ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のOp.64のNo.2

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ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団(Vienna Konzerthaus Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.64の、No.2、No.5「ひばり」、No.4の3曲を集めたアルバム。収録はNo.4のみ1954年3月、他の曲が1954年5月、ウィーンのコンツェルトハウスのモーツァルトホールにて。レーベルは日本のMCAビクターがWestminsterのアルバムを復刻したシリーズ。今日はOp.64のNo.2のみ取りあげます。
少し前の記事でカペー弦楽四重奏団を取りあげた時もリンクしましたが、この演奏はライムンドさんのブログで取りあげられ、その記事を読んだときから聴き直したいと思っていたアルバム。
今でもしぶとく聴いています:ハイドン 弦楽四重奏曲ひばり ウィーン・コンツェルトハウス
ウィーンコンツェルトハウス四重奏団は1934年、当時ウィーン交響楽団の団員だった、アントン・カンパーとチェロのフランツ・グヴァルダが中心になって前身のカンパー=クヴァルダ四重奏団を設立。1937年ウィーン・コンツェルトハウス協会との演奏契約を機にウィーン・コンツェルトハウス四重奏団と名乗るようになり、この年から翌年にかけてメンバーがウィーンフィルに移籍しました。以来ウィーン・コンツェルトハウスのシューベルトホールでの定期演奏やレコーディングとともに名声を得るようになった。この録音当時のメンバーは次のとおり。
第1ヴァイオリン:アントン・カンパー(Anton Kamper)
第2ヴァイオリン:カール・マリア・ティッツェ(Karl Maria Titze)
ヴィオラ:エーリッヒ・ヴァイス(Erich Weis)
チェロ:フランツ・グヴァルダ(Franz Kvarda)
このあと第2ヴァイオリンがヴァルター・ヴェラーに、ヴィオラも交代したが、1967年、アントン・カンパーの現役引退とともに四重奏団も解散となった。
聴くとわかりますが、古き良き時代の優雅なウィーンスタイルの演奏。ハイドンの弦楽四重奏曲が典雅に響きます。
今日はこのアルバムの中のNo.2はPREISER RECORDS盤にも収録されているため、こちらとの比較もしてみます。

PREISER RECORDS盤は4枚組全3巻にわたる大部なもの。ただし、収録年とか時間などの情報が記載されておらず、所有盤リストでは収録年不明として末尾に記載しています。
今日取り上げる曲は何れも1790年の作曲。この年、ハイドンが長年仕えてきた君主ニコラウス・エステルハージ侯が亡くなり、30年にわたり暮らしてきたエステルハーザを離れてウィーンに移り、年末にはロンドンへ旅立つという激動の年。Op.64の6曲自体はトストのために書かれたようです。
Hob.III:68 / String Quartet Op.64 No.2 [b] (1790)
まずはWestminster盤から。カミソリのようにキレのいいアントン・カンパーのヴァイオリンの鮮明な響きからはじまります。ヒストリカルの録音らしいすこし饐えた音色ながら超鮮明な音響。ちょっと鮮明すぎて金属っぽい刺激成分が感じられる録音。ヴァイオリン以外は鮮明ながら硬質感はあまりありません。音楽の構成は程よく典雅なので昔のモノクロネガをちょっと硬調に焼いてしまったプリントの様な風情。音質と音楽のベクトルに少々ズレがあるような感じ。1楽章は畳み掛けるような緊張感に包まれた緊密な音楽。
2楽章に入ると鮮明な音響はそのままに正確な音程とリズムを刻むチェロの演奏に乗って、ヴァイオリンとヴィオラがゆったりとフレーズを刻んでいきます。ヴァイオリンの音色は引き締まりまくってタイトな響き。途中メロディをトレモロで表現する部分はさざ波のざわめきのような秀逸な表現でメリハリをつけます。ゆったりとしたメロディは一貫した堅固なもの。チェロのくっきり正確な演奏がこのアンサンブルの特徴になっていますね。
3楽章のメヌエットはかなり溜めを効かせた慎重な足取りで進みますが、途中からヴァイオリンの磨き抜かれた見事な旋律に圧倒されます。怪しいまでの輝きを見せる古白磁のような透徹具合。
フィナーレは一層タイトなフレージング。ウィーン風の優雅な響きではなく迫真のアンサンブルと言ったほうがいいでしょう。ここでも畳み掛けるようなインテンポでのせめぎ合いとじっくりと練るフレージングの使い分けが素晴らしい迫力。最後は消え入るように。
続いてPREISER RECORDS盤を聴いてみます。音質はかなり異なります。金属的なまでに鮮明さを追求したWestminster盤に対し、こちらは良く言えば自然で時代なりな音響、悪く言えば曇った感じに聴こえる音響。残響成分まで少し減ってしまったようなつまった感じがするものの、刺激的な響きはなくなり高音はかまぼこ型の分布で伸びはほどほど、
Westminster盤がワイドレンジだったのと対照的です。演奏はおそらく同じ演奏に聴こえます。どちらがいいかと聞かれると、正直迷いますが私はPREISER RECORDS盤を推します。Westminster盤の復刻はやり過ぎなんでしょう、両者の中間程度の音であれば、鮮明さを過度に意識することなく音楽に没入できそうです。音楽的にはPREISER RECORDS盤の方が楽しめると思います。Westminster盤には20bitK2 Super Codingとのロゴが付されていますが、この過度な鮮明さは穏やかな音楽の魅力を削いでいるように聴こえます。
この曲に関しては、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の演奏は典雅なウィーン風というより、かなり踏み込んだアンサンブルの妙味を聞かせる、迫真の演奏でしょう。評価は[++++]としました。Westminster盤の次の曲はライムンドさんが取りあげたひばり。ちょっと聞くとNo.2よりも穏やかな表情ゆえ、曲によってはかなり異なる印象もあるかもしれませんね。このあたりはまたの機会に迫ってみようと思います。
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