ウルブリヒ四重奏団のOp.20
今日はラックの片付けをしていて見つけた名盤。

ウルブリヒ四重奏団(Ulbrich-Quartett)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.4、No.5、No.6を収めたアルバム。収録はHMV ONLINEやネットの情報では1970年4月、ドレスデンの聖ルカ教会でのセッション録音とのこと。手元のアルバムにはPマークが1973年とだけ記されています。レーベルは旧東独のETERNA。このアルバム自体はおそらく廃盤で、DENONからOp.20の2枚組でリリースされています。

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手元にはOp.20のNo.1、No.2、No.3のアルバムもありますが、今日は後半の3曲を収めたアルバム。
ウルブリヒ四重奏団についてはネットにもあまり情報がありません。手元のアルバムを廉価盤のため、英語などによる曲の解説のみで演奏者については一切触れられていません。メンバーはシュターツカペレ・ドレスデンのメンバーとのことで、現在正式なウェブサイトが見つからないことを考えるともう活動はしていないのではないでしょうか。このアルバムの演奏時のメンバーは下記のとおり。
第1ヴァイオリン:ルドルフ・ウルブリヒ(Rudolf Ulbrich)
第2ヴァイオリン:ウォルフガング・ビュロー(Wolfgang Bülow)
ヴィオラ:ヨアヒム・ツィンドラー(Joachim Zindler)
チェロ:クレメンス・ディルナー(Clemens Dillner)
Hob.III:34 / String Quartet Op.20 No.4 [D] (1772)
直接音中心ながら音の合間に教会らしい長めの余韻がうっすらと聴こえるなかなか良く考えられた録音。ざらっとした音色の極めて折目正しい正統派の演奏。この曲のうら悲しくも構成感に溢れたメロディをじっくり描いて行きます。1楽章の入りはじっくりしたテンポで丁寧にフレーズを奏で、しかも要所の強奏部分では十分鮮烈な響きでクッキリとメリハリをつけます。強弱をかなりはっきりつけ中間がない感じ。ヴァイオリン主体ではなく4人が完全に同等の緊密なアンサンブル。凛とした整然さ、妥協のない磨き込み、冷静さを失わない完璧なコントロール。孤高の響きを楽しみます。
2楽章もじっくりとしたフレージングで孤独感が際立つような演奏。輝きやダイナミックさとは対極にある賽の河原の景色のような独特な風情。風車がカラカラまわる恐山の宇曽利湖を思い出します。ただ独特なだけでなく張りつめた緊張感もあり、この曲の極北の姿を見せているよう。素晴らしい完成度。
メヌエットはリズムを楽しむように弾むフレージングが独特。2分ほどの極端に短い楽章ですが、全体の中での箸休めのような位置づけでしょう。一定のリズムでじっくりとフレーズを溜めて弾き進めていきます。
フィナーレはスピード、起伏、機知の坩堝のような見事な演奏。突き抜けるようなキレの良さ。抜群のテクニックでフィナーレの複雑な音符を自在に表現。もはや痛快といえるような素晴らしい演奏。最後は非常に印象的にすっと音楽を止める終わり方。
Hob.III:35 / String Quartet Op.20 No.5 [f] (1772)
Op.20のなかの唯一の短調の曲。このクァルテットの特徴である孤高の響きがじわじわと心に迫ってきます。前曲のフィナーレのテクニックのショーピースのような演奏から一転、流麗なメロディを切々と奏でていき、純粋の曲の美しさで聴かせる余裕があります。独特の音色はなんとなくヴィオラの豊かな響きにあるような気がします。
この曲は2楽章がメヌエット。メヌエットも過度なメリハリはつけず、朗々とフレーズを重ねて行くのみ。曲の美しさを知っての確信犯的演奏でしょう。淡々と繰り返し奏でられるメロディーラインが心に刻まれて行きます。
そのまま淡々とアダージョに入り、フレーズのコントロールはデリケートさを増し、ガラス細工のような繊細な表情を魅せるようになります。最後は間を生かした詠嘆。
フィナーレに入るとアンサンブルが一気に緊密になります。最後のクライマックスとばかりに力も入ります。
Hob.III:36 / String Quartet Op.20 No.6 [A] (1772)
最後のNo.6。今度はリズムの軽さを意図したのでしょうか、明るい曲調の曲を、非常に軽いタッチで弾いて行きます。音色に一貫性はあるものの、良く聴くと曲によって演奏の主眼を変えてきています。1楽章のコミカルなメロディーをどう表現するといいかを良く考えた演奏スタイルと感じます。ヴァイオリンの美しく輝く音色が際立ちます。
つづくアダージョは歌うフレーズが抜群。やはり曲の本質を見極めた演奏。ここでもヴァイオリンの美しさが際立ちます。妙齢の透き通るような肌の薄化粧の美人のような存在感。
メヌエットは他のクァルテットではもう少し力感を表現するのでしょうが、ウルブリヒは音色で力感を表現するような粋な感じがします。良くキレたリズムと美しい弦楽器の音色が沁みます。
フィナーレは軽々とリズムを刻みフーガの混沌を徐々に深め、最後に大鉈を震うような渾身のフォルテで終わります。
ほんとは1、2曲を取りあげて終わろうと思ったのですが、思わず3曲を聴きとおしてしまうくらいに素晴らしい演奏。現代楽器によるOp.20の決定盤とさえ思わせる素晴らしい完成度です。詩的に感じるほど美しい瞬間があると思えば、No.4の終楽章のように吹き抜けるような素晴らしいテクニックを魅せる瞬間もあり、クァルテットの多彩な楽しさを伝える名演奏です。No.5で聴かれた一貫した音楽の深さも素晴らしいものがあります。評価はもちろん3曲とも[+++++]です。
このアルバムも昔ちょい聴きしたままラックに長らく眠っておりました。アルバムはやはり聴いてこそ価値がありますね。弦楽四重奏が好きなすべての方におすすめできる素晴らしいアルバムです。

ウルブリヒ四重奏団(Ulbrich-Quartett)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.4、No.5、No.6を収めたアルバム。収録はHMV ONLINEやネットの情報では1970年4月、ドレスデンの聖ルカ教会でのセッション録音とのこと。手元のアルバムにはPマークが1973年とだけ記されています。レーベルは旧東独のETERNA。このアルバム自体はおそらく廃盤で、DENONからOp.20の2枚組でリリースされています。

HMV ONLINE
手元にはOp.20のNo.1、No.2、No.3のアルバムもありますが、今日は後半の3曲を収めたアルバム。
ウルブリヒ四重奏団についてはネットにもあまり情報がありません。手元のアルバムを廉価盤のため、英語などによる曲の解説のみで演奏者については一切触れられていません。メンバーはシュターツカペレ・ドレスデンのメンバーとのことで、現在正式なウェブサイトが見つからないことを考えるともう活動はしていないのではないでしょうか。このアルバムの演奏時のメンバーは下記のとおり。
第1ヴァイオリン:ルドルフ・ウルブリヒ(Rudolf Ulbrich)
第2ヴァイオリン:ウォルフガング・ビュロー(Wolfgang Bülow)
ヴィオラ:ヨアヒム・ツィンドラー(Joachim Zindler)
チェロ:クレメンス・ディルナー(Clemens Dillner)
Hob.III:34 / String Quartet Op.20 No.4 [D] (1772)
直接音中心ながら音の合間に教会らしい長めの余韻がうっすらと聴こえるなかなか良く考えられた録音。ざらっとした音色の極めて折目正しい正統派の演奏。この曲のうら悲しくも構成感に溢れたメロディをじっくり描いて行きます。1楽章の入りはじっくりしたテンポで丁寧にフレーズを奏で、しかも要所の強奏部分では十分鮮烈な響きでクッキリとメリハリをつけます。強弱をかなりはっきりつけ中間がない感じ。ヴァイオリン主体ではなく4人が完全に同等の緊密なアンサンブル。凛とした整然さ、妥協のない磨き込み、冷静さを失わない完璧なコントロール。孤高の響きを楽しみます。
2楽章もじっくりとしたフレージングで孤独感が際立つような演奏。輝きやダイナミックさとは対極にある賽の河原の景色のような独特な風情。風車がカラカラまわる恐山の宇曽利湖を思い出します。ただ独特なだけでなく張りつめた緊張感もあり、この曲の極北の姿を見せているよう。素晴らしい完成度。
メヌエットはリズムを楽しむように弾むフレージングが独特。2分ほどの極端に短い楽章ですが、全体の中での箸休めのような位置づけでしょう。一定のリズムでじっくりとフレーズを溜めて弾き進めていきます。
フィナーレはスピード、起伏、機知の坩堝のような見事な演奏。突き抜けるようなキレの良さ。抜群のテクニックでフィナーレの複雑な音符を自在に表現。もはや痛快といえるような素晴らしい演奏。最後は非常に印象的にすっと音楽を止める終わり方。
Hob.III:35 / String Quartet Op.20 No.5 [f] (1772)
Op.20のなかの唯一の短調の曲。このクァルテットの特徴である孤高の響きがじわじわと心に迫ってきます。前曲のフィナーレのテクニックのショーピースのような演奏から一転、流麗なメロディを切々と奏でていき、純粋の曲の美しさで聴かせる余裕があります。独特の音色はなんとなくヴィオラの豊かな響きにあるような気がします。
この曲は2楽章がメヌエット。メヌエットも過度なメリハリはつけず、朗々とフレーズを重ねて行くのみ。曲の美しさを知っての確信犯的演奏でしょう。淡々と繰り返し奏でられるメロディーラインが心に刻まれて行きます。
そのまま淡々とアダージョに入り、フレーズのコントロールはデリケートさを増し、ガラス細工のような繊細な表情を魅せるようになります。最後は間を生かした詠嘆。
フィナーレに入るとアンサンブルが一気に緊密になります。最後のクライマックスとばかりに力も入ります。
Hob.III:36 / String Quartet Op.20 No.6 [A] (1772)
最後のNo.6。今度はリズムの軽さを意図したのでしょうか、明るい曲調の曲を、非常に軽いタッチで弾いて行きます。音色に一貫性はあるものの、良く聴くと曲によって演奏の主眼を変えてきています。1楽章のコミカルなメロディーをどう表現するといいかを良く考えた演奏スタイルと感じます。ヴァイオリンの美しく輝く音色が際立ちます。
つづくアダージョは歌うフレーズが抜群。やはり曲の本質を見極めた演奏。ここでもヴァイオリンの美しさが際立ちます。妙齢の透き通るような肌の薄化粧の美人のような存在感。
メヌエットは他のクァルテットではもう少し力感を表現するのでしょうが、ウルブリヒは音色で力感を表現するような粋な感じがします。良くキレたリズムと美しい弦楽器の音色が沁みます。
フィナーレは軽々とリズムを刻みフーガの混沌を徐々に深め、最後に大鉈を震うような渾身のフォルテで終わります。
ほんとは1、2曲を取りあげて終わろうと思ったのですが、思わず3曲を聴きとおしてしまうくらいに素晴らしい演奏。現代楽器によるOp.20の決定盤とさえ思わせる素晴らしい完成度です。詩的に感じるほど美しい瞬間があると思えば、No.4の終楽章のように吹き抜けるような素晴らしいテクニックを魅せる瞬間もあり、クァルテットの多彩な楽しさを伝える名演奏です。No.5で聴かれた一貫した音楽の深さも素晴らしいものがあります。評価はもちろん3曲とも[+++++]です。
このアルバムも昔ちょい聴きしたままラックに長らく眠っておりました。アルバムはやはり聴いてこそ価値がありますね。弦楽四重奏が好きなすべての方におすすめできる素晴らしいアルバムです。
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