作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【お盆特番4】ブルーノ・ヴァイルのテレジアミサ、ネルソンミサ

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お盆特番、まだまだ続きます。今日は古楽器によるミサの演奏。

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ブルーノ・ヴァイル(Bruno Weil)指揮のターフェルムジーク(Tafelmusic)の演奏で、ハイドンの後期ミサ曲から「テレジアミサ」と「ネルソンミサ」の2曲を収めたアルバム。収録は1996年9月9日~11日、ミュンヘン南部のバート・テルツ(Bad Tölz)のマリア昇天日教区教会(Stadtpfarrkirche Mariä Himmelfahrt)でのセッション録音。ソロはソプラノがアン・モノイオス(Ann Monoyios)、アルトがスヴェトラーナ・ゼルダール(Svetlana Serdar)、テノールがヴォルフガング・ビュンテン(Wolfgang Bünten)、バスがハリー・ヴァン・デル・カンプ(Harry van der Kamp)、合唱はテルツ少年合唱団です。

このアルバム、今手に入れるなら下のミサ曲を4枚まとめたものの方がお得です。

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ブルーノ・ヴァイルはハイドンの交響曲の古楽器系の演奏者のなかでは一番肌に合う指揮者。透明感あるタイトな響きに力感がともない、アーノンクールほど灰汁が強くないバランスのよい演奏が持ち味。ミサ曲もすべて聴いていますが、古楽器のなかでは一番安定していい出来なのでおすすめです。ミサ曲の方はこれまでちゃんと取りあげてきませんでしたのでこの機会に取りあげようという流れです。これまで取りあげたヴァイル記事を以下のとおり。ヴァイルの紹介などは下記の記事をご参照ください。

2011/01/10 : ハイドン–オラトリオ : ブルーノ・ヴァイルの天地創造
2010/12/25 : ハイドン–交響曲 : 【年末企画】ブルーノ・ヴァイルの交響曲50番、64番、65番
2010/03/08 : ハイドン–交響曲 : ブルーノ・ヴァイル、ザロモンセットへ

このアルバムの1曲目はハイドンの後期6曲のミサ曲の中で最も美しフレーズをもつテレジアミサ。

Hob.XXII:12 / Missa "Theresienmesse" 「テレジアミサ」 [B flat] (1799)
昨日まで聴いていた現代楽器の重厚な響きとはがらっと変わって、小編成古楽器オーケストラのくっきりした響きと少年合唱団による透き通るようなコーラスが教会内部に響き渡る余韻が素晴らしい録音。導入部から癒しに満ちたフレーズ。私はこのキリエのメロディーが鳴ると脳内からアドレナリンが噴出。ハイドンの天才ぶりが遺憾なく発揮されたモノイオスの美しく伸びきった高音が教会に響き渡ります。アルトのゼルダールはふくよかな響きが魅力。テノールのビュンテンはキリッとした浸透力のある声。そしてバスのヴァン・デル・カンプも高音域のくっきりとした隈取りが音程感を鮮明に表すことで音程と歌詞が鮮明に聴こえるような声。何よりテルツ少年合唱団のコーラスがこのアルバムの透明な音色を決定づけています。速めのテンポでしかもくっきりとしたメリハリで奏でられるキリエ。

続いて10分ほどのグローリア。導入部は速めのテンポながらフレージングはクッキリと浮かび上がり。抜群の生気と快速テンポから生み出される恍惚感が最高潮に。中間部は古楽器特有のさらっとした表情ながら、さらっとしたオケの伴奏に乗ってアルト、バス、ソプラノ、テノールが順に豊かな音楽を歌い継いでいきます。終盤はリズムが弾みオケの俊敏なキレが脳髄に届きます。そしてクライマックスは怒濤のコーラスとオケの素晴らしい盛り上がり。コリン・デイヴィスのネルソンミサのグローリアを彷彿とさせる渾身の盛り上がり。

クレドは荒々しくも均衡を保った起伏で描かれます。ティンパニが楔のようにリズムを刻み、オケとコーラスが反応よくそれに応答。特徴的なリズムに乗っておけとコーラス、ソロがリズミカルにフレーズを奏で、じっくりと興奮を表現。中間部はほの暗い歌をじっくりと描いたいきます。一筋の光がさすような一瞬の明るさを求めるような祈りに満ちた音楽。終結部はヴァイオリンのか細い旋律からはじまりオケとコーラスの波が描く大きな波に徐々に主導権を奪われ、そしてソロが描く美しいフレーズに移り、最後はアーメン。

サンクトゥスからアニュス・デイまでの流れも古楽器らしい速めのテンポで一気にいきます。サンクトゥスは一瞬のきらめきのような音楽。ベネディクトゥスはこの曲のクライマックス。音楽ここに極まるようなような素晴らしい感興。澄み切った心情をオケとコーラスが絶妙に表現。そしてアニュス・デイは魂の叫びのような絶唱。ソロもコーラスも渾身の歌唱。最後の曲は総決算のようにまとまるフレージング。ヴァイオリンの素晴らしい高音の音階。鳥肌が立つような音楽が最後まで続きます。素晴らしいフィニッシュで曲を閉じます。

Hob.XXII:11 / Missa in angustiis "Nelson Mass" 「不安な時代のミサ(ネルソンミサ)」 [d] (1798)
ここ数日で3演奏目のネルソンミサ。現代楽器との差がリアルに実感できる曲。軽快なテンポにも関わらず祈りの深さはかえって深くなっているように感じるのが不思議なところ。キリエのキレは心が受け入れられないほどの素晴らしいもの。振り切れまくってます。

モノイオスの可憐なソプラノの声を楽しむ間もなく響きの渦に巻き込まれます。速めのテンポで描かれるグローリアはもの凄い推進力。音楽が瀧のように襲ってくるようなエネルギーの塊のような素晴らしい集中力。既に音楽は完全に祈りに昇華して心に刻まれます。オルガンとソロとオうがりに負けていません。中間部はバスのヴァン・デル・カンプのこちらも透明感ある声の魅力を堪能できます。後半も速めのテンポで一気にいきます。オルガンの素朴な音色がアクセントになって最後のクライマックスを盛り上げます。

クレドはリズムに乗ったオケとコーラスの激しい掛け合いからはじまり、穏やかな中間部の癒しの音楽に移ります。中間部のメロディーラインの美しさはこの世のものとは思えないきらめきと真の癒しに満ちた音楽。間をあけずに始まる終盤の響宴。ヴァイオリンの繊細な音階の刻みは極めてデリケートな雰囲気を醸し出し、相変わらずエネルギーに満ちたコーラスに彩りを添えます。モノイオスは天使のお告げのような可憐さ。最後の盛り上がりはオケとコーラスが爆発。

そしてサンクトゥス。前曲同様2分弱の短い曲。一貫してエネルギッシュ。続くベネディクトゥスから最後のアニュス・デイまでのこのところ聴き慣れたメロディー。まずはモノイオスの美しい声に奏でられるゆったりとしたメロディを楽しみ、ギアチェンジしてトップスピードで奏でられる恍惚とした響きの波に打たれます。そして最後のアニュス・デイは癒しに満ちたメロディー。最後のフーガのようなメロディーもこのところ聴き慣れたもの。

久しぶりに取り出したブルーノ・ヴァイルのミサ曲。現代楽器と古楽器の差を超えて速めのテンポとくっきりとしたメリハリ、そしてエネルギーに満ちた素晴らしい盛り上がりはヴァイルの真骨頂。このミサ曲集は快心の出来。評価はもちろん両曲とも[+++++]をつけます。このアルバムはすべての人にお薦め。ハイドンのミサ曲の一押しのおすすめ版です。「ハイドン入門者向け」タグもつけます。
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