カペー弦楽四重奏団のひばり(ハイドン)

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カペー弦楽四重奏団の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.64 No.5「ひばり」、モーツァルトの弦楽四重奏曲K.465「不協和音」、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲Op.18 No.5の3曲を収めたアルバム。どの曲も収録は1927年から28年との記載ですが、ネットで調べるとハイドンは1928年10月の収録のようです。ColumbiaのSPから起こしたもののようですね。レーベルは最近あまりみないロンドンのBiddulph RECORDINGS。
先日いつもコメントを戴くライムンドさんのブログでウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団のひばりが取り上げられているのを読んで、同じ演奏を聴いてみようと思ったんですが、所有盤リストにはさらに古いカペーのアルバムがあり、同じアルバムを聴くよりこちらを久しぶりに聴いてみようと思いラックの奥から取り出した次第。
今でもしぶとく聴いています:ハイドン 弦楽四重奏曲ひばり ウィーン・コンツェルトハウス
カペー弦楽四重奏団は1893年に設立されたフランスのクァルテット。第1ヴァイオリンのリュシアン・カペーが中心となった四重奏団で何度かメンバーが変わっていますが、この録音の頃のメンバーは以下のとおり。
第1ヴァイオリン:リュシアン・カペー(Lucien Capet)
第2ヴァイオリン:モーリス・エウィット(Maurice Hewitt)
ヴィオラ:アンリ・ブノア(Henri Benoît)
チェロ:カミレ・デロベーレ(Camille Delobelle)
リュシアン・カペーはこの録音のあと急逝しており、このクァルテットの録音はこのアルバムの3曲をはじめとして全12曲があるのみとのこと。ハイドンはここに収められたひばりが唯一のものということです。おそらく年配のファンの方にはなじみのあるクァルテットだと思いますが、私はいままでちゃんと聴いたことがありません。
いつものようにネットで情報収集すると、カペー弦楽四重奏団のことについて非常にわかりやすい解説があるサイトが見つかりました。
サロン・ド・ソークラテース:Musique:カペー弦楽四重奏団
これは読む甲斐ありですね。音楽と弦楽四重奏に非常に造詣が深い。このサイトを読めばカペー弦楽四重奏団のことはかなりのことがわかります。カペーの解説はこのサイトに譲るとして早速聴いてみます。
Hob.III:63 / String Quartet Op.64 No.5 "Lerchenquartetett" 「ひばり」 [D] (1790)
大きめかつ持続的なスクラッチノイズの向こうから聴こえてくる雅なカペー弦楽四重奏団の響き。1928年録音とは思えない鮮明さでクァルテットが眼前に実体感を伴って定位。いかにも古き良きクァルテットの響きですね。先のサイト指摘されたポルタメントが特徴ということで、ヴァイオリンを筆頭に音程が変わるときに糸を引くような独特の弾き方が耳に残ります。現代の演奏とは全く異なる趣。ただ、ハイドンの生きていた時代から数多の変遷を経て現代の演奏があるわけで、前世紀初頭のこの演奏はハイドンの弦楽四重奏曲を時代がどのように受け入れてきたかを知る貴重な録音に違いありません。燻し銀とはこのことでしょう。聴き慣れると盛大なスクラッチノイズの存在はほとんど気になりません。
2楽章はポルタメントがさらに効いてえもいわれぬ感興。ポルタメントで音が変化する途中の何とも言えない不思議な感覚が、まるで別の曲であるかのような印象を残します。歴史の垢にまみれたフレスコ画の貴婦人の元は鮮烈だったドレスの色がかすかに見えるような趣。現代の演奏とは全く違う視点で絶妙な演奏。
続くメヌエットまでテンポはほとんど一定なもの。テンポでメリハリをつけるという表現ではなく、苔むすような雅な弦の音色と安定したフレージング、そしてポルタメントで聴かせる演奏。
そしてフィナーレは前振りなくいきなり快速テンポで入ります。アダージョでのポルタメントから技術的には少し緩いのかなと想像しましたが、フィナーレに至り、非常に正確に刻む音階とその中でもメロディーをくっきりと浮かび上がらせる素晴らしいテクニック。あっという間にフィニッシュです。
カペー弦楽四重奏団のハイドンは80年以上前にハイドンの弦楽四重奏曲がどのように弾かれていたかを示す貴重な歴史遺産でしょう。糸を引くような旋律、燻し銀の味わい、そして意外と端正な骨格の演奏を楽しむことができます。これをオリジナルのLPやSPで聴くと痺れることでしょう。いままで心に届かなかった古き良き時代のハイドンの弦楽四重奏曲のエッセンスがやっと理解できました。これはひとえにこちらの器の問題でしょう。評価は[+++++]とします。
明日は月末ゆえ慣例により今月の一枚を選びます、、、
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