作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ジュリアード弦楽四重奏団のOp.74のNo.1、Op.77のNo.1(ハイドン)

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まだまだ続く、弦楽四重奏曲の特集。しかも古いものを集中的に取りあげています。

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ジュリアード弦楽四重奏団(Juilliard String Quartet)の演奏でモーツァルトの弦楽四重奏曲K.465「不協和音」、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.74のNo.1、Op.77のNo.1、シューベルトの弦楽四重奏曲D.703「四重奏断章」の4曲を収めたアルバム。ハイドンの収録はOp.74が1957年5月23日、24日、Op.77が同年5月27日、いずれもニューヨーク市庁舎でのセッション録音。レーベルはヒストリカル復刻の雄、TESTAMENT。

ジュリアード弦楽四重奏団は、ニューヨークのジュリアード音楽院の校長ウィリアム・シューマンにより、同音楽院の教授らによって1946年に結成された弦楽四重奏団。全メンバーが何度かかわっていますが、現在でも活動を継続しています。ウェブサイトはこちら。

Juilliard String Quartet(英文)

ハイドンの演奏当時の1957年頃のメンバーは以下のとおり。

第1ヴァイオリン:ロバート・マン(Robert Mann)
第2ヴァイオリン:ロバート・コフ(Robert Koff)
ヴィオラ:ラファエル・ヒリヤー(Raphael Hillyer)
チェロ:クラウス・アダム(Claus Adam)

このクァルテットの演奏は1957年とかなり古い録音にも関わらず、現代のクァルテットの演奏に近いシャープさのある緊密な演奏。アメリカのクァルテットらしいといえばいいでしょうか。

Hob.III:72 / String Quartet Op.74 No.1 [C] (1793)
この曲は前記事のアマデウス四重奏団でも聴いた曲。アマデウスが1956年の演奏なのでこの演奏と1年ほどしか違わない、ほぼ同時期の演奏。アマデウスの非常に濃い表情とは異なりかなり現代的でシャープな演奏と言う演奏に聴こえます。1楽章はキビキビとした速めのテンポとクリアなフレージング。そして透明感がありながら緊密な感じも与えるインターナショナルスタイルな演奏スタイル。アマデウスがかなりハッキリとした個性を感じる演奏なのに対し、ジュリアードはもっぱらタイトな演奏。インテンポで攻めながらもヴァイオリンの伸びのよいクリアな響きと4本の弦楽器の緊密な掛け合いの妙をたっぷり味わえます。非常に正統的は演奏。
2楽章はテンポを落とすところはじっくりと描きながらも規則正しいあっさりとした演奏。古いポルタメントたっぷりの演奏やアマデウスの濃い表情の演奏に耳が慣れたせいか、ジュリアードは逆に薄味に感じます。良く聴くとそれでもテンポを落とした部分表情付けなど十分豊かな表現ですが、全体的は印象は逆にすっきりとしています。
ジュリアードの特色が一番でているのが続くメヌエット。立体感というか構成感を見事に表現して、緊密ながら起伏の非常に大きいダイナミックな演奏。抑えた部分の静寂感と堂々とした印象のフレーズの対比が見事。曲の構造が非常によくわかる演奏。
フィナーレは1楽章同様スピーディーでタイトな演奏ですが、テクニックは見事の一言。素腹しいスピードでキレもこくもメリハリも抜群の演奏。鮮烈な演奏。

Hob.III:81 / String Quartet Op.77 No.1 [G] (1799)
ハイドンの創作の最後の時期の曲。前曲とほぼ同時期の演奏ながらヴァイオリンの音が揺らぎがちでちょっと落ち着きません。他の3人の演奏は前曲と変わらないタイトさがあるものの肝心のヴァイオリンが落ち着かないので印象を悪くしてしまいます。曲調にともなう枯れた感じの一環という狙いという可能性もありますが、やはりしっくりは来ません。
2楽章のアダージョは一層枯れた感じに。一人一人の奏者の演奏自体に侘び寂びのような印象を感じます。曲自体の本質をよく踏まえた演奏ということでしょう。構造的にはメリハリをきっちりつけていますので力強さもあります。チェロの非常に堅固な響きとヴァイオリンの伸びの良い音色の対比も見事。この楽章はヴァイオリンも落ち着いています。
メヌエットはやはりジュリアードならでは。曲想に合わせて表現の幅が広く起伏も十分。溜めを生かした深いフレージングが見事。
フィナーレは速弾きコンテストのような凄いスピードでヴァイオリンが唸ります。ちょっとテープを早回ししたような異常なスピード。前曲ではしっかりとした起伏とキレがあったんですが、この曲では速く弾く方に気をとられてしまっているような演奏。テクニックは見事ながら少々やり過ぎの感もあります。

有名どころジュリアード弦楽四重奏団のハイドンの弦楽四重奏曲の演奏でしたが、曲によるばらつきが出てしまったようです。Op.74のNo.1の方は気合いののった素晴らしい演奏。評価は[+++++]、一方Op.77のNo.1の方はそれに比べると万全の演奏ではありません。こちらは[+++]としておきましょう。

このところ弦楽四重奏の昔の名演奏を集中的に聴いていますが、短期間にいろいろ聴くことでクァルテットごとの個性もくっきり浮かび上がってきました。もうしばらく弦楽四重奏曲を多く取りあげて行きたいと思います。
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