【新着】ニコラス・マギーガンのロンドン、88番、時計

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ニコラス・マギーガン(Nicholas McGegan)指揮のフィルハーモニア・バロック管弦楽団の演奏でハイドンの交響曲104番「ロンドン」、88番、101番「時計」の3曲を収めたアルバム。収録はロンドンが2007年2月10、11日、88番が2008年11月15、16日、時計が2009年9月12、13日、何れもサンフランシスコの対岸、バークレーにある第一組合教会(First Congregational Church)でのライヴ。レーベルはフィルハーモニア・バロック・プロダクションというオケの自主制作レーベルでしょうか。
指揮者のマギーガンは1950年、ロンドン北部の街、サウブリッジワースの出身。ケンブリッジのコーパス・クリスティ・カレッジやオックスフォードのマグダレナ大学で学び、1985年以来、このアルバムのオケであるサンフランシスコを本拠地にするフィルハーモニア・バロック管弦楽団の音楽監督の地位にあります。またドイツのゲッティンゲンの国際ヘンデルフェスティバルの芸術監督でもあります。フィルハーモニア・バロック管弦楽団はアメリカでも指折りの古楽器オケとみなされるまでになっているとのことです。いつものようにマギーガンのサイトへのリンクを張っておきましょう。
Nicholas McGegan(英文)
マギーガンと言えばヘンデルなんでしょう、かなりの数のオペラ等の録音がリリースされています。ただ、私はあまりヘンデルに明るくないので、マギーガンの力量の程はあまり知りません。それゆえ、真っ白なキャンバスのような状態でマギーガンの奏でるハイドンの音楽を聴きます。
このアルバムはハイドンの交響曲の名曲集のような選曲。普通はロンドンを最後にもってくるのでしょうが、このアルバムでは最初。録音日時を見ると録音順で曲を並べているようです。それぞれの曲の演奏の間は1年ほどの間が空いているので、その演奏のテンションの違いも聴き所となりますね。
Hob.I:104 / Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
初っ端はロンドン。古楽器オケ特有の雅な響き。ミンコフスキのような響きのダイナミクスを狙ったものでもなく、ブリュッヘンのエネルギー感、ワースのナチュラルさとも違い、端正でバランスの良い力感。フレーズはくっきり,テンポは安定して非常に正統的な演奏に聞こえます。高音弦のキレの良さも感じさせ、癖もなくいい演奏。ちょっと惜しいのはライヴとしては今一歩踏み込んだエネルギー感が欲しいところ。録音は最近のものだけに万全。教会でのライヴですが残響は過度でなく自然なもの。会場ノイズはほとんど聞こえず最後の拍手がなければライヴとわからないくらい。
2楽章のアンダンテは古楽器らしく若干速めのテンポでさっぱりとしたフレージング。ただしアクセントはかなり明確に付けているので、くっきりした感じがして飽きさせません。
メヌエットからはすこし気合いが乗り始め、白熱した演奏に。良く聴くとフレーズごとのアクセントを巧みに変化させて響きを魅力的にしてみます。ピチカートの部分の音量の変化など非常にデリケートなもの。曲自体のメロディーが直裁に聞こえるのはヴァイオリンをはじめとした弦楽器ビヴラートが弱く響きが透明だからでしょう。
フィナーレはライヴなりの盛り上がりをみせますが、弾むようなフレーズを多用して重厚感よりもキレを重視したコントロール。最後はライヴらしく燃え上がりますが、かたや最後まで巧みにアクセントのコントロールが効いている印象も残るロンドンでした。最後は万来の拍手。
Hob.I:88 / Symphony No.88 "Letter V" 「V字」 [G] (1787?)
ロンドンよりも約1年半後のライヴ。出だしの印象はロンドンのときよりすこしリラックスした感じと活き活きとした感じが加わってよりライヴらしい演奏に感じます。オケの響きもすこし荒れは感じられますが一体感は増している感じに。1楽章の後半リズムが変わるところでのモーフィングのような処理は面白いですね。オケ全員が乗って演奏しているような躍動感がポイントでしょう。キレもノリもよくなった2楽章。
2楽章のラルゴは木管楽器の響きの美しさがいきなり素晴らしい演奏。この楽章もリラックスして弾いているようすがつたわってきます。フレージングもゆったり感が感じられてて余裕があります。
メヌエットは舞曲らしい愉悦感が良く出た演奏。ロンドンのときはコントロールに気をつかって巧みなアクセントをつけたり、盛り上げたりと、ちょっと作為に気をとられているような印象もちょっぴり感じたんですが、88番のほうは自然な流れが基調にあり、音楽としてのまとまりも良いように感じます。
フィナーレはこの曲特有のコミカルなメロディーを自然に演奏していきます。時折アクセントを効かせて、最後はテンポを適度に煽ってもりあげ、やはり万来の拍手を浴びます。
Hob.I:101 / Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
最後は時計。最も最近である2009年9月のライブ。マギーガンの演奏の特徴がだいたい把握できてきました。時計の1楽章は非常に変化に富んだ充実した楽章。現代楽器の演奏では大きな視点で流麗でテンポの速めな演奏が聴き映えがするんですが、マギーガンはすこし近視的にフレーズ単位のコントロールでくっきり感を出すことを狙っているようで、大局的な視点が少し弱い感じ。代わりにくっきりしたメロディーと雅な古楽器にしては力強いアクセントを楽しめます。
2楽章の時計のメロディーは予想通り速めのテンポで、フレーズも非常に爽快にすすめます。奏者の反応も俊敏で聞き応えは十分。最近の演奏のほうがオケの反応の鮮やかさを聴かせどころにしてきているように感じます。音量を落とした部分も含めて各奏者がきっちりと時計のリズムに合わせて音楽を奏でていくところはなかなか見事。
メヌエットも少し速め。88番同様自然なフレージングで好印象。
フィナーレも時計の聴き所の一つ。意外とテンポは中庸で、予想したほど速くありません。マギーガンらしくアクセントをくっきりつけて曲の流れよりもフレーズごとのメリハリを重視した演奏。最後の変奏はメロディの絡み合いを分解してみせるような演出。最後に金管がうなり、盛り上がってフィニッシュ。
聴き終わって感じたのは、やはりアメリカのオケだということ。くっきりしたフレージングとハイドンの音楽の時代感覚のようなものとは関係なく、古楽器による音楽的な面白さを追求しているような演奏。マギーガンのくっきりとした表現もそうした印象につながっているような気がします。音楽的にはハイドンの名曲をうまく料理して曲の面白さを表現していますが、ハイドンの演奏としてはちょっと実験的な印象もあります。評価は全曲[++++]とします。
関西地方は今日は台風の影響で大雨や強風で大変だったようですね。東京も降ったり止んだリというところ。せっかくの土曜だったのに出かけなかった人も多かったのではないでしょうか。おかげさまで夕方のスポーツクラブは空いていて、いつもよりゆったり泳ぐことができました。先週の長野旅行で栄養過多ですので、しっかり絞らなくては(笑) 明日も絞ります。
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