モーシェ・アツモン/ワールド・シンフォニー・オーケストラの天地創造アッシジライヴ

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モーシェ・アツモン(Moshe Atzmon)指揮のワールド・シンフォニー・オーケストラの演奏でハイドンのオラトリオ「天地創造」を収めたアルバム。ソロはソプラノがエディット・マティス(Edith Mathis)、テノールがクリストフ・プレガルディエン(Christoph Prégardien)、バスがハラルド・スタム(Harald Stamm)と豪華なもの。そして合唱は日本の晋友会、ベルリンのHDK室内合唱団、ハンガリーのペーチュ室内合唱団ということです。オケのリーダーはベルリンフィルのコンサートマスターだった安永徹。収録は1990年8月5日、イタリアのアッシジの聖フランチェスコ大聖堂でのライヴ収録。レーベルはスウェーデンのBIS。
とここまで普通に書いてきましたが、このアルバムのジャケットをよく見ると「広島コンサート1990ライヴ」との記載に「1985年ノーベル平和賞」のマークが。ただならない記載ということでライナーノーツを読むと、このアルバムは1990年にアッシジの聖フランチェスコで行われた核戦争防止国際医師会議(IPPNW:International Physicians for the Prevention of Nuclear War)が主催するコンサートのよう。核戦争防止国際医師会議は1985年ノーベル平和賞を受賞しています。ライナーノーツの冒頭には当時の広島市長の荒木 武さんのメッセージが記されており、この年が広島に原爆が投下されてから45年目にあたり、平和を願ったコンサートである旨触れられています。
またその後の解説には、広島コンサートと名付けられたコンサートは1988年の夏にロンドン最初に催され、そのツアーの最後のコンサートをアンタル・ドラティが指揮したとのことで、このコンサートがドラティの最後のコンサートとなったよう。ドラティはこの年の11月にがんで亡くなっています。演目はベートーヴェンのミサ・ソレムニス。このIPPNWのチャリティーコンサートは翌年末までに100回を数えるまでになり、その頃原爆投下後45年にあたる1990年8月におこなわれたこの世界的に有名なアッシジの聖フランチェスコでのコンサートが企画され、全大陸から160名に及ぶ演奏者を集めることとなったということです。
このような記念すべき日のコンサートのプログラムとしてハイドンの天地創造は絶好のプログラムでしょう。ソロもエディット・マティスにプレガルディエン、コーラスには素晴らしい歌唱で定評のある晋友会まで参加しているということで、その豪華さが伝わります。晋友会はかなり昔ですが1980年に小沢征爾と新日本フィルとの組み合わせでマーラーの千人の交響曲を東京文化会館で聴いた覚えがあります。若い小沢征爾の巧みなコントロールで文化会館が吹き飛ばんばかりの炸裂するエネルギーに痺れたものでした。晋友会はピタリとそろった弩迫力のコーラスだった覚えがあります。
指揮者のモーシェ・アツモンは名前は知ってますが、演奏に接するのははじめて。1931年ハンガリー生まれのイスラエルの指揮者。ハンガリーのブダペストで音楽教育を受けましたが13歳の時(1944年くらいでしょうか)に家族でイスラエルのテルアビブへ移住。チェロとホルンを学び当初はホルン奏者として活動。その後指揮者に転向しヨーロッパの主要都市のオケに客演。長らくシドニー交響楽団の首席指揮者であった他、日本では名古屋フィルハーモニー交響楽団や東京都交響楽団の常任指揮者であったのでおなじみの人も多いでしょう。この日の演奏会にどうして選ばれたかの経緯はわかりません。
前振りがだいぶ長くなりましたので肝心の演奏のレビューへ。
Hob.XXI:2 / "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
アッシジの聖フランチェスコのバシリカらしい非常に長い残響をともなった録音。かといって不鮮明な録音でもなく、良く聴くと奥へ奥へ伸びる深い残響がまるで聖フランチェスコ聖堂にいるように錯覚させる音。ゆったりしたテンポと長く伸びる残響を楽しむかのような静寂感を重視したアツモンのコントロール。第1曲のスタムによるラファエルのレチタティーヴォは遠くに定位して、残響を伴う朗々としたもの。オケとコーラスのバシリカ内に響き渡る分厚い響きが印象的。強音の部分はまさにバシリカ中に響き渡る響きの渦のよう。アツモンの指揮は非常に自然なもの。小細工は一切なくバシリカの響きにみを任せるよう。テンポの設定も遅い部分と早い部分の対比も鮮明でなかなかいいです。早い部分はかなりはっきりと速度を上げます。残響の関係か早いパッセージでちょっとテンポがズレるところが散見されますが、これはこの会場ならではということでしょう。第4曲で登場するマティスのガブリエルは、良く通るマティス独特の芯の強いくっきりとした響き。いつものガブリエルのアリアはマティスの可憐な声を楽しみたいのですが、遥か残響の向こうで歌う感じがすこし違和感を感じさせてしまいます。歌自体は特に高音の突き抜けるような伸びが素晴らしいもの。
そして第10曲から第13曲に至る第一部のクライマックスへの流れは、スピードを上げて素晴らしい盛り上がり。途中、ウリエルのレチタティーヴォが続きますが、プレガルディエンは以前シュライアー指揮のDVDでもウリエルを歌ってました。流石の切れと安定感。シュライアーのDVDはマティスも重なってますが、この演奏の約2年後の演奏でもあり、登場する歌手の全盛期といってもいい時期だと思います。第一部の最後を飾る第13曲はバシリカ中に響き渡る感動的なもの。まさに会場そのままの大迫力で終わります。
長くなりましたので、今日はここまで(最近刻むことが多くてスミマセン)
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