作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ボロディン弦楽四重奏団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉ライヴ

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ちゃんと聴いたことのないアーティストシリーズ(笑)という流れの最近の記事。

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ボロディン弦楽四重奏団(The Borodin String Quartet )の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲「十字架上のキリストの最後の七語」 。1984年12月7日、モスクワ音楽院の大ホールでの収録。ライヴとは書いてないのですが、まわりからちょとカタカタおとが聴こえてきたりして、明らかにライヴっぽい雰囲気があります。このアルバムはCDKといレーベルのもの。同じ演奏ですが別のパッケージも手元にあります。

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こちらはロシア語のジャケットで裏面にGramzapis Companyとの記載があります。上のCDKのアルバムの方が鮮明さはあるんですが、高域の線が細くちょっと刺激的な音。下のGramzapisのほうはちょっと混濁感はあるものの自然な音場で聴きやすい音。どちらかと言うと下のほうがおすすめですね。

ボロディン弦楽四重奏団は終戦の年1945年にロシアで創設された弦楽四重奏団。Wikipediaなどの情報によると、メンバーは何度か変わっていますが、現在も活動し、60年以上の活動の歴史があり、世界で最も長く活動している弦楽四重奏団の一つとのこと。もともとモスクワ・フィルハーモニー四重奏団と名乗っていましたが、1955年、近代ロシアの室内楽の開拓者というべき作曲家アレクサンドル・ボロディンにちなんで改名されたとのこと。スヴャトスラフ・リヒテルとも長年にわたり共演してきた。ショスタコーヴィチ、フランスものなどの録音が多く得意としていたようです。この演奏当時のメンバーは第1ヴァイオリンはミハイル・コペルマン(Mikhail Kopelman)、第2ヴァイオリンはアンドレイ・アブラメンコフ(Andrei Abramenkov)、ヴィオラがディミトリー・シェバリーン(Dmitri Shebalin)、チェロがヴァレンティン・ベルリンスキー(Valentin Berlinsky)。初代のヴィオラ奏者は指揮者として有名だったルドルフ・バルシャイ(Rudol'f Borisovich Barshai)だったようですね。バルシャイは昨年亡くなっています。

Hob.III:50-56 / String Quartet Op.51 No.1-7 "Musica instrumentare sopra le 7 ultime parole del nostro Redentore in croce" 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 (1787)
ちょっと古風な音色ですが、冒頭から緊張感抜群の緊密なアンサンブル。鋼のようなヴァイオリンの響き。他のものを寄せ付けない険しい表情。奏者の息づかいが聴こえてくるようなリズムは厳然として揺るぎなく、音響は厳しさを感じるほど鋭く、表情は冷徹なまでに研ぎすまされた序奏。これは凄い緊張感。

第1ソナタ。テンポの設定はこれ以外の設定はあり得ないような揺るぎない説得力。序奏につづいて峻厳な雰囲気のラルゴ。会場で聴いていたら極度の緊張感で手に汗握るような時間が流れていたことでしょう。青く透き通る氷山の美しい姿を眺めるような趣。録音はあまり鮮明ではありませんが、スピーカー付近にクァルテットの音色が定位し残響は少なめで音像の実在感が際立ちます。咳や会場ノイズが少し遠くに聴こえる不思議な録音。オンマイク主体のという感じでしょう。

第2ソナタ。少しテンションが落ちてゆったりと入ります。第1ヴァイオリンのコペルマンの岩のように揺るぎない高音がアンサンブルの基調をなしているよう。アルペジオの伴奏にのって切々と美しいメロディーをヴァイオリンが弾いていきます。

第3ソナタ。古びた音色に慣れて聴きすすめてくるとボロディン弦楽四重奏団のキリッとした険しい音楽に引き込まれていきます。この曲中もっとも癒しに満ちた第3ソナタのメロディーが心にしみます。張りのある弦楽器の強い音色がじんじん迫っては静まる曲想の繰り返し。これを完璧な演奏と呼ぶのでしょう。各楽器とも微塵の隙もない完璧さ。静かな曲想の部分での物音や席が気にならなくはないんですが、演奏の圧倒的な緊張感は途切れません。

第4ソナタ。依然つづく素晴らしい緊張感。弦楽器4本から織りなされる鋼のような響きに圧倒されます。

続く第5ソナタはピチカートによる穏やかな入りと峻厳な強奏、そして孤高の響きがつづく抑えた部分と弦楽四重奏曲という演奏形態の表現の限りを尽くしたような楽章。弦楽器4本でこれだけの変化に富んだ音楽を聴かせるハイドンの才能にあらためて気づかされます。この楽章は圧巻の濃い音楽。後半のピチカートからはなぜか瑞々しさが加わって表現の幅がさらに広がります。

第6ソナタ。再び険しい響きに圧倒されます。険しいながらも聴いているうちに暖かい気持ちになるようなフレーズにうつり、幸福感が満ちあふれてきます。ゆったりした楽章の連続なのにこれだけの起伏と変化は唸らざるを得ません。次々と襲ってくる美しいメロディーの大波に圧倒されます。最後のアクセントは心にしっかり刻まれます。

第7ソナタ。最後のソナタ。力がぬけてメロディーの美しさだけが残ったような曲。この美しさは音楽芸術の極致を表すような澄み切ったもの。古い録音、雑音が混じった会場の音からでも伝わってくる素晴らしい感動が手に取るようにわかる素晴らしいライヴ。最後の消え入るようなピチカートの音色が印象的。

終章の地震。じっくりしたテンポと弦が切れる寸前の素晴らしい強奏で奏でられる撼天動地のようす。最後のクライマックスは弦楽四重奏の枠を越えんばかりの大迫力で曲を閉じます。最後は拍手に迎えられます。

1984年のボロディン弦楽四重奏団の圧倒的迫力のライヴ。芳しくない録音にもかかわらず評価は[+++++]とします。この曲をここまで揺るぎないテンションで正統的に弾かれると文句のつけようはありません。ボロディン弦楽四重奏団にはメンバーが変わった最近の収録のOp.33ロシア四重奏曲のアルバムがあり、こちらも今日勢いで注文しました。こちらは着き次第レビューしようと思います。
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