作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ザロモン四重奏団のOp.74のNo.2、騎士(ハイドン)

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今日は古楽器の弦楽四重奏。

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ザロモン四重奏団(The Salomon String Quartet、のちにThe Salomon Quartet)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.74のNo.2とNo.3「騎士」の2曲を収めたアルバム。 収録は1983年11月18日~19日、どこで収録されたかは記されていません。レーベルはロンドンのhyperion。

ザロモン四重奏団のアルバムは何枚かもっているのですが、このアルバムは手元にありませんでした。最近ディスクユニオンで見かけて手に入れたもの。今月は弦楽四重奏曲を集中的に取りあげてはいますが、古楽器のアルバムを取りあげていなかったので、ちょうど良いとばかりに今日はこのアルバムを取りあげました。

ザロモン四重奏団は1982年に設立されたクァルテット。なんでも、英国で最初の古楽器によるクァルテットだそうです。このアルバムの録音は1983年なので設立間もない録音。クァルテットにとってハイドンは最初に挑むべき作曲家でしょう。メンバーは以下のとおり。

第1ヴァイオリン:サイモン・スタンデイジ(Simon Standgage)
第2ヴァイオリン:ミカエラ・コンベルティ(Micaela Comberti)
ヴィオラ:トレヴァー・ジョーンズ(Trevor Jones)
チェロ:ジェニファー・ウォード・クラーク(Jennifer Ward Clarke)

サイモン・スタンデイジは古楽器のヴァイオリニストとしては有名な人なのでご存知の方も多いでしょう。1941年生まれのイギリスのヴァイオリニストで1972年にデビュー後、トレヴァー・ピノックのイングリッシュ・コンソートの創設メンバーとなり、その後このザロモン四重奏団を創設、以後ホグウッドのエンシェント管弦楽団(The Academy of Ancient Music)、リチャード・ヒッコクスとともにコレギウム・ムジクム90を創設、最近ではマンフレート・フスのハイドン・シンフォニエッタ・ウィーンとも共演するなど、古楽器オケの隆盛を支えてきた人ですね。私はホグウッドとのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集の凛とした古楽器らしいヴァイオリンの音色が印象に残っています。

そのスタンデイジが第1ヴァイオリンを務めるザロモン四重奏団のハイドンのクァルテットはやはり古楽器の凛とした緊張感が支配する音楽です。

Hob.III:73 /String Quartet Op.74 No.2 [F] (1793)
冒頭から古楽器特有の鋭い音のヴァイオリンを中心としたアンサンブル。弦楽器の胴鳴りよりも弦の鋭い響きを中心とした響き。録音は直接音を中心としたダイレクト感溢れる音で残響は少なめ。スピーカーの前にクァルテットが並ぶようなリアリティの高いもの。この曲のユニークメロディーをコミカルに描くのではなく、速めのテンポとザクザク刻むような迫力ある演奏。同じ曲でも演奏によって見せる表情がだいぶ変わります。チェロも胴鳴りより輪郭がクッキリとした響き。途中から休符を印象的に長くとり、予想以上の踏み込んだ表現を聴かせます。
2楽章のアンダンテ・グラツィオーソは一転して穏やかな表情。古楽器の音色の雅な側面にスポットライトが当たります。素朴なメロディを訥々と奏でていくことで孤高の境地を表現。
メヌエットも抑え気味。骨格よりもメロディーラインの美しさを重視したメヌエット。歌うメヌエットという感じ。
フィナーレはこの前コダーイ四重奏団のこの曲を取りあげた際にネコが鼠を追いかけているような曲と例えたんですが、ザロモン四重奏団の演奏ではもう少しフォーマルな印象。コミカルなメロディに変わりないんですが、そのメロディを素晴らしいテクニックで自在に変化させ、抜群の起伏と表現の限りを尽くした素晴らしい演出。最後のクライマックスの盛り上がりは素晴らしいですね。クァルテットにも関わらず突き抜けた迫力。

Hob.III:74 / String Quartet Op.74 No.3 "Reiterquartetett" 「騎士」 [g] (1793)
いきなり大迫力のタイトな響き。古楽器であることを忘れてさせるような広大なダイナミックレンジ。抑えた部分と強奏部分の対比が痛快。フレーズごとに丁寧に表情をつけて曲の骨格をきっちり描いて行きます。切り込む部分と流れるような部分を絶妙に組み合わせて抜群の立体感を表現。音響は前曲同様非常にリアリティのある録音なので、曲のみりょくがカッチリと浮かび上がります。成熟したハイドンの筆致が見事に表現されています。今更ながらザロモン四重奏団の迫力に圧倒される楽章。
2楽章のラルゴ・アッサイはゆったりとしたメロディーをピタリと息のあったアンサンブルがじっくり描いて行きます。すべてのメンバーのボウイングも呼吸もデュナーミクもすべてそろった完璧な演奏。遅めのメロディを丹念に起伏をつけて弾いているので、息を合わせるのはかなりの練習が必要なことと想像できます。この楽章も神憑ったような完璧なアンサンブル。
前曲同様、構成感よりも流麗さを意識したメヌエット。この曲では1楽章、2楽章の緊張をほぐすようなさりげなく素朴な演奏。ほどほどの立体感と緊張感。
フィナーレも軽めに入りますが、一音一音の伸びが素晴らしいので聴き応え十分。抑えながら楔のように入る強音のキレを際立たせます。有り余るテクニックと音楽性でハイドンの名曲を自在に料理した名演奏と言えるでしょう。

久しぶりに聴いたザロモン四重奏団のOp.74。やはりスタンデイジの絶妙なヴァイオリンがポイントでしょうか。評価は両曲とも[+++++]とします。以前に聴いた印象よりだいぶ鮮烈なものでした。これは意図してザロモン四重奏団のハイドンの演奏をコンプリートしなくてはなりませんね。未入手盤をメモして捕獲候補リストに入れましょう。
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