【新着】ボロディン四重奏団のロシア四重奏曲
今日も弦楽四重奏曲です。

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ボロディン四重奏団(Borodin Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.33「ロシア四重奏曲」の6曲を収めたアルバム。収録は2010年6月26日、28日、30日と7月5日、7日にモスクワのグネーシン音楽大学のコンサートホールでのセッション録音。レーベルはイギリスのonyx classics。
このアルバムを取りあげたのは先日レビューに取りあげたボロディン四重奏団の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」があまりに素晴らしかったので、同四重奏団の最新のアルバムを注文しておいたもの。
2011/08/06 : ハイドン–室内楽曲 : ボロディン弦楽四重奏団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉ライヴ
ただし、前記事にも書きましたがボロディン四重奏団は60年以上に渡って活動する、世界でも最も長く活動している弦楽四重奏団の一つ。十字架の方は1984年のライヴ録音。今日取り上げるロシア四重奏曲の録音は2010年と26年の隔たりがあります。1984年当時のメンバーは前の記事で紹介したとおり、第1ヴァイオリンはミハイル・コペルマン(Nkkhail Kopelman)、第2ヴァイオリンはアンドレイ・アブラメンコフ(Andrei Abramenkov)、ヴィオラがディミトリー・シェバリーン(Dmitri Shebalin)、チェロがヴァレンティン・ベルリンスキー(Valentin Berlinsky)、そして今日取りあげる演奏の方は、第2ヴァイオリンのアブラメンコフ以外の3人が入れ替わってます。第1ヴァイオリンはルーベン・アハロニアン(Ruben Aharonian)、ヴィオラはイーゴル・ナイディン(Igor Naidin)、チェロはウラディミール・バルシン(Vladimir Balshin)というメンバー。十字架のときは鋼のような響きが素晴らしい緊張感でしたが、最新のこの演奏はどのような響きでしょうか。
Hob.III:37 / String Quartet Op.33 No.1 [b] (1781)
これは絶品の録音。以前の鋼のような響きからすこし柔らかさが加わっていますが、伸びやかなヴァイオリンをはじめとする各楽器が鮮明かつ刺激が抑えられた素晴らしい響きで捉えられています。ホールに響く残響を奏者も楽しんでいるような演奏。新生ボロディン四重奏団は力が適度に抜けてむしろ楽天的にさえ聴こえる心地よい響き。曲を純粋にくつろいで楽しむのにふさわしいような演奏。
2楽章のスケルツォは非常に短い楽章。各奏者の息がピタリとあって速いフレーズを難なくこなしていきます。
そして3楽章のアンダンテも過度の緊張感はもたず、ゆったりとしたリズムに乗ってハイドンのユーモラスなメロディーを奏でていきます。チェロの優しいタッチが優雅さを引き立てます。チェロはここぞという時に低音弦を唸らせ存在感を示します。第1ヴァイオリンのアハロニアンの伸びやかな音色は素晴らしいもの。新メンバーのキャラクターが確実にクァルテットの特徴になってます。
フィナーレは鮮やかなこのクァルテットのテクニックを存分に味わえます。速いパッセージの安定感は素晴らしいものがあります。昔のボロディン四重奏団を思い起こさせる険しさも垣間見せて、最後は素晴らしいテンションの演奏。1曲目からノックアウトです。
Hob.III:38 / String Quartet Op.33 No.2 "The Joke" 「冗談」 [E flat] (1781)
聴き慣れたメロディーですが、演奏は新鮮味溢れるもの。前曲同様素晴らしい録音によって捕らえられたハイドンの晴朗なメロディー。強音のときに顔を出す険しさと全体を包むおおらかな響きの織りなす極上の時間。これは名演奏ですね。ハイドンの弦楽四重奏曲の楽しさと機知を万全に表現した演奏。
この曲も2楽章がスケルツォ。ここでも第1ヴァイオリンの伸びやかな音色は圧倒的な美しさ。リズミカルなフレーズを刻んでいきます。
続くラルゴの美しさはずば抜けています。鮮明な録音で捕らえられた各楽器に織りなす精妙な演奏によって浮かび上がる癒しにに満ちたハイドンのメロディ。余裕ある響きには刺激成分は皆無。前記事のミネッティ四重奏団の演奏も良かったのですが、格の違いを見せつけるような圧倒的な演奏。
最後のフィナーレは軽やかな響きが絶妙。間の取り方も絶妙。ハイドンの曲に仕込まれたウィットを最もうまく表現しているようです。
Hob.III:39 / String Quartet Op.33 No.3 "Vogelquartett" 「鳥」 [C] (1781)
既にアハロニアンののびのびした第1ヴァイオリンが刷り込まれて、快感を感じるほどに。このヴァイオリンの伸びやかさは他に代え難いものですね。この音色は最新の録音による高域の自然な伸びと、ホールを知り尽くしたマイク配置なとによって捉えられたものですね。弦楽四重奏曲の録音の新時代を感じさせるような素晴らしい録音。弦楽器の刺激的な音が苦手な方にもすすめられるものですね。
2楽章のスケルツォは速めのテンポで前半の低音中心のフレーズをさっとこなし、中間部の鳥のさえずりのような部分もさらり。再び中低域の魅力的な響きに帰り、暖かい気持ちにさせられます。
3楽章のアダージョはもはやただ奏でるだけで絶妙な演奏になっちゃってます。作為は姿を消し、楽譜に忠実に各楽器がメロディーを奏で、豊かな曲想を表現。弦楽四重奏曲でこれだけ癒されるのはしばらくぶりです。テクニックや正確さという次元ではなく音楽として完璧な表現といえば伝わりますでしょうか。
フィナーレももはや説明は必要なし。尋常ではない弦のキレと軽やかなフレージングで聴き慣れた曲をやはり新鮮な響きに再構成。
ここで1枚目が終了で、通例通しで6曲聴くことは滅多にないのですが、あまりのすばらしさに2枚目にすぐ突入です。レビューはすこし簡単に。
Hob.III:40 / String Quartet Op.33 No.4 [B flat] (1781)
コミカルなクレッシェンドを強調した入り。この曲はロシア四重奏曲の中でも最も曲想が変わった曲ですが、相変わらず伸びやかなヴァイオリンと自然なアンサンブルで、この変わった曲をさらりとこなします。フィナーレの変化に富んだ音階をきっちり表現して曲自体に魅力を語らせるあたりも見事の一言です。最後のピチカートの美しい響きも絶品。
Hob.III:41 / String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
名曲5番は期待通りの素晴らしい緊張感溢れる入り。1楽章は万全。素晴らしい推進力。なんと豊かな音楽なんでしょう。ラルゴも切々としたフレーズを美しい響きで織り上げ名曲を新鮮な響きで再構成。スケルツォをカッチリ描いたあとフィナーレは非常に繊細なコントロールでメロディーを優しく奏でていきます。予想外の繊細さから表現の幅の大きさに気づかされます。
Hob.III:42 / String Quartet Op.33 No.6 [D] (1781)
最後は6番。もはや説明は要らないでしょう。この曲で気づくのは収録上、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン、ヴィオラの間にちょっとした距離感というか響きのダイレクトさに差をつけているように聴こえること。第1ヴァイオリンは実際の演奏以上にくっきり浮かび上がるように録られているよう。アンダンテはこのアルバムの白眉。アハロニアンのヴァイオリンの魂に響く音色が切々と美しいメロディーを奏でていきます。スケルツォにフィナーレもリズムを強調してキレの良い響きと美しい弦の流麗なメロディーの対比が素晴らしい演奏。
以前の禁欲的でタイトな響きから、美しい弦楽器の音色を生かした自然な響きを主体とした演奏に変貌したボロディン四重奏団。伝統ある四重奏団に新たに加入したメンバーが新たな個性を加えて新たな魅力を加えていることがわかります。このアルバムの演奏は見事の一言。伝統に裏付けられた革新というような演奏。聴き慣れたロシア四重奏曲と言う名曲を新鮮な響きで弾ききり、過去の垢を感じさせない見事な演奏。評価はもちろん全曲[+++++]とします。そして「ハイドン入門者向け」タグも進呈です。
連日の弦楽四重奏曲ですが、いい演奏続きでいいお休みを過ごすことができました。

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ボロディン四重奏団(Borodin Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.33「ロシア四重奏曲」の6曲を収めたアルバム。収録は2010年6月26日、28日、30日と7月5日、7日にモスクワのグネーシン音楽大学のコンサートホールでのセッション録音。レーベルはイギリスのonyx classics。
このアルバムを取りあげたのは先日レビューに取りあげたボロディン四重奏団の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」があまりに素晴らしかったので、同四重奏団の最新のアルバムを注文しておいたもの。
2011/08/06 : ハイドン–室内楽曲 : ボロディン弦楽四重奏団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉ライヴ
ただし、前記事にも書きましたがボロディン四重奏団は60年以上に渡って活動する、世界でも最も長く活動している弦楽四重奏団の一つ。十字架の方は1984年のライヴ録音。今日取り上げるロシア四重奏曲の録音は2010年と26年の隔たりがあります。1984年当時のメンバーは前の記事で紹介したとおり、第1ヴァイオリンはミハイル・コペルマン(Nkkhail Kopelman)、第2ヴァイオリンはアンドレイ・アブラメンコフ(Andrei Abramenkov)、ヴィオラがディミトリー・シェバリーン(Dmitri Shebalin)、チェロがヴァレンティン・ベルリンスキー(Valentin Berlinsky)、そして今日取りあげる演奏の方は、第2ヴァイオリンのアブラメンコフ以外の3人が入れ替わってます。第1ヴァイオリンはルーベン・アハロニアン(Ruben Aharonian)、ヴィオラはイーゴル・ナイディン(Igor Naidin)、チェロはウラディミール・バルシン(Vladimir Balshin)というメンバー。十字架のときは鋼のような響きが素晴らしい緊張感でしたが、最新のこの演奏はどのような響きでしょうか。
Hob.III:37 / String Quartet Op.33 No.1 [b] (1781)
これは絶品の録音。以前の鋼のような響きからすこし柔らかさが加わっていますが、伸びやかなヴァイオリンをはじめとする各楽器が鮮明かつ刺激が抑えられた素晴らしい響きで捉えられています。ホールに響く残響を奏者も楽しんでいるような演奏。新生ボロディン四重奏団は力が適度に抜けてむしろ楽天的にさえ聴こえる心地よい響き。曲を純粋にくつろいで楽しむのにふさわしいような演奏。
2楽章のスケルツォは非常に短い楽章。各奏者の息がピタリとあって速いフレーズを難なくこなしていきます。
そして3楽章のアンダンテも過度の緊張感はもたず、ゆったりとしたリズムに乗ってハイドンのユーモラスなメロディーを奏でていきます。チェロの優しいタッチが優雅さを引き立てます。チェロはここぞという時に低音弦を唸らせ存在感を示します。第1ヴァイオリンのアハロニアンの伸びやかな音色は素晴らしいもの。新メンバーのキャラクターが確実にクァルテットの特徴になってます。
フィナーレは鮮やかなこのクァルテットのテクニックを存分に味わえます。速いパッセージの安定感は素晴らしいものがあります。昔のボロディン四重奏団を思い起こさせる険しさも垣間見せて、最後は素晴らしいテンションの演奏。1曲目からノックアウトです。
Hob.III:38 / String Quartet Op.33 No.2 "The Joke" 「冗談」 [E flat] (1781)
聴き慣れたメロディーですが、演奏は新鮮味溢れるもの。前曲同様素晴らしい録音によって捕らえられたハイドンの晴朗なメロディー。強音のときに顔を出す険しさと全体を包むおおらかな響きの織りなす極上の時間。これは名演奏ですね。ハイドンの弦楽四重奏曲の楽しさと機知を万全に表現した演奏。
この曲も2楽章がスケルツォ。ここでも第1ヴァイオリンの伸びやかな音色は圧倒的な美しさ。リズミカルなフレーズを刻んでいきます。
続くラルゴの美しさはずば抜けています。鮮明な録音で捕らえられた各楽器に織りなす精妙な演奏によって浮かび上がる癒しにに満ちたハイドンのメロディ。余裕ある響きには刺激成分は皆無。前記事のミネッティ四重奏団の演奏も良かったのですが、格の違いを見せつけるような圧倒的な演奏。
最後のフィナーレは軽やかな響きが絶妙。間の取り方も絶妙。ハイドンの曲に仕込まれたウィットを最もうまく表現しているようです。
Hob.III:39 / String Quartet Op.33 No.3 "Vogelquartett" 「鳥」 [C] (1781)
既にアハロニアンののびのびした第1ヴァイオリンが刷り込まれて、快感を感じるほどに。このヴァイオリンの伸びやかさは他に代え難いものですね。この音色は最新の録音による高域の自然な伸びと、ホールを知り尽くしたマイク配置なとによって捉えられたものですね。弦楽四重奏曲の録音の新時代を感じさせるような素晴らしい録音。弦楽器の刺激的な音が苦手な方にもすすめられるものですね。
2楽章のスケルツォは速めのテンポで前半の低音中心のフレーズをさっとこなし、中間部の鳥のさえずりのような部分もさらり。再び中低域の魅力的な響きに帰り、暖かい気持ちにさせられます。
3楽章のアダージョはもはやただ奏でるだけで絶妙な演奏になっちゃってます。作為は姿を消し、楽譜に忠実に各楽器がメロディーを奏で、豊かな曲想を表現。弦楽四重奏曲でこれだけ癒されるのはしばらくぶりです。テクニックや正確さという次元ではなく音楽として完璧な表現といえば伝わりますでしょうか。
フィナーレももはや説明は必要なし。尋常ではない弦のキレと軽やかなフレージングで聴き慣れた曲をやはり新鮮な響きに再構成。
ここで1枚目が終了で、通例通しで6曲聴くことは滅多にないのですが、あまりのすばらしさに2枚目にすぐ突入です。レビューはすこし簡単に。
Hob.III:40 / String Quartet Op.33 No.4 [B flat] (1781)
コミカルなクレッシェンドを強調した入り。この曲はロシア四重奏曲の中でも最も曲想が変わった曲ですが、相変わらず伸びやかなヴァイオリンと自然なアンサンブルで、この変わった曲をさらりとこなします。フィナーレの変化に富んだ音階をきっちり表現して曲自体に魅力を語らせるあたりも見事の一言です。最後のピチカートの美しい響きも絶品。
Hob.III:41 / String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
名曲5番は期待通りの素晴らしい緊張感溢れる入り。1楽章は万全。素晴らしい推進力。なんと豊かな音楽なんでしょう。ラルゴも切々としたフレーズを美しい響きで織り上げ名曲を新鮮な響きで再構成。スケルツォをカッチリ描いたあとフィナーレは非常に繊細なコントロールでメロディーを優しく奏でていきます。予想外の繊細さから表現の幅の大きさに気づかされます。
Hob.III:42 / String Quartet Op.33 No.6 [D] (1781)
最後は6番。もはや説明は要らないでしょう。この曲で気づくのは収録上、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン、ヴィオラの間にちょっとした距離感というか響きのダイレクトさに差をつけているように聴こえること。第1ヴァイオリンは実際の演奏以上にくっきり浮かび上がるように録られているよう。アンダンテはこのアルバムの白眉。アハロニアンのヴァイオリンの魂に響く音色が切々と美しいメロディーを奏でていきます。スケルツォにフィナーレもリズムを強調してキレの良い響きと美しい弦の流麗なメロディーの対比が素晴らしい演奏。
以前の禁欲的でタイトな響きから、美しい弦楽器の音色を生かした自然な響きを主体とした演奏に変貌したボロディン四重奏団。伝統ある四重奏団に新たに加入したメンバーが新たな個性を加えて新たな魅力を加えていることがわかります。このアルバムの演奏は見事の一言。伝統に裏付けられた革新というような演奏。聴き慣れたロシア四重奏曲と言う名曲を新鮮な響きで弾ききり、過去の垢を感じさせない見事な演奏。評価はもちろん全曲[+++++]とします。そして「ハイドン入門者向け」タグも進呈です。
連日の弦楽四重奏曲ですが、いい演奏続きでいいお休みを過ごすことができました。
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