エオリアン弦楽四重奏団のOp.74のNo.1(ハイドン)

前記事のタートライ四重奏団の記事を読んで、次はこれが来るだろうと予想できた方、事情通です(笑)
やはり古くから親しまれているハイドンの弦楽四重奏曲ですが、いまだ取りあげていないクァルテットです。長らくリリースされ続けているものには、それなりの良さがあるんです。

AeolianSQ.jpg
HMV ONLINEicon(別装丁盤)/ amazon

エオリアン弦楽四重奏団(The Aeolian String Quartet)によるハイドンの弦楽四重奏曲全集。今日はその中からOp.74のNo.1を取りあげます。収録は1972年12月から1973年5月にかけて、ロンドンのサウスバンクにあるセント・ジョージ教会でのセッション録音。レーベルはLONDON。

エオリアン弦楽四重奏団は1927年に創設された、非常に歴史の古いクァルテット。当初はストラットン四重奏団(Stratton Quartet)という名前でしたが1940年代終わりにエオリアン弦楽四重奏団と名前を変え、1981年に解散しています。この演奏当時のメンバーは以下のとおり。

第1ヴァイオリン:エマニュエル・ハーウィッツ(Emanuel Hurwitz)
第2ヴァイオリン:レイモンド・キーンリーサイド(Raymond Keenlyside)
ヴィオラ:マーガレット・メイジャー(Margaret Major)
チェロ:デレク・シンプソン(Derek Simpson)

第1ヴァイオリンのエマニュエル・ハーウィッツは1919年生まれのイギリスのヴァイオリニスト。ロンドンの王立音楽アカデミーでブロニスラフ・フーバーマンに認められ、奨学生となっていました。1937年にジョージ・セル率いるスコットランド国立管弦楽団、翌年にはトーマス・ビーチャム率いるロンドンフィルのメンバーとなり腕を磨きました。その後自身でクァルテットを設立して活動する傍ら、様々なオケで活動し、なかでもジュリーニ、クレンペラーが率いたニュー・フィルハーモニア管弦楽団のゲスト・リーダーとして2シーズンに渡って活動したことがその後の彼の音楽に影響しているとのこと。そして1970年にエオリアン弦楽四重奏団に招かれ、第1ヴァイオリンとして活躍しました。エオリアン弦楽四重奏団は1981年に解散し、ハーウィッツは2006年に亡くなっています。

エオリアン弦楽四重奏団のハイドンの弦楽四重奏曲全集も古くから聴かれているアルバムですが、鋼のような硬質な音色の硬派な演奏というイメージです。今回調べてみるとOp.2、Op.71、Op.74のみが1972年12月から1973年5月の録音で、他の曲は1973年8月から1976年12月の録音。録音会場も異なります。ということで、エオリアン弦楽四重奏団のハイドンの録音では初期の録音にあたるOp.74を選んだ次第です。

一聴して教会での録音らしく、残響が豊かで、音場も立体感があり、他の録音の激オンマイクの鋼のような響きとは異なります。

Hob.III:72 / String Quartet Op.74 No.1 [C] (1793)
他の曲とは異なり、瑞々しい入り。極めてクリアながら、響きの要所が集中している感じ。ヴァイオリンパートのクッキリした表情が印象的なのは言うまでもありませんが、アンサンブル全体が引き締まって素晴しい一体感。響きに余裕があるんですが、締まるところは締まってびしっとタイト。1楽章はかなりの彫り込み。
2楽章のアンダンティーノ・グラツィオーソはリズムをかなり抑えて、メロディーを浮かび上がらせます。リズムパートをクッキリと演出する演奏も多いなか、この演出は貴重。リズムを抑える事で浮かび上がるセンチメンタルな感情。この辺のバランスのコントロールは聴かせどころをどこに置くかでかなりの裁量がありますね。
メヌエットは響きはクリアながら、音楽的インパクトは抑え気味で、クッキリした表情がクリアに響きますが、間つなぎといった感じ。力を抜いて音楽が軽やかに進行します。ハイドンのメヌエットは曲のなかでの位置づけの工夫のしどころですが、この演奏ではかなり手慣れた扱い。このさっぱりとした表現も悪くありません。
そしてフィナーレも演奏し慣れた手堅いもの。ヴァイオリンがくっきりとフレーズを刻みますが、気負った部分はなく、手慣れたなかでの適度なメリハリ。適度な盛り上がりと適度な緊張感。ハイドンのクァルテットに必要なものはすべてそろって、しなやかにまとまります。安心して聴ける演奏です。

ハイドンの弦楽四重奏曲全集をいち早く完成させたエオリアン四重奏団の演奏ですが、演奏のタイトさはイメージ通りながら、録音は全体のなかでは早い時期のもので、慣れ親しんだダイレクトな響きとは異なり、少し余裕のあるもの。演奏の方もそれを踏まえて少し余裕が増しています。引き締まった表情は安心して聴けるものでした。評価は[++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.74

コメントの投稿

非公開コメント

No title

Daisyさん こんにちは。
タートライSQに続き、こちらも取り上げた事がなかったのがやはり意外です。
当時日本でこのCD全集が発売された時は踊りました。箱には当時のまま、24枚組24800円という帯が付いています。それにしても今は安く手に入るようになりましたね。ただ、最近は、作品3の6曲が全集から除外されてしまっているようですけど。せっかく全集として録音されているのだから、完全な全集として販売すべきだと思っています。
作品74から後の作品は、ハイドン円熟の極み。どれをとっても名曲であり、それにふさわしい演奏も数ありますが、やはりエオリアンの演奏ははずせないですね。


Re: No title

Haydn2009さん、コメントありがとうございます。
タートライ、エオリアンともに以前はハイドンの弦楽四重奏曲全集の定番でしたね。ご指摘のように20枚組を超えるアルバム故、昔はかなりの値段で、買うにも勇気がいりました。タートライの方はバラを集めて箱に入れたボックスが手元にありますが、それこそ2万を超える値段がついており、買うのに逡巡した覚えがあります(笑)
どちらの全集も、聴き直してみると流石にハイドンの弦楽四重奏曲を全曲録音せんとするクァルテットだけあって、気合いが違いますね。最近ではいろいろな演奏で楽しめるようになってきましたが、タートライ、エオリアンともに今もその存在意義は変わらないと思います。久々に凛とした雰囲気を感じられました。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

最新記事
カテゴリ
ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものはリスト冒頭に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

登録曲数:1,365
登録演奏数:11,529
(2019年3月31日)
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ピアノ協奏曲XVIII:4軍隊ヒストリカル交響曲93番交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:11交響曲80番交響曲81番トランペット協奏曲ヴァイオリンとピアノのための協奏曲XVIII:6悲しみロンドンオックスフォードモーツァルト交響曲4番ヨハン・クリスチャン・バッハピアノソナタXVI:51豚の去勢にゃ8人がかりピアノ三重奏曲十字架上のキリストの最後の七つの言葉スカルラッティヘンデルラモーバッハ驚愕ショスタコーヴィチシェーンベルク弦楽四重奏曲Op.76ドヴォルザークベートーヴェン交響曲75番チェロ協奏曲ホルン協奏曲古楽器時計弦楽四重奏曲Op.50アンダンテと変奏曲XVIII:6弦楽四重奏曲Op.54弦楽四重奏曲Op.64弦楽四重奏曲Op.20天地創造ヴォルフレスピーギヨハン・シュトラウスリヒャルト・シュトラウスタリスリゲティ交響曲10番ピアノソナタXVI:49迂闊者交響曲54番ネルソンミサバリトン三重奏曲トマジーニピアノソナタXVI:52交響曲2番ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:46日の出皇帝弦楽四重奏曲Op.71交響曲88番ブルックナーベルリオーズナッセンベンジャミンウェーベルンメシアンシェルシグリゼーヴァレーズOp.20弦楽四重奏曲交響曲67番交響曲65番交響曲9番交響曲39番狩り交響曲73番交響曲61番リームピアノソナタXVI:6ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:48アンダンテと変奏曲XVII:6四季交響曲全集ラヴェルリムスキー・コルサコフピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:44ピアノソナタXVI:45第九太鼓連打交響曲99番ボッケリーニシューベルト交響曲5番ストラヴィンスキーチャイコフスキーライヴ弦楽四重奏曲Op.2序曲ヴィヴァルディオペラ序曲パイジェッロアリア集ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6すみだトリフォニーホールピアノソナタXVI:34ブーレーズサントリーホール弦楽四重奏曲Op.74騎士オルランド無人島哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ変わらぬまことアルミーダチマローザ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:1ピアノ協奏曲XVIII:3交響曲3番ラメンタチオーネアレルヤ交響曲79番チェロ協奏曲1番交響曲27番交響曲19番交響曲58番紀尾井ホールドビュッシーミューザ川崎協奏交響曲オーボエ協奏曲LPヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:38ピアノソナタXVI:29スタバト・マーテルピアノソナタXVI:39マーラー告別交響曲90番交響曲97番交響曲18番奇跡ひばりフルート三重奏曲交響曲102番交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者ミサブレヴィスニコライミサ小オルガンミサ交響曲95番交響曲78番ピアノソナタXVI:23王妃武満徹ライヴ録音SACDマリア・テレジア交響曲21番クラヴィコードBlu-ray東京オペラシティ交響曲11番交響曲12番交響曲15番交響曲37番交響曲1番ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:3ディヴェルティメント東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35ロッシーニドニぜッティライヒャ弦楽三重奏曲東京文化会館フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ピアノソナタXVI:26ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31アレグリバードモンテヴェルディパレストリーナ美人奏者ピアノ協奏曲XVIII:7アコーディオンスコットランド歌曲ヴェルナーガスマンピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲35番交響曲46番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナード五度ラルゴラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス時の移ろい交響曲42番ベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏冗談ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオモテットドイツ国歌カノンオフェトリウムよみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ベルク主題と6つの変奏オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲交響曲50番交響曲89番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生ピアノソナタXVI:47bisピアノ小品音楽時計曲ピアノソナタXVI:11カートリッジ雅楽プロコフィエフサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲91番交響曲66番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭変奏曲XVII:7ピアノソナタXVI:22天地創造ミサジャズ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲62番交響曲108番交響曲107番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽ピアノソナタ

タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
11 | 2019/12 | 01
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
87位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
10位
アクセスランキングを見る>>
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

大家さんFC2のクラシックブログランキング。

おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)






twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ