作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

コダーイ四重奏団のOp.74(ハイドン)

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弦楽四重奏曲を古いものでいろいろ聴いてきましたが、今日は有名盤。

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コダーイ四重奏団(Kodály Quartet)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.74のNo.1、No.2、No.3の3曲を収めたアルバム。収録は1989年10月21日から23日にかけて、ブダペストのフンガロトンスタジオでのセッション録音。レーベルは廉価盤復興の祖、NAXOS。今日はこのなかからOp.74のNo.1とNO.2の2曲を取りあげます。

ご存知のようにNAXOSからリリーズされ続けたハイドンの弦楽四重奏曲のシリーズは25枚になり、現在は全集としてまとめて発売されています。全集はこちら。

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私の手元のアルバムはもちろんバラの方です。場所をとるので全集に買い替えてもいいのですが、このシリーズはハイドンゆかりの肖像画が各アルバムにちりばめられており、廉価盤ながら妙にコレクション欲をかき立てる企画。上の写真のOp.74のアルバムの表紙はヨハン・ペーター・ザロモン。ハイドンをロンドンに招聘した音楽興行師ですが、もともと弦楽四重奏でヴァイオリンを弾いたり作曲家としても活躍ていた人とのこと。ハイドンがロンドンで作曲した93番以降の交響曲がザロモンセットと呼ばれるのはもちろん彼が作曲を依頼したことから来たものです。

演奏者のコダーイ四重奏団は1965年にハンガリーのブダペストで設立されたクァルテット。メンバーはブダペストのフランツ・リスト・アカデミーの出身者。当初はSebestyén Quartetと名乗っていたが1969年よりハンガリー出身の大作曲家ゾルタン・コダーイの名を冠してコダーイ四重奏団と名乗るようになったとのこと。コダーイ四重奏団はNAXOSにおいてハイドン、ベートーヴェン、シューベルトの弦楽四重奏曲の全集を担当する等、レーベルの重責を担っています。私もNAXOSのアルバムを通してはじめて聴いたクァルテットですが、自然なソノリティと虚心坦懐な表現がハイドンの弦楽四重奏曲の無垢な魅力をつたえる素晴らしい演奏。

このアルバム録音時のメンバーは以下のとおり。

第1ヴァイオリン:アッティラ・ファルヴェイ(Attila Falvay)
第2ヴァイオリン:タマーシュ・ザボ(Támas Szabó)
ヴィオラ:ガボール・フィアス(Gabor Fias)
チェロ:ヤーノシュ・デヴィッチ(János Devich)

もちろん現在も活動していますが、第1ヴァイオリンのファルヴェイ以外は入れ替わっているようですね。オフィシャルサイトへのリンクも張っておきましょう。

Kodály Quartet(英文)

今日選んだアルバムは最近良く聴くOp.74です。

Hob.III:72 / String Quartet Op.74 No.1 [C] (1793)
冒頭からこのクァルテットの特徴である自然なソノリティの演奏。テンポは中庸、4人のアンサンブルも息が合っていて緊密。強いて上げれば第1ヴァイオリンのファルヴェイの少し糸を引くようなフレージングに特徴があるでしょうか。音階のきざみに擦弦楽器であることを示すがごとく少し練りがあるという感じ。それ以外は極めてオーソドックスな教科書的演奏。ハイドンの弦楽四重奏を楽しむには標準的な演奏。ピアノソナタにおけるオルベルツの演奏のような基準点の演奏というのがふさわしいもの。決して個性的ではありませんので聴き飽きない演奏と言えるでしょう。録音もスタジオ録音としては標準的。十分に音楽に浸ることができます。
2楽章のアンダンティーノは非常にさっぱりとした表現。淡々とメロディーを刻むうちに徐々に音楽の魅力に包まれるような演奏。後半に行くに従って表現が深まるのが手に取るようにわかる演奏。4人の音色もそろっていてメロディーの受け渡しの妙を楽しめます。
3楽章のメヌエットになると、ちょっとアンサンブルの粗さが垣間見える部分がありますが音楽は破綻なく流れます。メヌエットは古のいろいろな演奏の抜群の起伏と演奏を聴いた耳からすると若干単調さも感じなくはありませんが、これは致し方ないところ。
フィナーレはもしかしたらテンポはすこし遅めかもしれません。迫力は十分ながら、この楽章も歴代のキレまくった素晴らしい演奏が耳にのこっているため、速いパッセージの技術的な部分ではすこしまどろっこしさも感じさせる部分があるのが正直なところ。ただ、これもクァルテットを聴く醍醐味でもあり、不思議と音楽的な不満はあまりなく、逆に曲のスリリングさの魅力と写ります。最後はびしっと決めて終了。聴く側の成熟でしょうか(笑)。 総じてオーソドックスないい演奏という印象の範疇です。

Hob.III:73 /String Quartet Op.74 No.2 [F] (1793)
ユニークな旋律からはじまる曲。1楽章はその主題の変奏が様々に料理されるのを楽しめと言われているような技巧を尽くしたように聴こえる曲。コダーイ四重奏団の演奏は非常に安定しており曲ごとのムラがすくないのが素晴らしいですね。どの曲を聴いても彼らの虚心坦懐な作法が楽しめるので安心して気ことが出来ます。この曲も程よい緊張感と良い意味でこだわりのない淡々とした演奏によってハイドンの音楽の妙を楽しむことができます。
2楽章のアンダンテ・グラツィオーソはシンプルな曲調でかえってファルヴェイのヴァイオリンの美音が際立ちます。ヴィオラもチェロもそれぞれ音階を丁寧にあつかって雰囲気を盛り上げます。なぜか枯淡の表情さえ感じさせます。
メヌエットはもしかしたコダーイのちょっとした弱点かもしれません。自然な演奏ながらわかりやすさがかえって単調さを感じさせてしまうような印象も残してしまいます。
フィナーレも非常に個性的なメロディー、ネコが鼠を追いかけているがごときコミカルなもの。手作りの音楽のような素朴な印象を与えながら、適度に緊密なアンサンブルでハイドンの機知に富んだ音楽を弾き進めて行きます。ハイドンの楽譜は徐々に表現の幅を広げ、クライマックスに向けた盛り上がりと機知を降りまぜ最後まで飽きさせません。コダーイの演奏も指示通りにこなして行きびしっと最後は決めて終了。

廉価盤の雄、NAXOSレーベルの看板アーティストであるコダーイ四重奏団のハイドンのOp.74の2曲は、彼らの素朴な良さを感じさせる、じわりと良さがつたわるアルバムでした。評価は両曲とも[++++]とします。このあとは名曲「騎士」が収められているんですが、そちらはまたの機会に。
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