【新着】ロンドン・ハイドン四重奏団の太陽四重奏曲
3記事連続の弦楽四重奏曲です。ちょっとハマってます。

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ロンドン・ハイドン四重奏団(The London Haydn Quartet)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.20「太陽四重奏曲」6曲を収めたアルバム。収録は2010年9月6日~10日、ロンドン北部のイースト・フィンチリーという街のオール・セインツ教会でのセッション録音。レーベルはイギリスのhyperion。この8月にリリースされたばかりの新着アルバムです。今日はこのなかから1枚目に収められたNo.1~No.3を取りあげます。
まずはロンドン・ハイドン四重奏団の紹介から。楽団の名前にハイドンが入っている時点で既に尋常ならざるハイドンへの傾倒の姿勢がみられます。しかもこのアルバム以外の録音はハイドンの弦楽四重奏曲のOp.9、Op.17を順に録音して今回のOp.20ということですので、全集を目指しているのでしょうか。文字通りイギリスの四重奏団ですが、特徴はガット弦とバロック弓。メンバーは第1ヴァイオリンがキャサリン・マンソン(Catherine Manson)、第2ヴァイオリンがマイケル・グレヴィチ(Michael Gurevich)、ヴィオラはジェームズ・ボイド(James Boyd)、チェロがリチャード・レスター(Richerd Lester)。いつものようにサイトへのリンクを張っておきましょう。
London Haydn Quartet(英文)
古楽器による繊細な響きの録音かと思ってCDをかけてみると、ゆったりと遅いテンポでじっくりとフレーズを刻んでいく、これまでの古楽器の演奏のスタイルとは大きく異なるもの。
Hob.III:31 / String Quartet Op.20 No.1 [E flat] (1772)
非常にゆったりしたテンポではじまる名曲のフレーズ。ガット弦のものと思われる雅な音色。ゆったりした感じは一音一音につけられたデュナーミクにもありそうです。基本的にデッドな録音によって非常に彫刻的な音響が浮き彫りになります。ハイドンの弦楽四重奏奏曲に込められた活気や推進力は影をひそめ、ゆったりと奏でられる精妙なメロディー。ちょっと聴くと現代音楽のような峻厳な雰囲気も感じられます。ハイドンの弦楽四重奏曲をOp.9から録音してきたという流れから想像される響きとは全く異なる響き。これは個性的な演奏。
2楽章のメヌエットも基本的に遅いテンポで、ゆったりというか禁欲的なまでに孤高な響き。各楽器の音色もピタリと焦点があってアンサンブルの精度は悪くありません。
3楽章はこの曲で最も峻厳な響き。ギーガーかペルトの曲を聴くような祈りのような静謐な雰囲気に包まれます。一音一音のコントロールが巧みで普通の演奏とは全く異なる音の延ばし終わりにアクセントをつけるフレージングが不思議な印象を醸し出しているのでしょう。
フィナーレは普通のテンポに戻って、というか普通に速めのテンポでかなりきっちりコントラストをつけた演奏。徐々に気迫がのってかなりテンションの高い演奏。楽章間の演奏のスタンスをかなり変化させる個性的な表現です。
Hob.III:32 / String Quartet Op.20 No.2 [C] (1772)
ハ長調の晴朗なメロディー。前曲がかなり個性的な演奏だったので心配しましたが、この曲の1楽章はある意味想像の範囲。ガット弦の音色を生かしてゆったりと鮮明に美しいメロディーを奏でていきます。すこし溜めを効かせて弾いてフレーズごとのメリハリをくっきりと表現していきます。この楽章はこの四重奏団の意図がいい方向に生きて、素晴らしい効果。
2楽章はカプリッチョ。この楽章も神経質さはなく大胆なアクセントとフレージングで曲想にマッチした演奏。曲の変化を大きめにつけることを楽しんでいるような演奏。強奏時の大胆さと静かなフレーズの対比が鮮明で大曲のような趣。
続くメヌエットは舞曲というよりももっとフォーマルな印象。やはり音量の変化と精妙なフレージングに神経が注がれています。メヌエットといっても演奏によってこれだけ醸し出される音楽は変わることのかなり極端な例。
フィナーレはフーガ調。ここではほとんど溜めをつくらず滑らかな前半と、瞬時にテンションを上げた後半のコントラストで聴かせます。
Hob.III:33 / String Quartet Op.20 No.3 [g] (1772)
この曲の1楽章の出だしはこの四重奏団の精妙な表現が最もマッチする曲のよう。かなり大胆な装飾音をつけたり、テンポを大胆に動かして変化を付けます。音もホルンで言えばひっくり返るような割れた表現も使って表現の幅を広げます。ただしすすむにつれてテンポと表現の幅を広げすぎて音楽の一貫性としなやかさを失ってしまったような印象も与えてしまいます。
続くメヌエットもじっくりとした表現、そして3楽章のポコ・アダージョは再びNo.1の3楽章のような現代音楽のような響き。フィナーレも創意を尽くした変化に富んだ演奏。
ロンドン・ハイドン四重奏団の太陽四重奏曲の前半3曲ですが、一聴したときに感じたゆったりとした大きな表現とガット弦の響きによる非常にオーセンティックな響きの魅力は、聴きすすむうちに、創意溢れるというかかなり実験的な音楽のつくりの印象にかき消されてしまった感じです。確かに個性的な演奏であり、かなり挑戦的な演奏なんですが、ハイドンの弦楽四重奏曲を普通に演奏した時に感じられる、素晴らしい生気と構成感、機知といったものが失われてしまっているという印象が拭えません。この演奏に対しては楽器を弾く人の評価は全く別かもしれませんね。私の評価はNo.1とNo.3が[+++]、No.2が[++++]というところでしょうか。
正直言うとhyperionのアルバムには音楽性についてちょっと難のあるアルバムが多いような気がしてます。ジャケットを見ると魅力的な仕上がりのものが多く、さも優雅な古楽器の演奏を想起させるんですが、かなり挑戦的な演奏のものが多い感じです。レーベルのブランディングと演奏の間にズレがあるような気がして仕方ありません。この辺は私の個人としての印象ですので、他の方から見ると別の印象もあるのだと思います。みなさんはどのように感じられますでしょうか。まあ、これも音楽を聴く楽しみと言うか、奥行きの一つということでしょう。

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ロンドン・ハイドン四重奏団(The London Haydn Quartet)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.20「太陽四重奏曲」6曲を収めたアルバム。収録は2010年9月6日~10日、ロンドン北部のイースト・フィンチリーという街のオール・セインツ教会でのセッション録音。レーベルはイギリスのhyperion。この8月にリリースされたばかりの新着アルバムです。今日はこのなかから1枚目に収められたNo.1~No.3を取りあげます。
まずはロンドン・ハイドン四重奏団の紹介から。楽団の名前にハイドンが入っている時点で既に尋常ならざるハイドンへの傾倒の姿勢がみられます。しかもこのアルバム以外の録音はハイドンの弦楽四重奏曲のOp.9、Op.17を順に録音して今回のOp.20ということですので、全集を目指しているのでしょうか。文字通りイギリスの四重奏団ですが、特徴はガット弦とバロック弓。メンバーは第1ヴァイオリンがキャサリン・マンソン(Catherine Manson)、第2ヴァイオリンがマイケル・グレヴィチ(Michael Gurevich)、ヴィオラはジェームズ・ボイド(James Boyd)、チェロがリチャード・レスター(Richerd Lester)。いつものようにサイトへのリンクを張っておきましょう。
London Haydn Quartet(英文)
古楽器による繊細な響きの録音かと思ってCDをかけてみると、ゆったりと遅いテンポでじっくりとフレーズを刻んでいく、これまでの古楽器の演奏のスタイルとは大きく異なるもの。
Hob.III:31 / String Quartet Op.20 No.1 [E flat] (1772)
非常にゆったりしたテンポではじまる名曲のフレーズ。ガット弦のものと思われる雅な音色。ゆったりした感じは一音一音につけられたデュナーミクにもありそうです。基本的にデッドな録音によって非常に彫刻的な音響が浮き彫りになります。ハイドンの弦楽四重奏奏曲に込められた活気や推進力は影をひそめ、ゆったりと奏でられる精妙なメロディー。ちょっと聴くと現代音楽のような峻厳な雰囲気も感じられます。ハイドンの弦楽四重奏曲をOp.9から録音してきたという流れから想像される響きとは全く異なる響き。これは個性的な演奏。
2楽章のメヌエットも基本的に遅いテンポで、ゆったりというか禁欲的なまでに孤高な響き。各楽器の音色もピタリと焦点があってアンサンブルの精度は悪くありません。
3楽章はこの曲で最も峻厳な響き。ギーガーかペルトの曲を聴くような祈りのような静謐な雰囲気に包まれます。一音一音のコントロールが巧みで普通の演奏とは全く異なる音の延ばし終わりにアクセントをつけるフレージングが不思議な印象を醸し出しているのでしょう。
フィナーレは普通のテンポに戻って、というか普通に速めのテンポでかなりきっちりコントラストをつけた演奏。徐々に気迫がのってかなりテンションの高い演奏。楽章間の演奏のスタンスをかなり変化させる個性的な表現です。
Hob.III:32 / String Quartet Op.20 No.2 [C] (1772)
ハ長調の晴朗なメロディー。前曲がかなり個性的な演奏だったので心配しましたが、この曲の1楽章はある意味想像の範囲。ガット弦の音色を生かしてゆったりと鮮明に美しいメロディーを奏でていきます。すこし溜めを効かせて弾いてフレーズごとのメリハリをくっきりと表現していきます。この楽章はこの四重奏団の意図がいい方向に生きて、素晴らしい効果。
2楽章はカプリッチョ。この楽章も神経質さはなく大胆なアクセントとフレージングで曲想にマッチした演奏。曲の変化を大きめにつけることを楽しんでいるような演奏。強奏時の大胆さと静かなフレーズの対比が鮮明で大曲のような趣。
続くメヌエットは舞曲というよりももっとフォーマルな印象。やはり音量の変化と精妙なフレージングに神経が注がれています。メヌエットといっても演奏によってこれだけ醸し出される音楽は変わることのかなり極端な例。
フィナーレはフーガ調。ここではほとんど溜めをつくらず滑らかな前半と、瞬時にテンションを上げた後半のコントラストで聴かせます。
Hob.III:33 / String Quartet Op.20 No.3 [g] (1772)
この曲の1楽章の出だしはこの四重奏団の精妙な表現が最もマッチする曲のよう。かなり大胆な装飾音をつけたり、テンポを大胆に動かして変化を付けます。音もホルンで言えばひっくり返るような割れた表現も使って表現の幅を広げます。ただしすすむにつれてテンポと表現の幅を広げすぎて音楽の一貫性としなやかさを失ってしまったような印象も与えてしまいます。
続くメヌエットもじっくりとした表現、そして3楽章のポコ・アダージョは再びNo.1の3楽章のような現代音楽のような響き。フィナーレも創意を尽くした変化に富んだ演奏。
ロンドン・ハイドン四重奏団の太陽四重奏曲の前半3曲ですが、一聴したときに感じたゆったりとした大きな表現とガット弦の響きによる非常にオーセンティックな響きの魅力は、聴きすすむうちに、創意溢れるというかかなり実験的な音楽のつくりの印象にかき消されてしまった感じです。確かに個性的な演奏であり、かなり挑戦的な演奏なんですが、ハイドンの弦楽四重奏曲を普通に演奏した時に感じられる、素晴らしい生気と構成感、機知といったものが失われてしまっているという印象が拭えません。この演奏に対しては楽器を弾く人の評価は全く別かもしれませんね。私の評価はNo.1とNo.3が[+++]、No.2が[++++]というところでしょうか。
正直言うとhyperionのアルバムには音楽性についてちょっと難のあるアルバムが多いような気がしてます。ジャケットを見ると魅力的な仕上がりのものが多く、さも優雅な古楽器の演奏を想起させるんですが、かなり挑戦的な演奏のものが多い感じです。レーベルのブランディングと演奏の間にズレがあるような気がして仕方ありません。この辺は私の個人としての印象ですので、他の方から見ると別の印象もあるのだと思います。みなさんはどのように感じられますでしょうか。まあ、これも音楽を聴く楽しみと言うか、奥行きの一つということでしょう。
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