ライナー・クスマウル/アムステルダム・バッハ・ソロイスツのヴァイオリン協奏曲集

ライナー・クスマウル(Rainer Kussmaul)のヴァイオリン、アムステルダム・バッハ・ソロイスツの演奏でハイドンのヴァイオリン協奏曲3曲と、ロバート・ヒル(Robert Hill)のハープシコードが加わり、ヴァイオリンとハープシコードのための協奏曲のあわせて4曲を収めたアルバム。収録は1993年1月9日~12日、アムステルダムのベガインホフのイギリス教会でのセッション録音。レーベルはロンドンのOLYMPIA。
このアルバムもしばらく前にディスクユニオンで見かけて手に入れたもの。OLYMPIAレーベルは何枚か持ってますが、かなりマイナーな存在でしょう。
ヴァイオリンのライナー・クスマウルは1946年、ドイツのマンハイム近くのシュリーセンハイム生まれのヴァイオリニストで指揮者。音楽一家だったようで6歳で父からヴァイオリンの手ほどきを受け、1965年から1970年までシュトゥットガルトで音楽を学び、その後世界各地のヴァイオリンコンクールに入賞しソリストとして活躍するようになりました。特に室内楽の分野で活躍しており、シュトゥットガルトピアノトリオなどで活躍。このアルバムを録音した後の1993年から1997年までベルリンフィルのコンサートマスターとなってます。教師としても活躍し、多くの国でマスタークラスを持っています。楽器は1724年製のストラディバリウスということです。
Hob.VIIa:3 / Violin Concerto "Merker Konzert" 「メルク協奏曲」 [A] (c.1765/70)
非常にまろやかなオケの響き。現代楽器の演奏ですが、フレージングは古楽器でのようなキビキビしたもの。クスマウルのヴァイオリンは柔らかな音色が魅力的は非常にオーソドックスなもの。もの凄く上手い人がさらっと弾いているような余裕たっぷりの演奏。あまりひねりも変わった表現意図も感じられない素直な演奏。絶妙のテンポ感で重さも皆無。ハープシコードが加わっていまが3曲目にソロを弾くロバート・ヒルでしょうか。キビキビ感を主体とした演奏ですが、もう一超え踏み込んでほしいという印象も残ります。
アダージョはかなり速め。アダージョという感じがしません。目立つのはクスマウルの美音。音色は流石といったところですが、ちょっとテンポが速すぎて落ち着きかないのが正直なところ。
フィナーレは俊敏なオケの魅力溢れる演奏ですが、これでアダージョがしっとりとしていれば、鮮烈な対比の効果でいい感じなんでしょう。やはり楽章間のコントラストは大事だということがわかります。クスマウルはここでも非常に軽々と美音でソロを弾き進めていき、オケとの掛け合いの妙も楽しませてくれます。カデンツァのキレも見事。
Hob.VIIa:1 / Violin Concerto [C] (c.1765)
冒頭のオケの演奏は素晴らしい色彩感。この曲独特の明るい導入部は全曲よりも彫刻的なメリハリを感じる彫りの深い演奏。クスマウルのヴァイオリンは輝きに満ちた美音。やはりストラディバリウスの存在感は圧倒的。教会にに響き渡るヴァイオリンの高音はほれぼれするほど。クスマウルの演奏自体も前曲よりも曲想に合った演奏と聴きました。
この曲はアダージョは速めではありますが普通の範囲のテンポ。ピチカートの伴奏に乗ってクスマウルの美音炸裂。コンセプトの人ではなく技の人ということでしょうね。美しいメロディーを弾く悦びを表現したような素直な演奏。
フィナーレのキレは全曲同様。俊敏な反応のオケとの緊張感溢れる掛け合い。この曲は全曲とはレベルの異なる出来映え。
Hob.XVIII:6 / Concerto per violino, cembalo e orchestra [F] (1766)
コミカルなメロディーラインを基調にした曲。ハープシコードとヴァイオリンの掛け合いで、クスマウル主体から、ロバート・ヒルの奏でるハープシコードとのバランスも聴き所に。音量的には劣るものの、ヒルのハープシコードは繊細でテンポ感も良く、表現の自在さが表情を豊かにして、強めの音色のクスマウルとの相性もぴったり。オケもメリハリを意識した演奏。
2楽章のラルゴは素晴らしいひと時。ヒルのハープシーコードが落ち着きを与え、その上でクスマウルのヴァイオリンが自在に音階を刻んでいる感じ。このこのアルバムの聴き所でしょう。
フィナーレはこのアルバム全体に鮮度重視の速めの演奏。ハープシコードの活躍でキレと深みが加わり結果的にクスマウルのヴァイオリンの演奏に反映してよい余韻を残してます。
Hob.VIIa:4 / Violin Concerto [G] (c.1765/70)
最後の曲。基本的にこれまでの曲と同様の特徴をもつ演奏ですが、オーケストラが軽めの音色を意図的に出しにいくように表現の幅を広げているように聞こえます。クスマウルの演奏は相変わらすヴァイオリンの絶妙に美しい音色を生かした演奏。この曲のアダージョはようやくアダージョらしいテンポでの演奏で、穏やかなメロディーを静けさを感じさせるようなおおらかな表情で演奏。フィナーレはやはり俊敏、鮮烈な表情。フィナーレの演奏は安定してくっきりした俊敏さを保ってます。おそらくクスマウルもハイドンのフィナーレは俊敏であるべきとの鮮明なイメージを持っているのだと思います。
ベルリンフィルのコンサートマスターを務めたライナー・クスマウルによるハイドンのヴァイオリン協奏曲集。まとめて収録されたものにも関わらず、曲ごとにちょっとムラはありました。評価は1曲目は[+++]、2曲目はクスマウルの美音が非常に印象的、3曲目もロバート・ヒルとの絶妙な掛け合いが良かったので双方[+++++]、最後の曲は[++++]とします。
クスマウルのアプローチは協奏曲としてヴァイオリンの音色の美しさを存分に生かしながら、オケの表現の幅は抑えながらもキビキビ感と俊敏さを生かした古楽器に近いアプローチ。なぜか1曲目のアダージョがかなり速いテンポだったのでいろいろ想像してしまいましたが、2曲目以降はそれほど違和感もなく、クスマウルの美音を素直にたのしむことが出来ました。
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