作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ブダペスト弦楽四重奏団のひばり他

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前記事のヨッフムの天地創造につづいて古めのヒストリカルを。

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ブダペスト弦楽四重奏団によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.64 No.5「ひばり」、ミェチスワフ・ホルショフスキ(Mieczyslaw Horszowski)のピアノが加わったベートーヴェンのピアノ四重奏曲Op.16、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76 No.5、そしてブダペスト弦楽四重奏団のヴァイオリン、チェロとホルショフスキのピアノでハイドンのピアノ三重奏曲「ジプシー・ロンド」の3楽章の4曲を収めたアルバム。全曲ライブのようでひばりは1940年8月3日、Op.76 No.5は1941年3月29日、ジプシー・ロンドが1955年4月7日。ニューヨークのBridge Recordsというレーベル。

ブダベスト弦楽四重奏団はハンガリーのブダペスト歌劇場管弦楽団のメンバーによって1917年に創設された弦楽四重奏団ですが、1938年にアメリカに活動の場を移して最終的なメンバーは全員ロシア人となり、ハンガリーおよびブダペストとは関係が無くなったとのこと。この演奏を行った1940年代のメンバーは次のとおり。

第1ヴァイオリン:ヨーゼフ・ロイスマン(Josef Roismann)
第2ヴァイオリン:アレクサンダー・シュナイダー(Alexander Schneider)
ヴィオラ:ボリス・クロイト(Boris Kroyt)
チェロ:ミッシャ・シュナイダー(Mischa Schneider)

1940年代というのは戦後ではなく戦中という混乱期の演奏。録音を介して聴く弦楽四重奏の響きは経過した時代を感じさせない素晴らしい響きでした。

Hob.III:63 / String Quartet Op.64 No.5 "Lerchenquartetett" 「ひばり」 [D] (1790)
1940年という録音年代にしては鮮明な録音。おそらくSPかLPからの板起こしでしょう。スクラッチノイズが混じった録音。ノイズの向こうから聴こえてくる音は意外に鮮明。ひばりの1楽章の聴き慣れたメロディーを軽いタッチで奏でますが演奏はコンパクトにまとまった感じのあるはじまり。ヴァイオリンの伸びはそこそこですがアンサンブルのまとまりが良く、軽々とリズミカルな開始。芯のしっかりある音で逆に時代を感じさせない音。ヴァイオリン中心というわけでもなく緊密なアンサンブルによる1楽章。
2楽章はアダージョ・カンタービレ。1楽章同様リズミカルでコンパクトにまとまった演奏。見通しのよい演奏。カンタービレというほど練らず、逆にテンポはあっさりしながらリズムを保ちます。スクラッチノイズのようにチリチリしたノイズが少々気になりますが音の鮮度は1940年という録音年代が信じられないほど。
メヌエットもテンポ感がよく緊密なアンサンブルでまとまりよく進みます。この軽快なテンポ感がこの演奏の特徴でしょう。そのままフィナーレに入り。非常に細かいボウイングで速いパッセージを正確な音程をたもちながら駆け抜けるように演奏。まさに疾風のようなフィナーレ。最後は万来の拍手に迎えられます。

Hob.III:79 / String Quartet Op.76 No.5 [D] (1797)
間にはさまれたベートーヴェンがホルショフスキの穏やかなピアノで絶品。再びはじまるハイドンの聴き慣れたフレーズ。前曲の1年後の1941年の録音。録音自体は悪くありませんが、こちらの方が若干饐えた感じがする音。ブダペスト弦楽四重奏団の演奏は過度なメリハリはなく、速めのテンポで正確に刻まれる音階をインテンポでどんどん進める感じが特徴でしょうか。時代の特徴かもしれませんが叙情的な感じは皆無で、むしろ淡々と進めることで音楽自体に語らせるような演奏。
2楽章は前曲同様淡々とすすめますが、あっさり弾かれることによってかえって叙情性が引き立つような凛々しい演奏といえばいいでしょうか。録音の古さもかえってプラスに働くような渋い展開。ダイナミックレンジの幅は広くないものの演奏自体はくっきりとしたメリハリがついて、各楽器が良くそろって強弱をつけていくことで音楽のまとまりを感じさせているようです。
メヌエットはくっきりとテンポ感良く描くのは前曲同様。考えてみると70年前の演奏ですが、それが信じられない鮮明な音楽。 フィナーレも恐ろしく鮮明なヴァイオリンの響き。早いパセージの安定感は流石と思わせるもの。この時代のハイドン観が現れているのでしょう、くっきりと描かれ緊密な構成感を中心に早いテンポでまとまりよくまとめられたハイドンですね。

Hob.XV:25 / Piano Trio (Nr.39/op.73-2) [G] (1795)
最後はアンコールのようにピアノ三重奏曲の名曲のフィナーレをあしらってます。2曲目におかれたベートーヴェンの素晴らしい演奏(このアルバムの白眉)を聴かせたホルショフスキのピアノがキレてます。穏やかながら深みを感じさせる素晴らしい演奏。もちろん速めのテンポで畳み掛けるような演奏。ブダペスト弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンのロイスマンとチェロのシュナイダーが火花が散るような激しい掛け合いに応じます。これは凄い演奏。ロンドのみならず全曲聴きたかったですね。こちらは1955年とだいぶ時代が下った録音ゆえ、自然さがだいぶアップしています。

以前から手元にあったアルバムですが、しっかり聴いている訳ではありませんでした。あらためてレビューに取りあげて時代を超えた価値を認識した次第。繰り返しますがこれが70年前の演奏とは信じられない鮮明さで眼前に浮かび上がり、時代の息吹をつたえる貴重な録音。評価は弦楽四重奏曲2曲が[++++]、ジプシー・ロンドは3楽章のみですが、[+++++]とします。以前よりだいぶ評価をアップしました。時代を超えて聴かれ続けられている理由がはっきりと感じられる名演奏ということでしょう。はるか70年前の混乱の時代に想いを馳せながらゆったりと素晴らしい演奏を楽しみました。
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