作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ストリング・クァルテットARCOの「皇帝」(ハイドン)

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10月最初のアルバムは日本人クァルテットによる皇帝。

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先日ディスクユニオンで見つけたアルバム。

ストリング・クァルテットARCOによるモーツァルトの弦楽四重奏曲K.421(417b)、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76 No.3「皇帝」、そして「ハイドンのセレナーデ」として知られるホフシュテッターの弦楽四重奏曲のセレナーデの3曲を収めたアルバム。収録は2001年5月8日、9日、群馬の桐生の近くにある笠懸野文化ホール・パルでのセッション録音。

笠懸野文化ホール・パル

ストリング・クァルテットARCOはオーケストラの首席奏者など腕利きの奏者が集まり1996年に設立された弦楽四重奏団。設立以来、宮崎国際室内楽音楽祭、北九州国際音楽祭、JTアートホール室内楽シリーズでの活動やテレビ出演などの活動を重ねているそうです。私はもちろんはじめて聴くクァルテット。メンバーは以下のとおりです。

第1ヴァイオリン:伊藤亮太郎
第2ヴァイオリン:双紙正哉
ヴィオラ:柳瀬省太
チェロ:古川展生

なぜかジャケットはちょい悪風な不思議な写真(笑) なんかしてやるぞとのオーラかもしれません。ジャケットが気になるアルバムには何かあるというのが経験則ですので迷わず入手しました。

Hob.III:77 / String Quartet Op.76 No.3 "Kaiserquartetett" 「皇帝」 [C] (1797)
磨き込まれた美しい音色。楽器の音色がそれぞれ癖が異なりますが、完璧にそろったアンサンブルではなくそれぞれの楽器がかわるがわる存在感を示すような演奏。テンポは中庸、くっきりとメリハリをつけ、かなり起伏を大きく取った演奏。音色的に第1ヴァイオリンの鮮明さが一際はっきりしているのが特徴です。チェロは逆にレガートが多く柔らかい音色で全体の厚みを感じさせるような役。演奏自体は非常にまとまりの良いフレージングで推進力も十分。1楽章は豊かな表情に加えてキリッと引き締まった構成感のある演奏。なかなかいいですね。
有名な現ドイツ国歌のメロディーのポコ・アダージョは、最近の録音らしい鮮明な録音によって弦楽器の瑞々しい音色と音色の変化の魅力を堪能できます。奇を衒ったような表現は一切なく、かなりオーソドックスな演奏ですが、表情は非常に豊か。個々の技術、音楽性も確かなもので、アンサンブルとしても良く練られている演奏ですね。ジャケット写真のオーラはちょい悪ということではなく自信に溢れた表情だった訳ですね。後半の静寂感の表現も上手くハイドンのこの曲の良さを十分に表現できています。録音も万全。奏者がスピーカーの前に鮮明に定位し、適度な残響が音楽に潤いを与えています。オーディオ的にもいい録音だと思います。流石Victor。
続くメヌエットは堂々とした感じとちょっと長めの間の取り方がいいバランスを保って、次元の高い音楽性を感じさせます。フィナーレも鮮烈そのもの。ちょっと想像した演奏よりもかなり正統派の演奏。おそらく最初に指摘した楽器感の音色のムラは第2ヴァイオリンでしょうか、一台だけ楽器のランクが下がるのではないかと思います。主に低音域が独特の音色が混ざってちょっと濁りというな高雅さを乱している感じがしますね。テクニックが素晴らしいだけにちょっと惜しいところですね。最後は素晴らしい迫力で終えます。

String Quartet Op. 3 No.5 [F] (Composed by Roman Hoffstetter)
久しぶりに聴くハイドンのセレナーデ。この曲は最近イメチェンしてETVとなっている教育テレビの平日夜23時55分からやっている超人気5分番組「2355」の日めくりアニメのテーマ音楽と言ったほうがいいかもしれません(笑) 普段はBGMに使われることの多いメロディーですが、本格的なクァルテットの演奏で聴くとなかなか存在感のあるメロディー。ピチカートに乗って奏でられるヴァイオリンのメロディーは非常に艶やか。速めのテンポで淡々と弾き進めて名旋律をフォーマルに表現。流石に歴史を経て聴き続けられる名旋律だけあります。

もう少し日本人っぽい演奏を想像していましたが、キレもよくくっきりとメリハリある演奏で迫力も十分。音色のムラの問題はありますが、演奏としては十分素晴らしい演奏だと思います。評価は皇帝が[+++++]、セレナーデは[++++]としたいと思います。

今月はコレクションが薄い弦楽四重奏曲を多く取りあげて行こうと思っています。普段レビューに取りあげる機会が少ないのは、何となく6曲セットのアルバムは全曲セットで取りあげたるべきと勝手に思って躊躇していたんですが、あんまり気にせず曲を選べばよいと割り切っていこうと思います。秋の夜長に室内楽の調べは心地よい安らぎをもたらすでしょう。
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