作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のアルバム収集とレビュー。音楽、旅、温泉、お酒など気ままに綴ります。

アンネ・ゾフィー・フォン・オッターの歌曲集

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昨日までお盆特番としてミサ曲をとりあげて来ましたが、今日は涼しげな歌曲集。

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アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(Anne Sofie von Otter)のメゾソプラノとメルヴィン・タン(Melvyn Tan)のフォルテピアノで、モーツァルトの歌曲9曲とハイドンの歌曲、カンツォネッタ8曲を収めたアルバム。収録は1994年4月、ストックホルムのMusikaliskaでのセッション録音。収録曲は下記のレビューをご覧ください。レーベルは名門ARCHIV。

いつものようにWikipediaなどから略歴を紹介しておきましょう。アンネ・ゾフィー・フォン・オッターは1955年、ストックホルム生まれのスウェーデン人のメゾソプラノ歌手。非常に多くのアルバムで歌っているので知らない方はいないのではないかと思います。ロンドンのギルドホール音楽演劇学校で学び、その後ロンドンでジェフリー・パーソンズ、ウィーンでエリック・ウェルバに師事。1982年にバーゼル歌劇場と契約、1983年にハイドンの歌劇「オルランド・パラディーノ」のアルチーナ役でオペラデビュー。1985年にコヴェント・ガーデン王立歌劇場、1988年にメトロポリタン歌劇場にケルビーノ役としてデビュー。1987年にはスカラ座にも出演。オペラや宗教曲ではモンテヴェルディ、ヘンデル、モーツァルト、リヒャルト・シュトラウスのなどがレパートリー、リサイタルではブラームス、グリーグ、ヴォルフ、マーラーのリートなどを良く取りあげているようです。

フォルテピアノのメルヴィン・タンはシンガポール生まれのピアニスト。フォルテピアノもモダンピアノも弾くようです。良く来日しているようですのでご存知の方も多いでしょう。

この二人の組み合わせによるハイドンの歌曲集。このアルバムはその存在を知らず、偶然ディスクユニオン店頭で出会ったもの。フォン・オッターといえばカルロス・クライバーの「薔薇の騎士」のDVDのオクタヴィアンが有名ですね。芯の強い歌声、凛々しい風貌が魅力の人。

Hob.XXVIb:2 / Cantata "Arianna a Naxos" [E flat] (c.1789)
名曲「ナクソスのアリアンナ」。歌曲は好きなので今までもいろいろな人のこの曲を取りあげていますが、過去取りあげたこの曲の中で最も好きな演奏かもしれません。今までの演奏はPC用のレイアウトの左ペインのユーザータグで「ナクソスのアリアンナ」をクリックすると以前のこの曲を取りあげたレビューがすべてご覧いただけます。曲の紹介も以前の記事をご参照ください。落ち着き払ったタンのフォルテピアノの伴奏に乗って、凛々しオッターのメゾソプラノが静かにメロディーを描いていきます。オペラティックというよりはリートの延長のような歌。

Hob.XXVIa:25 / 6 Original Canzonettas 1 No.1 "The Mermaid's Song" 「人魚の歌」 [C] (1794)
ハ長調の晴朗な伴奏に乗って芯のあるオッターの美しい声で歌われる短い歌。言葉を噛み砕きながら巧みに変化をつけた歌唱。非常に起伏に富んだ歌で、小品でも素晴らしい聴き応え。

Hob.XXVIa:27 / 6 Original Canzonettas 1 No.3 "A Pastoral Song" 「牧歌」 [A] (1794)
ハイドンの歌曲の真髄。非常に美しいメロディー。古典の均衡。やはりオッターの声は素晴らしい浸透力。波の歌手とは違いますね。カッチリとした表現、高音の伸び、ことばの積み重ねによる歌曲を極めた歌。

Hob.XXVIa:30 / 6 Original Canzonettas 1 No.6 "Fidelity" 「誠実」 [f] (1794)
嵐の訪れのような激しい曲調。速めのテンポによって荒々しさが強調されます。程よい起伏のなかで激しい表現を尽くします。終盤の速い音階と静寂の繰り返しは見事。

Hob.XXVIa:34 / 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
一転してしっとりとした曲。知的な女性がふと見せる心情の吐露のような曲。そっと語りかけるような歌に酔いしれます。このアルバムの聴き所。

Hob.XXVIa:31 / 6 Original Canzonettas 2 No.1 "Sailor's Song" 「船乗りの歌」 [A] (1795)
メルヴィン・タンのリズミカルな伴奏から曲にエネルギーが満ちます。オッターの歌は素晴らしい声量。タンもオッターもあらん限りの力感で見事な掛け合い。突風が吹き抜けるような勢い。

Hob.XXVIa:36bis / "Der verdienstvolle Sylvius" 「?」 [ ] (1795)
最後の前の曲はまたしっとりとした曲。この曲は演奏が少なく他には手元にシュライアー/デムス盤しかありません。短い曲。

Hob.XXVIa:41 / "The Spirit's Song" 「精霊の歌」 [f] (c.1795)
最後は名曲「精霊の歌」。歌に魂が宿っているような渾身の歌唱。音量のコントロールやフレージングと言うレベルを越えた、歌曲の真髄にせまる表現。きらきら輝く水晶のようなきらめきもあり、深く沈む情感も宿る素晴らしい表現。圧倒的な出来。流石オッターというところでしょう。

やはり並の歌手とは異なるレベルの歌唱。オッターの歌曲は異次元の出来でした。手に入れるまでその存在すら知らなかったアルバムでしたが、素晴らしい内容に満足です。もちろん評価は全曲[+++++]、ハイドンの歌曲のアルバムとしてもすべての人にお勧めできる素晴らしいアルバムです。「ハイドン入門者向け」タグもつけます。

今月はいいアルバム目白押しですね。
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