作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ヘルムート・ミュラー=ブリュール/ケルン室内管弦楽団の交響曲72番等

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今日は最近お気に入りのヒストリカル。

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ヘルムート・ミュラー=ブリュール(Helmut Müller-Brühl)指揮のケルン室内管弦楽団の演奏でハイドンの2本のホルンのための協奏曲、交響曲72番、ディヴェルティメント(カッサンシオン)の3曲を収めたアルバム。何れもホルンが活躍する曲。ホルンはエーリッヒ・ペンツェル(Erich Penzel)とウォルター・レクスット(Walter Lexutt)。収録は詳しいデータの記載がありませんが、おそらく1966年のもの。レーベルはCharlin(シャルラン)、アンドレ・シャルランという技術者のつくったレーベル。ワンポイント録音で録られた音源を数多く出しています。

ヘルムート・ミュラー=ブリュールといえばNAXOSレーベルからハイドンの交響曲集を何枚もリリースしているのでご存知の方も多いのではないでしょうか。ただしNAXOSレーベルへの収録は同じケルン室内管弦楽団との演奏ながら1990年代から2000年代の録音。30年以上の隔たりがあります。

ヘルムート・ミュラー=ブリュールは1933年生まれの指揮者。ヘルマン・アーベントロートに師事し、彼の創立したケルン室内管弦楽団の指揮者として活動を続けているとのこと。知名度が上がったのはやはりNAXOSのアルバムを通して。特にハイドンの交響曲はキビキビとしたリズムが特徴の正統派の名演としてお薦めできるもの。彼の1966年の演奏ということで33歳のころの録音になります。果たしてその出来は如何なるものでしょう。

Hob.VIId:2 / Concerto per 2 cors et Orchestre [E flat] (1762)
この曲はこの演奏を含めて3種の演奏しかありません。大宮真琴さんの「新版ハイドン」の巻末の作品リストでは消失曲と整理されていますが、曲の真贋のほどはわかりません。この辺のことは詳しい方の解説に譲ることにして、演奏のレビューに特化しましょう。
冒頭からクラシカルな音響ながら非常に鮮明な録音。高音は繊細というかちょっと薄め、低域は分厚い、ちょっとボンついた印象もある響き。序奏からオーケストラの音像が非常に鮮明に浮かび上がる独特の録音。演奏スタイルは古さを感じさせるものの、推進力は十分。2本のホルンは比較的前に定位して絶妙な掛け合いを聴かせます。響きはやや乾いた響きで潤いに欠ける感じもありますが気になるほどではありません。ワンポイント録音とは言われなくてはわかりませんが、良く聴くとこの録音、各楽器の定位感が抜群にいいことがわかります。現代のワンポイント録音の自然な音響とはかなり印象が異なりますが、確かにワンポイントらしい音場です。ミュラー=ブリュールのコントロールは後年のNAXOSの録音と同傾向の印象もありますが、音響の違いが音楽の印象を大きく変えており、ちょっと聴くと同じ指揮者の演奏とは気づかないと思います。
アダージョはハイドンのコンチェルトとしては非常に珍しい音調で入ります。ホルン2本の悲しげなメロディーからはじまり、そのメロディーが弦楽器に引き継がれ、途中かなり印象的な転調を経て一貫して穏やかなメロディーを続けます。ホルンは音色が良くそろってテクニック的には申し分ありません。協奏曲としてはテクニックを誇示する部分は少なく、むしろ2本のホルンの掛け合いにポイントを絞った曲。
フィナーレは落ち着いたリズムにのってことさら盛り上がりや推進力を聴かせるわけではなく、律儀にキレを聴かせるというタイプ。最後は流石に力が入って終了。

Hob.I:72 / Symphony No.72 [D] (before 1781)
冒頭からホルン大活躍の曲。番号は後半ですが作曲年代は1960年代はじめと想定され、シュトルム・ウント・ドラング期のだいぶ前の曲。うら悲しい雰囲気はまだ降りてこず、純音楽的な構成。
1楽章は前曲同様優秀な録音を通して、ホルンがくっきりと隈取りを描く晴朗な旋律の魅力溢れる演奏。かなり高度なテクニックを要求するようなホルンの旋律ですが、難なくこなしていきます。2本のホルンの掛け合いはここでも見事。ミュラー=ブリュールのコントロールは落ち着いて立体的な音響を構築する感じ。
2楽章のアンダンテも落ち着き払った冷静沈着な演奏。響きが豊かな録音故音自体が活き活きしており、覚めた感じは皆無。淡々とした演奏がかえって豊かな音楽を表現しているような演奏。ヴァイオリンとフルートが際立った存在感。
メヌエットはビロードの肌触りのような弦楽器の最初の音が秀逸。他の楽章と差別化して舞曲風な感じの演奏というわけではなく、前楽章からの連続したトーンで入るので、非常に自然な入りと自然なフレージング。続くフィナーレもアンダンテなせいか、テンポもフレージングも前楽章からそのまま続いているような連続性。交響曲の起承転結よりも自然な連続性をポイントにしている演奏とみました。しっとりと変奏を重ねて音響的にではなく音楽的に次第に盛り上がるかんじがじわりと伝わります。最後は変奏の総決算のような盛り上げ方で終了。なかなか個性的な演奏ですね。

Hob.II:D22 / Cassatio (Divertimento) [D] (1761-65)
最後はこちらもホルンが活躍するディヴェルティメント。この曲はアブ・コスターのアルバムで鮮明な記憶が残っています。コスターの鮮明なホルンの演奏の印象からすると録音の古さは否めませんが、逆に味わい深い演奏とホルンのテクニックはコスター盤に劣ることはありません。コスター盤は同じアルバムに収められたホルン協奏曲を以前取りあげています。

2010/09/29 : ハイドン–協奏曲 : アブ・コスターのホルン協奏曲

5楽章構成のこの曲、2本のホルンと弦楽合奏によるのどかな音楽。2楽章と4楽章にメヌエットをはさみ、3楽章がアダージョ。弦楽器の線の細い響きとホルンの豊かな響きのコンロラストが独特の雰囲気。ミュラー=ブリュールはここでも冷静かつ穏やかなコントロール。淡々とした演奏の醸し出す音楽が雰囲気を盛り上げます。後半はすこしテンポが下がりキレが薄れてくる印象もありますが、優しい曲調とホルンの音色が相俟って忘れ難い印象を残す曲でもあります。

ここ最近のNAXOSレーベルへの録音で知られるヘルムート・ミュラー=ブリュールとケルン室内管弦楽団の演奏によるハイドンのホルンが活躍する曲をあつめたアルバム。シャルランの素晴らしいワンポイント録音によって時代を超えた魅力を放っています。評価は3曲とも[++++]とします。録音による音響のちがいで、最近の演奏とはかなり違った傾向の演奏に聴こえますが、音楽のエッセンスは変わらない気がします。NAXOSの交響曲もそのうち取りあげなくてはなりませんね。
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