作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【お盆特番2】マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団のハルモニーミサライヴ

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お盆の特集でミサ曲などの教会音楽を取りあげようというシリーズの第二弾。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)指揮のバイエルン放送交響楽団とバイエルン放送合唱団の演奏で序曲(Hob.Ia:7)、交響曲88番、ハイドンの最後のミサ曲、「ハルモニーミサ」の3曲を収めたアルバム。ソロはソプラノがマリン・ハルテリウス(Malin Hartelius)、アルトがジュディス・シュミット(Judith Schmid)、テノールがクリスティアン・エルスナー(Christian Elsner)、バスがフランツ=ヨセフ・ゼーリヒ(Franz-Josef Selig)。2008年10月7日、ドイツ東部のチェコとの国境近くの街、ヴァルドザッセンのバシリカでのライヴ録音。今日は特番ゆえ、ハルモニーミサのみ取りあげます。

ヤンソンスはウィーンフィルのニューイヤーコンサート振るなどメジャーな存在ゆえ皆さんご存知の指揮者でしょうが、いつものようにちょっと調べておきましょう。1943年、バルト三国ラトビアの首都リガ生まれ。父はレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者を務めたアルヴィド・ヤンソンス。レニングラード音楽院でピアノ、ヴァイオリン、指揮を学び、その後ウィーン国立音楽アカデミーでスワロフスキーに師事、またザルツブルクでカラヤンに師事したとのこと。1971年カラヤン国際指揮者コンクールで2位となり、同年レニングラード・フィルを指揮してプロ・デビューを果たします。その後ムラヴィンスキーの助手としてレニングラードフィルの複式者を務めた後、オスロ・フィルハーモニーの首席指揮者、ロンドンフィルの首席客演指揮者、ピッツバーグ交響楽団の首席指揮者、2003年にはこのアルバムのオケであるバイエルン放送交響楽団の首席指揮者と数々の名門オケのトップに着きます。2004年からはアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の常任指揮者も務めるようになり、ヨーロッパの代表的な指揮者といってもよい存在になってます。

ヤンソンスはオケを柔らかく鳴らしきる独特の魅力をもった指揮者。今の指揮者ではあまりいないタイプの指揮者ですね。このアルバムは同じ日の収録のDVDがリリースされているので映像が好みの方はそちらをご覧いただいてもいいと思います。

ハルモニーミサはこれまで2回取りあげていますので、曲の紹介はそちらの記事をご覧ください。

2010/12/30 : ハイドン–声楽曲 : ヤーノシュ・フェレンチクのハルモニーミサ
2010/10/07 : ハイドン–声楽曲 : アーノンクールのハルモニーミサ

Hob.XXII:14 / Missa "Harmoniemesse" 「ハルモニーミサ」 [B flat] (1802)
石造りの教会の高い天井に響き渡る長い響き。ヤンソンス独特のきめ細やかなデュナーミクがコントロールされた柔らかい響き。冒頭のキリエは確信的なコントロールで生み出された穏やかな表情。各声部それぞれが磨き込まれているようすがうかがえ、トータルな響きには一体感がある自然ながら緻密な演奏。このようなところがヤンソンスの人気につながっているのでしょう。豊かな音楽なのに心情は鏡のように澄み渡る水面のような不思議な感覚。音楽から昇華される祈り。

つづくグローリアに入り、オケの推進力が漲りはじめます。アクセントを鋭角的につけることはなく、すべてのアクセントが絶妙に面取りされて音楽を艶やかにしています。またメロディーラインの表現上、音を切り気味につないでいくことで変化をつけフレーズをわかりやすく描いていきます。中間部はソロが大活躍。ソプラノのハルテリウスは独特の響きを感じさせる声。高音の伸びと美しいヴィブラートが聴きどころ。途中から4声が絡み合う素晴らしいアンサンブル。後半は再び響きのうねりに身を任せるだけのような音楽。次から次へと襲ってくるコーラスの波。ここでもヤンソンスはきめ細かくフレーズと音量を絶妙にコントロール。

クレドの出だしは特徴的なリズム感を基調とした曲。前曲同様間にソロ中心の曲を置いて最後はコーラスの波が襲ってきます。

サンクトゥスは静寂からコーラスが浮かび上がる絶妙な曲想。ヤンソンスのコントロールは人工的な感じがするほど磨き込んだものですが、不思議と穏やかな自然さを感じさせるもの。ハイドンの音楽というよりやはりヤンソンスの音楽という印象が強いですね。続くベネディクトゥスはすこし浮き足立った感じを巧くだして変化をつけます。ささっとこなす感じが新鮮。そして最後のアニュス・デイは天上で小鳥が遊ぶような趣の曲。最後はファンファーレを皮切りにオケとコーラスが最後のクライマックスを盛り上げます。最後までオケはヤンソンスの的確なコントロール下で巧みに柔らかい音響による感興を表現。熱くたぎるような音響ではなく、ほのかな暖かさを感じるような盛り上がりという感じ。終始ヤンソンス色の強い演奏です。最後は響きを楽しむ人と拍手をする人が半ば。

マリス・ヤンソンスのハルモニーミサ。豊かな響きと巧みなコントロールから浮かび上がる暖かい響き。ハイドン最後の最大編成のミサ曲をヤンソンス色で表現。一聴すると音楽性豊かなほのぼのとした演奏、ただし良く聴くと非常に個性的な演奏です。自然な演奏が好きな私ですがこの演奏はきらいではありません。ちなみにハルモニーミサの前に置かれた88番も基本的に同様の傾向の演奏なんですが、こちらはちょっと人口的なコントロールが鼻についてしまうような印象をもちました。ミサ曲故ヤンソンスのコントロールの個性的な部分が目立たないということなんじゃないかと思ってます。評価は[+++++]をつけます。音楽の印象は非常に微妙なところがキモになるという例でしょう。
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