作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ミネッティ四重奏団のOp.64-4、Op.74-3騎士、Op.76-5

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今日は久しぶりの弦楽四重奏曲。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ミネッティ四重奏団(Minetti Quartett)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲、Op.64-4、Op.74-3「騎手」、Op.76-5の名曲3曲を収めたアルバム。収録は2008年2月、10月、12月、オーストリアのウィーンの南、アイゼンシュタットのさらに南にあるフランツ・リストの生地ブルゲンランドのリストセンターのフランツリスト音楽ホールでのセッション録音。レーベルはhänssler CLASSIC。

最近HMV ONLINEに注文を出す時にマルチバイにするためにふと見かけて混ぜたもの。ジャケット買いです。若い美男美女の奏者たちがロッカー室でくつろぐ姿のジャケットが妙に購買意欲をそそりました。HMV ONLINEの記事を見ると2008年に来日してハイドンの四重奏曲を演奏しているようですね。このアルバムがデビューアルバムのようです。

ということでミネッティ四重奏団をHMV ONLINEの情報などをもとに紹介をしておきましょう。オーストリアの若手四重奏団。設立は2003年。ウィーン国立音楽演劇大学でアルバン・ベルク四重奏団のメンバーなどに師事。2006年グラーツのフランツ・シューベルト国際弦楽四重奏コンクールで優勝、2007年ウィーンのヨゼフ・ハイドン国際室内楽コンクールで第2位とハイドン賞を受賞、さらにフィレンツェのリンボッティ国際弦楽四重奏コンクールで第1位となるなど数々のコンクールで良い成績を収めるなど、ハイドンの本場オーストリアでも注目の存在でしょう。
メンバーは、第一ヴァイオリンはマリア・エーマー(Maria Ehmer)、第二ヴァイオリンはアンナ・クノップ(Anna Knopp)、ヴィオラはマルクス・フーバー(Markus Fuber)、チェロはレオンハルト・ロチェック(Leonhard Roczek)の4名。楽器はオーストリア国立銀行のコレクションのイタリアの銘器(ガダニーニ、ロレンツィーニ、チェルッティ)を貸与されているということです。いつものようにこの四重奏団のサイトへのリンクを張っておきましょう。

Minetti Quartett(独文・英文)

収録場所のリストセンターは最近出来た施設のようですが、600人ほど収容できるなかなかセンスの良い建物。ブルゲンランドという田舎町はリストの生地として知られ、このセンターの前はリスト通り。リストの両親はエステルハージ家に仕えていたようですね。なんとなくハイドンにゆかりがあるようです。こちらもリンクを張っておきましょう。

Lisztzentrum Raiding(独文)

一聴して演奏も溌剌とした素晴らしいもの。若手のクァルテットのデビュー盤にハイドンの名曲集をもってくるあたり、かなりの実力派でないと出来ないでしょう。アイドル系のような恵まれたヴィジュアルに対して、その演奏はかなりの本格派ですのでレビューのし甲斐がありますね。

Hob.III:66 / String Quartet Op.64 No.4 [G] (1790)
最新の録音らしい鮮度抜群の音。スピーカーあたりにクァルテットが大きめに定位。第二ヴァイオリンは右に定位。オンマイク中心の録音ですが残響は豊か。家の中に極上の弦楽四重奏団が出現したようなリアリティ。若手らしく音楽が溌剌としています。師匠たるアルバンベルク四重奏団のようなカッチリとした響きではなく、各奏者が柔らかめにフレーズを刻んでいく感じ。アンサンブルの一体感は見事。
2楽章はメヌエット。自然なプレゼンス。作為なく淡々と、しかし程よいテンションですすめます。若手の演奏と思えない成熟した音楽に聴こえます。平板な印象は皆無。
そしてアダージョは弦楽四重奏曲の美音を楽しむ楽章。第一ヴァイオリンの美しい音色が絶品。第一ヴァイオリンのマリア・エーマーの余裕たっぷりの弓さばきは見事。時折聴かせる装飾音も非常に自然なもの。
フィナーレはエーマーの美音はそのままに、自然さを保った緊密なアンサンブルを聴かせて四重奏の見事な一体感を味わえます。一曲目のこの曲だけでミネッティ四重奏団の素晴らしい実力のほどがよくわかります。

Hob.III:74 / String Quartet Op.74 No.3 "Reiterquartetett" 「騎士」 [g] (1793)
聴き慣れた短調のメロディー。程よいテンションと良い楽器らしいそれぞれの楽器の音の塊の厚みとくすんだ木の響き。交互に現れる各楽器のメロディーが織りなす複雑な音楽の表情。この曲の険しさも十分表現されていますが、テンションを緩めた響きも見せるため変化がきちんとついてメリハリ十分。1楽章から非常に高まる緊張感。
つづくアダージョはゆったりしたテンポなのにさらに緊張感が高まり、深い呼吸で緻密に音量と張りを制御し大きな起伏の音楽を奏でていきます。デビューアルバムでこの出来は驚くばかり。若さも感じられるんですが、むしろ成熟のほうが支配する素晴らしい時間。後半はフレーズを自在に変化させたり極限まで音量を絞ったりして音楽を濃くしていきます。
メヌエットは一転軽さが際立ちます。さっと弾いているようですが、良く聴くとやはり細かいフレーズごとのコントロールが緻密ゆえ生み出される、技術に裏付けられた軽やかさであるとわかります。テクニックの誇示のような雰囲気はなくあくまでも自然。相当の力量でないとこのような演奏は出来ないでしょう。
そして、騎士の聴き所のフィナーレは弾むリズムはもちろんのこと鋭いアクセントを美しく柔らかい音色の楽器でつけながらクリアに旋律を浮かび上がらせて曲の面白さを表現し尽くしています。テンポの変化と表情の変化を巧みにつけて終了。メリハリをフレーズ単位にしっかりとつけ、重さや単調さと無縁の豊かな音楽性。この曲も見事。

Hob.III:79 / String Quartet Op.76 No.5 [D] (1797)
最後も名曲を選んできました。この曲としては軽めの入りでしょう。前2曲と比べるとすこしテンポの設定が速めで浮き足立ったようにも聴こえますが、フレーズごとにしっかりメリハリをつけていくスタイルは変わりません。この曲のみ録音が少し高域が強い感じに聴こえます。
2楽章のラルゴはこれも有名な旋律。美しい音色で美しい旋律を奏でていくのは変わりませんが、この曲では枯淡の表情さえ聴かせるのは驚きです。この若い奏者たちの音楽性は恐ろしいほど。弦楽四重奏曲の真髄に迫る素晴らしい演奏。1楽章のすこし速めのテンポもこの曲を聴いて合点がいきました。
メヌエットはすでに安心して聴けます。フレージングのあちこちにちょっとした変化や装飾をつけて新鮮さを保ちながらも古典的な均衡の範囲ははずしません。このメヌエットをきくとこの四重奏団が若手の演奏であることにあらためて気づかされます。
フィナーレもメヌエット同様新鮮な音楽。弾き尽くされたかに思えるこの名旋律にもまだ新鮮な解釈の余地が残っていることを演奏で示す素晴らしい実力。繰り返される音階の波が正確な各奏者の演奏で精妙に重なり合い、フィナーレに向けた焦点を結んでいく様はやはり素晴らしい音楽。最後は余裕のあらわれか意外にあっさりとしかしくっきりと曲を結びます。

いやいや、ジャケット買いではありましたが、聴いてビックリの超名演です。美しい音色、自然な音楽、新鮮な解釈、素晴らしい録音とすべてそろったすばらしいアルバム。オーストリア国立銀行がイタリアの名器を貸しちゃうのも頷ける素晴らしい才能ですね。このアルバムはすべての人にお薦めです。評価は全曲[+++++]、「ハイドン入門者向け」タグもつけます。

ミネッティ四重奏団の来日公演のことを書いたネットの記事を読むと、第二ヴァイオリンのアンナ・クノップは日墺のハーフのようで、お母さんは盛岡出身とのこと。今後も来日が期待できそうですね。このクァルテットは要注目です。
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