作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ライスキ/ポーランド室内管の王妃、雌鶏、狩

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今日も交響曲を1枚。最近手に入れた珍しいアルバム。

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ヴォイチェフ・ライスキ(Wojciech Rajski)指揮のポーランド室内フィルハーモニーの演奏でハイドンの交響曲85番「王妃」、83番「雌鶏」、73番「狩」の3曲を収めたアルバム。録音年の表記はなくPマークが1996年。レーベルはドイツのTACET。

あまり見たことのないジャケットですが、演奏者がポーランドということでディスクユニオンでみつけて手に入れました。ロシアもの、ポーランドもののハイドンには良い演奏が多いとのこれまでの経験からピンときたもの。勘はあたりましたね。これがなかなかの名演。

ヴォイチェフ・ライスキは全く知らない指揮者ですがこのアルバムのTACETレーベルではベートーヴェンの交響曲全集が出ていたり、これまでもかなりのアルバムがリリースされているところを見ると、かなりの実力者のようです。いつものように略歴を紹介しておきましょう。

ライスキは1948年ポーランドのワルシャワ生まれ。ワルシャワの音楽アカデミーとケルンの音楽大学で音楽を学んだ後、交換留学でウィーンに渡りマスタークラスに参加した。1971年から78年までワルシャワのグランド・シアターの音楽監督を担当し、同時にベルリンとワルシャワのほぼ中間に位置するポズナンのポズナン・フィルハーモニーの指揮者、首席指揮者を1980年まで務めた。また、ボンのベートーヴェン=ハレ管弦楽団の最初の指揮者となるなどドイツとポーランドを中心に活動を広げてきたよう。その後、チェコスロバキア、ハンガリー、当時のソ連、フランス、ギリシャ、ルクセンブルク、スウェーデン、メキシコなど各地のオケの客演指揮者として活躍、1993年からはポーランド放送交響楽団の首席指揮者の立場にある人。このアルバムのオケであるポーランド室内フィルハーモニーは1980年にライスキが設立したオケということです。

Hob.I:85 / Symphony No.85 "La Reine" 「王妃」 [B flat] (1785?)
キレのいい活気に富んだオーケストラ。小編成のオケでの演奏らしく、テンポ感よく鮮烈な演奏。弦楽器を中心に、すべての楽器がキビキビした演奏。フレージングが感情的になることはなく、器楽的、純音楽的な表情でハイドンの傑作交響曲のメロディーを淡々とそして清々しく描いていきます。アクセントの鋭さ、力強さ、推進力は見事の一言。ハイドンにはこういった演奏が似合います。基本的に非常に鮮明な録音。残響は長くはありませんが録音は自然でオケの各楽器の表情が手に取るようにわかるもの。
2楽章も同様、冒頭から抑えながらもクッキリとしたリズムで淡々とした表情を描いていき、そこはかとない静寂感も感じさせる見事なコントロール。ゆったりと力感を増して行きますが、見事な抑制で、気配のようなものを感じさせる鋭敏な感覚。中盤以降の流麗なメロディーの表現も秀逸。クッキリとしたリズムにビロードのような滑らかな表情の弦楽器のメロディーの対比が見事。後半のフルートのソロがクッキリ浮かび上がるところは鳥肌がたつよう。
メヌエットは予想に反して、ゆったりと色っぽい表情すら感じさせる落ち着いたもの。もう少しカッチリした表情でくると思いきや、さにあらず。メヌエットのあり方に対する独自の視点がありそうです。間と溜めを生かして自在にフレーズを刻むメヌエットが新鮮です。
フィナーレは鮮烈さを取り戻し、メヌエットの豊かな表情と1楽章のある意味険しいアクセントの止揚のような素晴らしい表現。フレーズに軽さがあり、複雑なフィナーレのメロディーがクリアに浮かび上がります。きりりと引き締まったアクセントに複数のメロディーが織りなす表情。1曲目から素晴らしい演奏です。

Hob.I:83 / Symphony No.83 "La Poule" 「雌鶏」 [C] (1785)
つづいて雌鶏。音響が少し変わり、高音に少し濁りを感じますが、基本的には前曲同様鮮明な録音。1楽章は快速テンポにクッキリしたアクセントが痛快。曲想も畳み掛けるようないつものフレーズが活き活きとした表情で浮かび上がります。速い部分の迫力が素晴らしいばかりではなく、抑えた部分をしっかり抑えきることで素晴らしい対比。
1楽章の素晴らしい推進力を冷ますような、癒しに満ちた2楽章のアンダンテ。ライスキの抑えた部分のコントロールはここでも見事。抑えているのにリズム感と色彩感が豊かなことに驚きます。フレーズのひとつひとつののメリハリが良く練られていて、フォルテッシモの迫力ではなく構成の巧みさで感じさせるダイナミックレンジ。
だんだん慣れてきたライスキのコントロール。メヌエットは柔らかく色っぽいという位置づけです。そしてフィナーレはこの曲でも総決算のような壮麗な演奏。軽さもキレもきちんと備わることで古典期の交響曲の枠の中で表現を極めた感じを残しています。

Hob.I:73 / Symphony No.73 "La Chasse" 「狩」 [D] (before 1782)
時代が少し遡って、ハイドンの交響曲の作曲技法が最後輝きを放つ前の穏やかな時代の曲。フィナーレが単独で良く取りあげられる曲。先日取りあげたヴァントの得意とする76番もそうでしたが、穏やかな曲想と晴朗なメロディーの魅力に溢れる曲。
1楽章は穏やかな序奏からはじまり、主題は晴朗快活な美しいメロディー。ライスキはだいぶ力が抜けて、穏やかな指揮ぶり。ここでもメロディーをクッキリとリズミカルに浮かび上がらせる手腕は見事。前2曲のパリセットからの交響曲ほど曲が凝ってない分、ライスキも指揮を楽しんでいるような優雅さ。
2楽章のアンダンテは、程よい抑えで進み、途中の転調が印象的。素朴な展開ゆえ力みはまったくなく、曲ごとに演奏スタンスをきちんと使い分けているよう。3楽章のメヌエットも穏やかな演奏。
そしてこの曲のハイライトのフィナーレ。流石ライスキ、抜群のコントロールで抜群のノリです。ここでもキリッとしたアクセントが健在。ホルンの号砲と弦楽器のさざ波が交互に押し寄せる快活な曲。これもハイドンの魅力を存分に感じさせる曲。基本的にオーケストラをキリッと鳴らすことにかけては素晴らしい腕前だけに、このような曲はうってつけでしょう。楽天的になりすぎることもなく節度も感じさせるところがが流石です。

はじめて聴くポーランドのヴォイチェフ・ライスキとその手兵ポーランド室内フィルハーモニーのハイドンは、オーケストレイションの見事さを浮き彫りにするスペクタクルな名演。演奏全体に歯切れのよい軽さを感じさせるのに、軽薄にならない芸術性も兼ね備えたなかなかの演奏。なんとなくポーランドのハイドンは良い演奏が多いという勘で手に入れたアルバムですが、的中です。評価は全曲[+++++]としました。

交響曲が続きましたので、そろそろ10月の集中取り組みテーマの弦楽四重奏曲に戻らなくてはなりませんね。
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