作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

絶品! ベルナール・ラルマン/ジャン=フランソワ・ゴンザレス管弦楽団のネルソン・ミサ

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今日から遅い夏休みです。今日は先日オークションで手に入れた超レア盤。

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ベルナール・ラルマン(Bernard Lallement)指揮のジャン=フランソワ・ゴンザレス管弦楽団、パリフランスドイツ合唱団(La Chorale Franco-Allemande de Paris)の演奏でハイドンのネルソンミサを収めたアルバム。ソロはソプラノがカリン・ロサ(Karin Rosat)、アルトがダニエレ・ミシェル(Danielle Michel)、テノールがフランシス・バルドー(Francis Bardot)、バスがモーリス・ブルボン(Maurice Bourbon)、オルガンがミシェル・ギヤール(Michèle Guyard)というメンバー。収録日などの表記はありませんがPマークが1989年なので、その少し前の収録と想像されます。レーベルはフランスのBNL PRODUCTIONSというマイナーレーベル。ネットにもほとんど情報がなく、レーベルのホームページも見つかりませんので、既に活動を休止しているのでしょうか。

先日お盆特番でミサ曲を集中して聴いて、その素晴らしさを再認識した次第ですが、オークションでハイドンのアルバムを物色していたところ、見たこともないアルバムだったので手に入れました。ライナーノーツの解説には指揮者、ソロ、オケの紹介はなく、何と合唱団とネルソンミサの紹介のみ。このアルバムの目玉は合唱団なのでしょうか。

ライナーノーツによると、この合唱団は独仏各地(ベルリン、ミュンヘン、バーデン=バーデン、ケルン、リール、ボン、リヨンなど)にもあり、同地に住むフランス人とドイツ人の若い人たちが共に活動する場を設ける目的で設立された合唱団。このアルバムのパリの合唱団は1971年の設立。各都市の合唱団は定期的にフランスやドイツに集って活動しているようです。この合唱団のレパートリーはルネサンスからロマン派、民謡までこなし、録音も地元の民謡などの録音があるようです。設立したのはこのアルバムの指揮者のラルマン。ラルマンは民俗学者で、多くの民謡を書き、またフランス民謡に触発されたガラシアミサというミサ曲の作曲者。

いろいろ調べると一流の演奏家のアルバムではありませんが、その演奏はまさに気合いの乗った渾身の演奏です。

Hob.XXII:11 / Missa in angustiis "Nelson Mass" 「不安な時代のミサ(ネルソンミサ)」 [d] (1798)
いきなり圧倒的なオケとコーラス響き。分厚いオケ。大迫力のコーラス。大きな潮のうねりのようなキリエの入り。録音は分厚いオケとコーラスの奥にソロが小さく定位するもの。おそらく教会での録音だろうと想像させる長い残響。低域重視の録音ですが鮮明さもそこそこあり非常に自然な録音。自宅が大聖堂になってしまったような素晴らしい録音。ソロはソプラノのロサは細めのコケティッシュな声。それぞれ一流どころではないと思いますが、ミサ曲のソロとして役不足ではありません。それより、オケとコーラス、オルガンが一体になったもの凄いエネルギーの音塊。素晴らしい迫力。
グロリアに入りテンポはほぼ動かさず小細工は一切無し。大迫力のオケとコーラスをひたすら楽譜通りにコントロール。ソプラノとテノールもかなりくっきりエッジの立った通りの良い声。グロリアの中間部はコーラスとオケの伴奏に乗ってソロの聴かせどころ。ソロが技巧で浮き立つような感じはないですが、皆ソロとしては十分な歌いぶり。とくにバスのブルボンの安定感はなかなかのもの。終結部はまた怒濤の響き。何という神々しい分厚い響き。
クレドも演奏スタイルの変化はなく。対岸の花火の音が聞こえるようにコーラスとオケのうねりのなかでティンパニの刻むリズムが心地よいですね。中間部の癒しに満ちた音楽。音楽に魂が籠もり、フレーズが有機的につながり、響きの海のさざ波が心に届きます。音楽と祈りの区別がつかないような純粋さ。素晴らしい音楽。コーラスは技巧的にそろった透明感を感じるようなタイプではなく。大規模な音量で聴かせるものですが、フレージングが巧く、メロディーに気迫が感じられます。一人一人が渾身の声で歌っているのでしょう。スピーカーから伝わるエネルギーは素晴らしいもの。ここにきてソプラノのロセの可憐な声のソロが華を添えます。
サンクトゥスは長い間をとって非常に印象的な入り。もう圧倒的な迫力のオケとコーラスに圧倒されっぱなし。ラルマンの力感の表現が巧みで、メリハリのきちんとついた楷書がもつ優美さと力強さの均衡を見るような趣。このオーケストラコントロールは見事。頂点への盛り上げ方も、自然な範囲での溜めフレージングが巧く、知らず知らずのうちに音楽に引き込まれてしまいます。そして弱音のコントロールも見事。素晴らしい統率。ベネディクトゥスは暖かいフレーズの魅力にただただ感嘆するのみ。終結部の金管も素晴らしい迫力。
最後のアニュス・デイ。オケの後方から聴こえるアルトのソロ。アルトの静かに燃える歌唱を楽しむうちに終曲に。ゆったりと特徴的なメロディーを抑えながら最後に備えます。最後は非常に澄み切った心境を表すように淡々と演奏して終わります。

ふとしたきっかけで手に入れたマイナー盤。聴いてビックリの素晴らしい演奏でした。正直言ってこの夏聴いたミサ曲の中では最も心に残る一枚。演奏者は誰も知りませんが、このアルバムから聴かれるハイドンのネルソンミサは、これまで聴いたミサ曲の中で最も純粋な祈りの心境を感じます。音楽は技術ではありませんね。自然な録音、気合い漲るオケとコーラス、真剣なソロの歌唱、そしてラルマンの万全なコントロール。ハイドンに聴かせてあげたい素晴らしさです。もちろん評価は[+++++]。もう一つ増やしたいくらい。気に入りました。

このような素晴らしいアルバムが現在手に入らないのは本当に惜しいですね。このような時の私の常套句は人類の損失です! このアルバム、どこかが発掘して是非再発売してほしいものです。
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