作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のOp.64のNo.2

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10月に入り、仕事のオフィスのレイアウト変更やらなにやらで仕事が忙しく、なかなか更新がままなりません(涙)。今日は10月強化ジャンルの弦楽四重奏曲。

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ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団(Vienna Konzerthaus Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.64の、No.2、No.5「ひばり」、No.4の3曲を集めたアルバム。収録はNo.4のみ1954年3月、他の曲が1954年5月、ウィーンのコンツェルトハウスのモーツァルトホールにて。レーベルは日本のMCAビクターがWestminsterのアルバムを復刻したシリーズ。今日はOp.64のNo.2のみ取りあげます。

少し前の記事でカペー弦楽四重奏団を取りあげた時もリンクしましたが、この演奏はライムンドさんのブログで取りあげられ、その記事を読んだときから聴き直したいと思っていたアルバム。

今でもしぶとく聴いています:ハイドン 弦楽四重奏曲ひばり ウィーン・コンツェルトハウス

ウィーンコンツェルトハウス四重奏団は1934年、当時ウィーン交響楽団の団員だった、アントン・カンパーとチェロのフランツ・グヴァルダが中心になって前身のカンパー=クヴァルダ四重奏団を設立。1937年ウィーン・コンツェルトハウス協会との演奏契約を機にウィーン・コンツェルトハウス四重奏団と名乗るようになり、この年から翌年にかけてメンバーがウィーンフィルに移籍しました。以来ウィーン・コンツェルトハウスのシューベルトホールでの定期演奏やレコーディングとともに名声を得るようになった。この録音当時のメンバーは次のとおり。

第1ヴァイオリン:アントン・カンパー(Anton Kamper)
第2ヴァイオリン:カール・マリア・ティッツェ(Karl Maria Titze)
ヴィオラ:エーリッヒ・ヴァイス(Erich Weis)
チェロ:フランツ・グヴァルダ(Franz Kvarda)

このあと第2ヴァイオリンがヴァルター・ヴェラーに、ヴィオラも交代したが、1967年、アントン・カンパーの現役引退とともに四重奏団も解散となった。

聴くとわかりますが、古き良き時代の優雅なウィーンスタイルの演奏。ハイドンの弦楽四重奏曲が典雅に響きます。

今日はこのアルバムの中のNo.2はPREISER RECORDS盤にも収録されているため、こちらとの比較もしてみます。

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PREISER RECORDS盤は4枚組全3巻にわたる大部なもの。ただし、収録年とか時間などの情報が記載されておらず、所有盤リストでは収録年不明として末尾に記載しています。

今日取り上げる曲は何れも1790年の作曲。この年、ハイドンが長年仕えてきた君主ニコラウス・エステルハージ侯が亡くなり、30年にわたり暮らしてきたエステルハーザを離れてウィーンに移り、年末にはロンドンへ旅立つという激動の年。Op.64の6曲自体はトストのために書かれたようです。

Hob.III:68 / String Quartet Op.64 No.2 [b] (1790)
まずはWestminster盤から。カミソリのようにキレのいいアントン・カンパーのヴァイオリンの鮮明な響きからはじまります。ヒストリカルの録音らしいすこし饐えた音色ながら超鮮明な音響。ちょっと鮮明すぎて金属っぽい刺激成分が感じられる録音。ヴァイオリン以外は鮮明ながら硬質感はあまりありません。音楽の構成は程よく典雅なので昔のモノクロネガをちょっと硬調に焼いてしまったプリントの様な風情。音質と音楽のベクトルに少々ズレがあるような感じ。1楽章は畳み掛けるような緊張感に包まれた緊密な音楽。
2楽章に入ると鮮明な音響はそのままに正確な音程とリズムを刻むチェロの演奏に乗って、ヴァイオリンとヴィオラがゆったりとフレーズを刻んでいきます。ヴァイオリンの音色は引き締まりまくってタイトな響き。途中メロディをトレモロで表現する部分はさざ波のざわめきのような秀逸な表現でメリハリをつけます。ゆったりとしたメロディは一貫した堅固なもの。チェロのくっきり正確な演奏がこのアンサンブルの特徴になっていますね。
3楽章のメヌエットはかなり溜めを効かせた慎重な足取りで進みますが、途中からヴァイオリンの磨き抜かれた見事な旋律に圧倒されます。怪しいまでの輝きを見せる古白磁のような透徹具合。
フィナーレは一層タイトなフレージング。ウィーン風の優雅な響きではなく迫真のアンサンブルと言ったほうがいいでしょう。ここでも畳み掛けるようなインテンポでのせめぎ合いとじっくりと練るフレージングの使い分けが素晴らしい迫力。最後は消え入るように。

続いてPREISER RECORDS盤を聴いてみます。音質はかなり異なります。金属的なまでに鮮明さを追求したWestminster盤に対し、こちらは良く言えば自然で時代なりな音響、悪く言えば曇った感じに聴こえる音響。残響成分まで少し減ってしまったようなつまった感じがするものの、刺激的な響きはなくなり高音はかまぼこ型の分布で伸びはほどほど、
Westminster盤がワイドレンジだったのと対照的です。演奏はおそらく同じ演奏に聴こえます。どちらがいいかと聞かれると、正直迷いますが私はPREISER RECORDS盤を推します。Westminster盤の復刻はやり過ぎなんでしょう、両者の中間程度の音であれば、鮮明さを過度に意識することなく音楽に没入できそうです。音楽的にはPREISER RECORDS盤の方が楽しめると思います。Westminster盤には20bitK2 Super Codingとのロゴが付されていますが、この過度な鮮明さは穏やかな音楽の魅力を削いでいるように聴こえます。

この曲に関しては、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の演奏は典雅なウィーン風というより、かなり踏み込んだアンサンブルの妙味を聞かせる、迫真の演奏でしょう。評価は[++++]としました。Westminster盤の次の曲はライムンドさんが取りあげたひばり。ちょっと聞くとNo.2よりも穏やかな表情ゆえ、曲によってはかなり異なる印象もあるかもしれませんね。このあたりはまたの機会に迫ってみようと思います。
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9 Comments

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ライムンド

No title

Daisyさん、こんばんは。プライザーからも出ていたとは知りませんでした。このレーベルは、戦時中のヴァイロイト(マイスタージンガー、アーベントロート指揮)やホッターの冬の旅のCDで聴いて聴きやすい音質だと思っていました。「ひばり」は、フィナーレがプレストではなくヴィヴァーチェなので、リマスターによる音質の違いが目立つかも?しれないですね。

  • 2011/10/09 (Sun) 00:26
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Daisy

Re: No title

ライムンドさん、いつもコメントありがとうございます。
PREISER RECORDS盤ですが、Op.64の2はあるものの、ひばりは何と含まれていないんですね。記事に書いたように録音年もタイミングも表示されていないので、はたしてWestminster盤と同じ録音かどうかもよくわかりませんが私が聞く限り、Op.64の2は同じ演奏に聴こえるといったところです。ちょっと他の方のブログなどネットを見てみたのですが、その辺りに触れたものがなく(あんまりしっかり調べてませんが)、まだ、はっきりしないというのが正直なところです。確かに聴きやすい音質のものが多く、その辺にレーベルの良識が感じられますね。このPREISER RECORDS盤は手に入れたのはおそらく15年くらい昔です。当時は新星堂の店頭に日本語の帯をつけて売っていたもので、第1巻と第3巻は新星堂で、第2巻はたしか六本木WAVEで輸入盤を買ったように記憶しています。ご指摘のように古い録音が多いレーベルで、私もいろいろ持っているんですが、最新の録音にも素晴らしいものもあり、ネーメ・ヤルヴィの息子の一人(パーヴォの弟)のクリスチャン・ヤルヴィのハイドンのパリセット(http://haydnrecarchive.blog130.fc2.com/blog-entry-371.html)はおすすめの名演です。

  • 2011/10/09 (Sun) 09:06
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maro_chronicon

戎棋夷説の者です。

さっき中古屋さんでPREISER RECORDS盤を買ってきたところです。
店の方は「放送音源」とおっしゃってました。LPでは19枚組だったそうです。Westminster盤とは異なる、とのこと。
いまこのブログの記事を読み直して、店でもっと深く質問しておけばよかった、と後悔しております。

Daisy

Re: 戎棋夷説の者です。

maro_chroniconさん、コメントありがとうございます。
このアルバムのLP、確か1枚持ってるので聴こうと思って探しているのですが見つかりません(笑) 聴きたい時になかなか出てこないんですね。確か吉祥寺の新星堂で手に入れた記憶があります。

  • 2011/11/11 (Fri) 22:38
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maro_chronicon

Re: 戎棋夷説の者です。

あっちこっち検索すると、どのページも「1951年録音」となってますね。

  • 2011/11/12 (Sat) 09:21
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SAAGAR

聴き比べてみました

はじめまして。
私もハイドンの弦楽四重奏曲が好きで、ウィーン・コンツェルトハウスSQの演奏をよく聴いております。以前はベートーヴェンやモーツァルトやバルトークの弦楽四重奏曲ばかりに惹かれていましたが、ハイドンの音楽の懐の深さやユーモアが楽しくなると、これがまたかけがえのない宝の山に思えます。

ところでそのウィーン・コンツェルトハウスのウェストミンスター盤とPREISER盤について、これまであまり真剣に考えたことがなかったのですが、あらためて聴き比べてみました。
Op.64の2については違う演奏だと思います。ぱっと聴いた感じ、PREISER盤のほうが軽く、ウェストミンスターは表情が濃いな、と思いましたが、これだけでは説得力に欠けるのでミステリー小説の証拠探しのように聴いたところ、第3楽章のトリオ部分に入る直前(ウェストミンスター盤の1分36秒あたり)、ヴァイオリンの音が少しふらつき、さらに、トリオに入る前に少し間をとっています。
同じ箇所のPREISER盤は普通に演奏し、テンポも維持したままトリオに入ります。
音楽は本来こんな風に重箱の隅をつつくように聴くものではないと思いますが、気が向いたら確認してみて下さい。

ちなみに、「皇帝」も聴き比べましたが、PREISER盤では第1楽章の繰り返しを省略していて(したがって演奏時間も2分ちかく短いです)、こちらも違う演奏だと思います。

Daisy

Re: 聴き比べてみました

SAAGARさん、はじめまして。
このあたりの演奏は、同時代で聴かれた人にはなじみがあるのかもしれませんが、今となってはやはり過去の遺産の真贋判断のような感じになってしまいますね。どちらかというとPREISER盤を取り出しますが、PREISER盤も収録がバラバラで、出来ればOp.64なら64がまとまっていた方が聴きやすいですね。いずれにせよ古き良き時代の遺産。たまに取り出してのんびり聴くのが良いかと思ってます。ご指摘の点、今度聴き比べてみたいと思います。

  • 2012/05/05 (Sat) 23:12
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カワサキヤ

64-2といえば

op64-2、わたしは、第一楽章のあの出だしが、大好きです。勿論、アントン・カンパー率いるウィーンコンツェルトハウス四重奏団の両盤も良いですが、隠れた名盤として、LPしか出ていないコレギウム・アウレウム四重奏団のドイツ・ハルモニア・ムンディ 盤が挙げられます。例の指揮者なしの古楽器演奏のはしりとなった、しかし、現代の古楽器研究からすれば古楽器使用のロマン的演奏などと揶揄もされる団体。コンマスのフランツ・ヨゼフマイヤーが第一バイオリンと思います。録音がまた貴族的なガット弦の響きを鮮やかにとらえています。ちなみに、千住真理子さんは、かなり以前はヨゼフマイヤーが使用したバイオリンを使っていた時期があったのです。コレギウム四重奏団のハイドンは、副題つきの演奏は、ハルモニア・ムンディ50年か何かの折、CDになりましたが、64-2はまだみたい。幸松肇先生が大推薦の名盤なのですが。

  • 2016/02/01 (Mon) 23:32
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Daisy

Re: 64-2といえば

カワサキヤさん、コメントありがとうございます。

コレギウム・アウレウム四重奏団のCD化された皇帝、ラルゴ、日の出、五度を収めたアルバム、手元にあり、聴き直してみました。70年代後半の録音で、典雅でゆったりとロマンティックな演奏ですね。皇帝の2楽章など実に優雅です。このテイストでOp.64のNo.2はいいかもしれません。残響が多目の録音のせいか、くつろいで聴ける演奏であり、こうした演奏も時代を感じさせるものの、ハイドンのクァルテットの魅力の一面をつたえる貴重なものでしょう。LPも丁寧に探せば手に入りそうですので、メモしておきます。

こうしていろいろな情報をいただき、自分の視点ではない魅力を知るきっかけになります。いろいろありがとうございます。

  • 2016/02/02 (Tue) 00:40
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