音会場か機器の問題でしょうか、ごく低い音で騒音のようなものが入ってます。車の音でしょうか、演奏が素晴らしいだけにちょっと集中を削ぎます。ヒンクのヴァイオリンは純粋無垢な演奏。抜群のリズム感で曲が滔々と流れていきます。チェロの音程の動きも鮮明にわかるずばらしい音場。
メヌエットはさらにリズムを先鋭に表現。メロディーよりキリッとしたリズムの表現に全員が集中している感じです。まさに部屋にクァルテットが来て弾いているような抜群のリアリティ。この楽章でもやはり暗騒音がちょっと気になりますね。演奏は文句なし。
フィナーレはキレと起伏が一層クッキリとして抜群の生気。不安定なところは微塵もなく、鋭角的な感じもない自然さを保っています。これだけ踏み込んだ表現なのに変に強調感がなく自然さを保っているのはやはり音楽の流れに一貫性があるからしょう。まさにハイドンの弦楽四重奏曲の見本のような演奏。なおこの曲のみ第2ヴァイオリンがヘルムート・プッフラー(Helmuth Puffler)が担当しています。

Hob.III:63 / String Quartet Op.64 No.5 "Lerchenquartetett" 「ひばり」 [D] (1790)
前曲同様素晴らしい録音で聴き慣れたひばりの1楽章のメロディーがくっきりと浮かび上がります。特に秀逸なのがレップのチェロの柔らかいのにキレのいい演奏。流石ウィーンフィルの奏者というところでしょう。演奏はテンポとキレ以上に音の迫力が素晴らしく、クァルテットの醍醐味も存分に味わえる名録音、名演奏というところ。ひばりが空を上昇するような旋律の美しさもさることながら弩迫力の弦楽四重奏団のリアルな音も心に迫ります。
2楽章のアダージョ・カンタービレはヒンクの美しいヴァイオリンの響きにただただ打たれる楽章。旋律を次々と受け渡していく様子はまさに室内楽の快感そのもの。どの楽器も抜群のテンポ感。たどたどしさは皆無です。完全なピラミッドバランスの音響。この美しい響きは何者にも変え難い魅力です。
ひばりのメヌエットは前曲とは異なり、ゆったりしたくつろぎを表現したような演奏。前曲ではリズムをキリッと表す事に集中していましたが、この曲では余裕ある表情を見せます。最後にふっと力を抜くあたりの表現も秀逸。
フィナーレはこの曲の総決算のような素晴らしいもの。これ以上正確に弾く事は出来ないほどの音階から入り、絡み合う各楽器による混沌と興奮。音階を刻みながら曲の大波を見事に表現。いやいや素晴らしい演奏。

このあとハイドンのセレナーデも秀逸。流石に作曲者の腕の違いか曲としての完成度には大きな差がありますが、2楽章のセレナーデの美しさはこの曲の演奏ではピカイチの出来。長い歴史を生き抜いてきた名旋律ですね。

ウィーン弦楽四重奏団のハイドンの「五度」と「ひばり」、そしてオマケで入っている「ハイドンのセレナーデ」どれをとってもこれまでのアルバムの中では最高の出来と言っていいでしょう。これ以上正統な演奏は出来ないのではないかと思わせる究極の完成度。ウィーンフィルのメンバーならではの素晴らしい音色、キリッとした几帳面さとのびのびとしたフレージング、そしてクァルテットの限界とも思わせる素晴らしい迫力。録音も暗騒音以外は素晴らしい出来です。もちろん評価は全曲[+++++]です。弦楽四重奏曲が好きな方は必聴の素晴らしいアルバムです。
関連記事

2 Comments

There are no comments yet.

ライムンド

No title

Daisyさん、こんばんは。この3曲が入ったアルバムは廉価仕様で店頭でまだ見かけます。新譜当時もある程度評判になっていたのかもしれませんね。レヴューを読んで音源を復元できるというか、記憶がよみがえってくる描写で、やっぱりこれは良かったんだなと思えてきます。他にもハイドンのカルテットを録音していそうですが、何故かこの1枚だけが健在です(不思議なことに)。

  • 2011/11/14 (Mon) 00:43
  • REPLY

Daisy

Re: No title

ライムンドさん、おはようございます。
このアルバムを聴くと、ウィーンフィルの弦楽セクションの優秀さの秘密がわかるようですね。これだけ朗々とした音色と正確無比なテンポ、素晴らしい推進力、どれをとっても素晴らしいものです。これ以外にもハイドンの録音があったと聞くと、やはり聴いてみたくなりますね。

  • 2011/11/14 (Mon) 05:50
  • REPLY