作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】ウォルフガング・シュルツによるリラ・オルガニザータ協奏曲

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9月最初のアルバム。

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ウォルフガング・シュルツ(Wolfgang Schulz)のフルートとトーマス・インデアミューレ(Thomas Indermühle)のオーボエによって再現されたリラ・オルガニザータという楽器のための協奏曲5曲と同楽器のためにかかれたノットゥルノ8曲を収めた3枚組のアルバム。演奏はカメラータ・シュルツ(Camerata Schulz)。収録は協奏曲のほうが2009年10月7日~11日ウィーンのプファール・ホール、ノットゥルノのほうが2009年2月14日、16日、おなじくウィーンのスタジオ・バウムガルテン。レーベルはハイドンのマイナーな室内楽の収録に執念を感じる日本のcamerata。今日はこの中からリラ・オルガニザータ協奏曲を取りあげます。

ウォルフガング・シュルツはウィーンフィルの首席フルート奏者として知られた人。ウィーンフィルでの活動の他、ソリストとしてや室内楽のメンバーとしても活躍。1979年からはウィーン国立音楽演劇大学の教授を務めているそう。皆さん顔をみればすぐわかる人だと思います。いつものようにウェブサイトへのリンクを張っておきましょう。

Official Homepage - Wolfgang Schulz(独英文)

オーボエのトーマス・インデアミューレは1951年スイスのベルン生まれ。フライブルク音楽大学でオーボエの神様ハインツ・ホリガーに師事、その後オランダ室内管弦楽団、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団のオーボエ奏者を務めた。その後各地のコンクールで入賞するなどして有名になり、ソリストとして活動するように。1984からチューリッヒ音楽大学、1989年からカールスルーエ国立音楽大学で教鞭をとっている。

カメラータ・シュルツは2002年、ウォルフガング・シュルツによって創設された室内楽団。シュルツ一族、シュルツ門下の奏者がメンバー。フランスのボヌール音楽祭の常連メンバーであり、ヨーロッパの各都市でコンサートを開いている。今年の10月に来日予定とのこと。

リラ・オルガニザータと言う楽器とこの協奏曲について、ライナーノーツの記事を要約して紹介しておきましょう。リラ・オルガニザータはハンドルをまわすことで回転板が動に張った弦を擦って音を出す手回しヴァイオリンとシンプルな小型パイプオルガンを組み合わせたユニークな構造の楽器。音色はフルートとヴァイオリンが同時に音を出しているような音とのこと。ハイドンはこの楽器の演奏を得意としていたナポリ王フェルディナンド4世からこの楽器を使った曲の作曲の依頼を1786年に受けて書いたのが今日取り上げるリラ・オルガニザータ協奏曲5曲。ただし、その特殊性ゆえか楽器自体はすぐに廃れてしまったとのこと。

ナポリ王フェルディナンド4世は国王であるにも関わらず浮浪者とつきあうなどの奇行で知られた人。大衆楽器であった手回しヴァイオリンとパイプオルガンを組み合わせたこの楽器に興味をもったわけでしょう。国王はこの楽器の奏法をノルベルト・ハドラヴァという人に教わり、国王がハラドヴァと一緒に演奏できるように様々な作曲家に2台のリラ・オルガニザータのため協奏曲の作曲を委嘱。この5曲もこのような経緯で作曲されたと推定されるとのこと。

ハイドンはご存知のようにバリトンなど変わった楽器のための曲もずいぶん書いていますが、それらの曲の素晴らしさを伝えるため、最近様々な再現の取り組みがされているようです。リラ・オルガニザータのためのノットゥルノではリラ・オルガニザータパートをハイドン自身によってフルートとオーボエに置き換えた版が存在し、この協奏曲もその例に習ってフルートとオーボエによって再現したもの。リラ・オルガニザータという楽器自体は音の強弱の変化をつけにくいようで、フルートとオーボエによる演奏の方が聴き映えがするとの指摘もあります。

Hob.VIIh:1 / Concerti per la lira organizzata [C] (No.1) (1786)
1楽章はハ長調で晴朗な愉悦感の塊のような曲。リラ・オルガニザータの入門曲として注文された曲と捉えると、他の目的で書かれた曲とは異なり、楽しく演奏できる曲というのが狙いであり、この楽しげなメロディーは合点がいきます。2楽章にアンダンテ、フィナーレは再び愉悦感溢れる快活な曲。フルートのシュルツとオーボエのインデアミューレは癖のない自在な演奏。camerataのアルバムにおおい自然なプレゼンスの録音。練習曲とまではいきませんがそれに近い素朴な曲。

Hob.VIIh:2 / Concerti per la lira organizzata [G] (No.3) (1786)
2番はすこし音符が入り組んでいるのでしょうか、国王と先生の掛け合う姿想像できるような楽しげな演奏。演奏も無欲な非常に自然なもの。

Hob.VIIh:3 / Concerti per la lira organizzata [G] (No.5) (1786/7)
3番は以前ブリュッヘンとモーツァルテウム管の演奏を取りあげました。1番に非常に近い曲想。2楽章は聴き慣れた軍隊交響曲の2楽章をもとにしたもの。脳内では軍隊の行進の響き渡るパーカッションを補って聞きます(笑)

Hob.VIIh:4 / Concerti per la lira organizzata [F] (No.2) (1786)
4番はこれまでの中で最も快活な推進力を感じる演奏。国王が演奏に興じる姿が目に浮かぶよう。

Hob.VIIh:5 / Concerti per la lira organizzata [F] (No.4) (1786/7)
これまでの中で一番曲想の変化が巧み。やはりすこし後の曲だけ合って最初のころのものとは少し異なり成熟を感じます。この曲の2楽章、3楽章は交響曲89番の2楽章と4楽章に転用されたとのこ。

以上5曲を通して聴くと一般のハイドンの曲よりも国王のための練習曲という雰囲気がひしひしと伝わってきます。シュルツとインデアミューレの自在な楽器さばき、バックのオケとの掛け合いなど室内楽の素朴な楽しみを存分に堪能できます。評価は全曲[++++]としておきます。それなりに素晴らしい演奏ですが、演奏が突き抜けているというものでもありませんので、この評価としました。
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